「野球はピッチャーがバッターを攻めるスポーツ」だ。打者は投手が投げなければ何もできないし、投じられたボールに対して受動的に対応していくことでゲームは進行する。

ただ、基本線はそうであっても、采配や状況によってはそれが変わる場面もある。

悲願のパ・リーグ制覇は絶望的な状況で、バファローズの取り組んでいる試みが興味深い。

「1番・吉田正尚」の誕生は、ルーキーながら開幕スタメンの座を射止めた昨季の開幕戦だった。

プロデビューを飾った吉田は半月ほどで下位へと移るが、故障離脱から復帰した後半戦には、やはり数試合でトップバッターを任されている。

新人を打線の先頭に据える、チーム73年ぶりとなる采配を振るった福良淳一監督は、相手に与える印象が違うことを、その狙いとして語っていた。

福良監督のプロ入り前、現球団の前身であるブレーブスで1、2番コンビを務めた福本豊と簑田浩二は、走塁面の貢献はもちろん、20本、30本も柵越えを放てる長打力も備えていた。

パワーを発揮するテーブルセッターの脅威と効果を、指揮官は重々と承知しているところだろう。

福本や蓑田のようなタイプは究極だが、リードオフに与えられた最大の命題は「出塁してホームに生還する」ことだ。

出塁することこそがマストであって、あくまで手段のひとつでしかないベースランニングに特化した選手を、必ず起用しなければならないわけではない。

2年目の吉田は、プロ入りしてからまだ盗塁を記録していないが、今季は7月9日のマリーンズ戦で1軍初出場を果たして以降、7月の15試合中で出塁できなかったのは4試合のみ。打線に多くの得点機会を創出できる点で、優位性が作れる存在だ。

何よりも、その重厚なスウィングが意味を持つ。バッターに長打があると分かっていれば、相手バッテリーも試合の出鼻から慎重にならざるを得ない。

後続に球筋を見させながら球数を消費させるのがオーソドックスではあるが、大事な入りで配球に枷をかけ、思い切ったピッチングをさせないこともまた、相手バッテリーの消耗を誘うだろう。

このように考えていくと、打線のトップに強打者を置く采配は「実験」というより、確かな根拠に基づいた「確信」ではないか。