塀にぶつかってるのかと思った――。

2021年9月29日、高速道路などの管理運営を行うNEXCO中日本(中日本高速道路)の東京支社が公式ツイッターアカウントに投稿した1枚の写真が、そんな反響を集め、話題となった。

車が...!(画像はNEXCO中日本東京支社提供)

向かって右側、黄色い車に注目してほしい。塀にぶつかって、結構大きな事故が起きてしまっているかのように見える。

この写真が添えられたツイートは、「東名リニューアル工事 工事進捗のお知らせ」というもの。実は、事故のように見えたのは、車両が作業をしている場面だったのだ。

この画像に対し、ツイッターでは

「一瞬、ドリフトしてるのかと...」
「事故って刺さっとるやん草ァ...って思いました、すみません」
「なにこれかっこいい!」
「すご。トミカでほしい」

といった反応が寄せられている。この車は、一体なにをしているのだろう?

Jタウンネット記者は同社の保全・サービス事業部 構造技術課に聞いた。

「防護柵」を安全に素早く移動・設置する

担当者によれば、この黄色い車両は「防護柵切替車両・BTM(Barrier Transfer Machine)」。交通規制を行う際の防護柵を移動・設置する車両だ。

現在、同社が管理する高速道路の6割は開通から30年以上経過し、老朽化が進んでいる。そこで、今後も安心安全に利用できるようにするためのリニューアル工事に取り組んでいるそう。

老朽化した橋梁の床版を取り替えるなど大規模・長期間にわたる工事が必要なため、通常、対面通行規制――例えば、片側2車線の道路で上り方向の道路の工事を行う場合、上り線を閉じ、一時的に下り線の2車線で対面走行させること――を実施しており、その中で、BTMは活躍している。

工事規制・対面通行規制中の道路(画像はNEXCO中日本東京支社提供)
「対面通行規制の中央分離帯には、安全性の高いコンクリート防護柵を設置しますが、重量があり通常は設置に何日もかかります。
そこでBTMを使用すると、事前に路肩に置いた防護柵を、短時間で中央分離帯まで移動させることができるため、お客さまにご迷惑をおかけする時間を大幅に短縮できます。撤去する際も同様です」

と担当者は説明する。BTMは時速約10キロメートルでコンクリート防護柵の移動設置が可能だという。

なるほど、事故のように見えた写真は、手前だと端にあるブロックが、BTMによって真ん中に動かされている、まさにその瞬間だったのか。

安全性が向上し、渋滞も緩和

BTMによってコンクリートの防護柵を移動し、規制の切り替えなどをするシステムを「ロードジッパーシステム」と呼ぶ。東名リニューアル工事における対面通行規制におけるこのシステムの詳しい手順は、以下の通り。

「まず、路肩にあらかじめコンクリート防護柵を設置します。そして、通常時の車線から横断し反対側の対面通行規制区間へ移動する『渡り線』を施工します。
路肩に置いたコンクリート防護柵をBTMで道路の真ん中側に移動させます。ここが、対面通行時の中央分離帯になります。その他の規制を完成させて対面通行規制を完成し、工事を実施します」(担当者)

17年度の東名リニューアル工事から使用されているというBTM。現在実施中の東名リニューアル工事(21年9月6日から12月24日)では、所持車両とリース車両のあわせて2台が稼働しているという。

路肩に事前に防護柵を設置(画像はNEXCO中日本東京支社提供)

また、BTMが活躍するのは、対面通行規制の際だけではない。

たとえば、平日は昼夜連続で車線規制を実施し、それを休日には解除する、というサイクルを繰り返す工事では、規制の度にコンクリート防護柵を規制材として設置している。その防護柵もBTMを使って移動・設置されているそうだ。

「いずれも、通常の車線規制の際に使用するカラーコーンなどに比べて頑丈なコンクリート防護柵を使用することで安全性が向上するだけでなく、その設置にかかる規制時間を短縮することで、渋滞の緩和を図っております」

と担当者。今回、BTMの衝撃的な作業風景が注目を集めたことに対しては

「高速道路の安全性を高めるためリニューアル工事等の規制を伴う工事を実施させていただいており、その中でお客さまへの影響を最小限とするための取り組みとして、今回の車両を採用させていただいております。
今回、本車両の内容が話題となり、皆様に興味を持っていただいたことを大変うれしく思います」

とコメントした。運がよければ、高速道路で作業しているところを見られるかもしれない......。そう思うと何だかワクワクしてしまう。