ベース、鍵盤、サックスなど、さまざまな楽器を演奏するマルチプレイヤー・河原太朗のソロプロジェクトであるTENDRE。彼が転機となった音大時代や、楽曲制作のときの思考について語った。

TENDREが登場したのは、9月10日(土)に放送されたJ-WAVEの番組『BLUE IN GREEN』のワンコーナー「LIFE WITH GROOVE」。この日は、通常の番組ナビゲーター・甲斐まりかが夏休み中のため、音楽家のMaika Loubtéがナビゲーターを務めた。

TENDREは9月18日(日)、都市型フェス「J-WAVE presents INSPIRE TOKYO 〜Best Music & Market」に出演する。

・「J-WAVE presents INSPIRE TOKYO 〜Best Music & Market」公式サイト
https://www.j-wave.co.jp/special/inspire2022/

一番時間がかかるのは歌詞

TENDREは9月14日に2ndアルバム『PRISMATICS』をリリース。NHK『あさイチ』2022年度テーマ曲『SWITCH』や、先行配信シングル『LIGHT HOUSE』、『HAVE A NICE DAY』を含む全10曲。初回限定盤に付いているBlu-rayディスクには、2022年惜しまれつつ閉館したライブハウス・新木場USEN STUDIO COASTで2021年に開催したスペシャルライブ「"GOOD BY COAST BY TENDRE" st Shinkiba STUDIO COAST」が収録されている。

TENDRE「PRISMATICS」Teaser

Maika:TENDREさんはすごく多作なイメージが私にはあって、とはいえひとつひとつ丁寧に作られていると思うんですよ。今回のセカンドアルバムで最も時間をかけたところはどこですか?

TENDRE:一番時間がかかるのは、歌詞ですかね。

Maika:私も一緒です。

TENDRE:Maikaさんもそうですよね。音像が頭の中にイメージとしてできあがっているんです。僕の場合レコーディングスタジオに入ってビートを持っていって、そこに生楽器を重ねていって、最後に歌を重ねていくんです。歌詞はなんとなく最初から書いてはいるんですけど、最終的に何を歌いたいのかっていうのは最後の歌入れで決まってくるので、一番時間がかかっちゃうんですよね。

Maika:音楽が歌詞を引き出してくれる感じですか?

TENDRE:そうですね。僕はわりとサウンドを映像的に見るようにしていて、ボーカルっていう主人格がいるのであれば、その背景にどんな情景が浮かんでるのか、たとえば青空であればそれに見合った楽器、シンセの音像を使うとか、土台にしっかりしたビートがあるとか、そういう自分がどういうロケーションにいるんだろう、そこで何を言いたいんだろうみたいなことをイメージして作ることが今回特に多かったかもしれないです。

Maika:まさにタイトルが『PRISMATICS』、レンズから覗いたような、なんか映画監督のようですね。

TENDRE:タイトルには「多面的」という意味合いが僕の中ではあるんですけど、いろんな情景にいる中で救われた場面があったりとか、それを曲に落とし込めたらいいなと思っていたんです。まさに今言ってくださった通りのことを考えていました。ありがとうございます。

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鍵盤を弾き始めた理由

アルバムの初回限定盤に付いているライブ映像「"GOOD BY COAST BY TENDRE" st Shinkiba STUDIO COAST」の話へと移っていった。

TENDRE:STUDIO COAST閉館、寂しいですよね。

Maika:寂しいですよね。「"GOOD BY COAST BY TENDRE"」とか泣けてくるタイトルです。

TENDRE:でもいい別れを告げられた、すごく思い出深いライブだったので、ぜひ映像で見てもらいたいなって思います。

Maika:TENDREさんのライブを見て思うんですけど、歌の安定感がマジですごいなって。鍵盤を弾きながら歌うのってフィジカルがすごく研ぎ澄まされているイメージがあるんですよ。

