レースのスタートにはスタンディング方式と、ローリング方式の2とおりがあって、Super GTがローリングスタートで開始されるのはご存知のとおり。なぜ、スタンディングスタートではないかというと、いちばんの理由は安全面の確保である。整った隊列のままレースを開始できるし、スタンディングスタートのように優劣が明確に分かれないからだ。また、長丁場のレースだけに、クラッチにかかる負担を最小限にできるというメリットもある。

 レースの開始はストレート上のシグナルが赤から緑に変わることで告げられ、計測ラインを超えるまで追い抜きは禁止。その前に抜いてしまうと、ドライビングスルーペナルティを命じられてしまうが、それさえ守っていればローリングスタートは簡単、そう思ってはいまいか? もちろんローリングスタートには、ローリングスタートなりの極意がある。そのあたりを昨年のGT500チャンピオン、平手晃平選手に聞いてみた。
「去年の最終戦、もてぎで2ラウンドあったんですけど、その2ラウンドとも僕はかなりぶっちぎって1コーナーに飛び込んでいけました。正直、特別なスタートをやったつもりはないんですけど、スタートの直前ってタイヤを温めるふりをするじゃないですか? 実際に温めているんですが、それをやりつつメインは一発目のブレーキングで、ちゃんとブレーキを踏めるように、ブレーキを温めておくのが大事だと思うんです」
「コンマ3秒でも4秒でも自分がアクセルを早く踏んだからといって、1コーナーのブレーキング大丈夫かな、という状態で手前から恐る恐るブレーキを踏むよりは、確実にブレーキが温まっているのを確認した上で、ドンとスタートを行けた方が1コーナーでオーバーテイクできる機会も増えるでしょう。変にブレーキロックしてタイヤを壊しちゃうこともなくなると思うので、ブレーキを温めることがいちばん重要だと思います」
「後ろの方にいる時、気をつけているのは揺さぶりとかそういうポイントではなくて、どちらかというと前のクルマを抜こうとして、けっこうバラけるじゃないですか。バラけて万が一、前のクルマがロックしてスピンしたら、どこに逃げ場があるのかな、というのを考えてスタートします。それと、イン側に誰か飛び込んでこないかな、っていうのもミラーで見たりしているので、先頭でスタートするより100倍、神経使いますけどね」

 ローリングスタートは、確かにスタンディングスタートより安全ながら、逆にいうと一団となって1コーナーに飛び込んでいくからこそのリスクもあることが、平手選手のコメントからも明らかだ。危機回避と、それに対する柔軟な対応と予測。これに優れていないと好結果を得られないのだから、実はローリングスタートも簡単ではないのである。