アプリリア・レーシングのマッシモ・リボラCEOは、MotoGPライダーのキャリア選択において、勝利を求めているのなら、“お金”を決定する要因にすべきではないと語っている。

 アプリリアは2025年シーズンに向けて、現在ヤマハに所属するファビオ・クアルタラロと接触したことが判明していた。ヤマハで苦しんでいるクアルタラロが、勝てるバイクを求めてついに移籍を選ぶのではないかと言われていたが、4月には一転して2年の契約延長が発表され、決着を見た。

 クアルタラロはヤマハとかなり高額の契約を交わしたと言われている。一説では年間1200万ユーロ(約20億円)にも上ると言われており、これが正しければMotoGPにおける最も高給取りなライダーということになる。

 その一方で、アプリリアがクアルタラロに提示したオファーは、400万ユーロ(約6億6千万円)をわずかに超える額だったという。この大きな差が、クアルタラロの選択を決めたのではないかという斜めに構えた見方もある。

 真偽はいずれにせよ、アプリリアは2021年のMotoGP王者を獲得することはできなかった。ただAutosport/Motorsport.comのインタビューに対し、リボラCEOはライダーに高額な契約を提示するよりも、マシン開発に資金を投じることがアプリリアの優先事項だと語っている。

「ライダーの給与という面での我々の経済水準の限界は、バイクのパフォーマンスと密接に関係している。もしライダーが勝ちたいと思っているのなら、金額の多寡が決定する要因になるべきではないだろう」

 リボラCEOはそう語る。

「その前段階として、自らが何を望んでいるのかを自問することがより重要だと思う。お金を稼ぎたいのか、それとも勝てるプロジェクトを望んでいるのか? とね。そしてアプリリアは勝てる機会を与えられるプロジェクトだと思っている」

「もっと言ってしまえば、もし彼が勝っていれば、お金など問題ではなくなっていただろう。しかし、コミットメントは互いに共通していることも必要だからね」

 そしてリボラCEOはヤマハの決断について見解を訊かれると、次のように答えた。

「他のチームについてのコメントを求められるのは慣れていないんだが、この場合はヤマハは正しい方向に進んでいるように私には思える、とだけ言っておこう」

 なおリボラCEOはライダー選定において、現在所属しているアレイシ・エスパルガロとマーベリック・ビニャーレスを最大限尊重する姿勢を示している。

「我々はおそらく2025年に向けた2名のライダーと契約する最後のチームになるだろう。その理由は我々としてアレイシとマーベリックをリスペクトしたいと思っていて、彼らに継続の意思を明確にする時間を与えたいからだ。もちろん、全員の意見を訊くつもりだ。自らがどう受け止められているのかを知るのは、興味深いことだからね」

 アプリリアは2015年にMotoGPへ復帰してからしばらくは最下位が定位置だったが、2018年にリボラが招聘されたことをきっかけに大きく前進してきた。2022年には復帰後初優勝を挙げてコンストラクターズランキングで3位となり、既存メーカーとも競い合える存在となってきたのだ。

 2023年も引き続きランキング3位の位置を固め、グリッド上ではドゥカティに次ぐ戦闘力を持ったバイクであるとさえ考えられていた。リボラCEOは、アプリリアの成長を次のように語っている。

「我々の成長はピアッジオグループがMotoGPへの投資を望んだからこそ起きたものだ」

「私の着任も、そうした投資への意欲があったからだ。それがなければ、私も何もできなかっただろうね」

「そして、彼らが最初に投資したのは人材だったんだ」

「(本拠のある)ノアーレのバイクレース文化と、F1のように他の分野からやってきた才能を良好なバランスで取り入れようとしていた。そのため、技術部門のロマーノ・アルベシアーノ(テクニカルディレクター)のような高いレベルの知識と経験を持つ人物と、大学を卒業してきた若手をミックスすることができるんだ」

「毎年成長することができていれば、モチベーションはさらにあがる。正しい方向に向かっているのだと理解できるからだ。我々のバイクがどんどん良くなっているとすれば、それは我々のファクトリーの水準がより強力になっているからだろう。そしてもちろん、ライダーという要因も大きく影響している」