TENDRE:究極を言うと、ピアノってあんまり弾きながら歌うもんじゃないなって思ってて(笑)。それぞれの表現の仕方が異なってるじゃないですか。僕が鍵盤を弾き始めたのは、全体の指揮を取りやすいのがピアノだなって思ったからなんです。もともと僕ベースボーカルをずっとやっていたんですけど、歌と一体化するっていうのが大事かなと思っていて。歌もそうですし、プレイも稚拙だなと思うところはあるんですけど、それを上回る熱をどれだけ観客に伝えられるかが大事だと思っていて。まだ模索しているんですけど、いかに歌と鍵盤を一体化させられるかっていうのを意識しています。その意識が無意識になっていくのが理想なんだろうなと思ってます。

Maika:TENDREさんのライブって、お客さんの緊張を解きにいく感じ、お客さんもそのライブを見ていて解かれていく感じがあって、それはTENDREさんの精神状態が穏やかな水面のようだからなのかなってイメージしていました。怒ることってあります?

TENDRE:ありますよ。声を荒げることはないんですけど、「まったくもう!」みたいな(笑)。でもやっぱりライブは自分の表現をする場じゃないですか。せっかく見にきてくださる方がいらっしゃる前で、そういう状態を出すよりは、これはあくまで僕の音楽性の話ですけど、みんながリラックスした状態で熱が生まれていくような場面を作りたいと思ってます。入口はみんなが気兼ねなく家に来てくれるような面持ちで、その中でいろんなドラマを見せていければいいのかな、っていうのが僕のやり方としてあるんだと思いますね。

Maika:ライブ前に緊張はしますか?

TENDRE:最近はあんまりしないですね。ライブ前にみんなで袖で「オー!」とかやることに憧れはあるんですけど、楽屋から出るときと同じ状態のままのほうが気持ちがいいっていうんですかね、ありのままの自分を見てもらえる気がするので、最近はあんまり緊張はしないかもしれないです。このJ-WAVE(への出演)も含めてそうです。

Maika:俯瞰してらっしゃるんですね。

TENDRE:俯瞰するっていうのは大事にしているテーマです。

転機は音大編入、曲作りの基礎を学ぶ

このコーナーでは、ゲストの今を形作った出会いや体験を語ってもらう。TENDREが挙げた体験は「音大編入」だったという。

TENDRE:高校を卒業してから専門学校に通ってたんですよね。うちの父親がベースを教えている専門学校に入って、ベーシストとして頑張るつもりだったんですけど、演奏するより音楽の構造というか作曲を勉強したいと思うようになって、1年後に音楽大学に編入したんです。これがある種の転機になったかなと。

Maika:実は私も音大出身なんです。どんなことを学んでいましたか?

TENDRE:「音響デザイン科」っていう、いわゆるPAっていう音響を勉強する人と作曲を勉強する人がいる学科に編入しました。けっこうゲーム音楽を勉強したい方が多いところだったんですよ。僕はそこでDTM(デスクトップミュージック)っていうか、「Logic」を使って曲作りの勉強をしたり、ドビュッシーを研究したりしてましたね。

Maika:研究のテーマは自ら決めるんですか?

TENDRE:教授のレッスンがあって、教授が課題を出してくださるんですけど、そのときにドビュッシーの和声を分析してきなさいって言われてずっと調べたり、「Logic」をベーシックにして電子音楽を作ることに挑戦していましたね。

初めてドラマの劇伴を担当

TENDREは、Disney+で9月14日から独占配信のドラマ『すべて忘れてしまうから』で、初めてドラマの劇伴を担当した。同映画は、阿部 寛主演、作家・燃え殻の同盟作が原作のほろ苦い大人のラブストーリーだ。

すべて忘れてしまうから|ティザー予告編|Disney+ (ディズニープラス)

Maika:初めてドラマの劇伴を担当されたそうですね。もしかしてアルバムと同時期に曲を作っていたんですか?

TENDRE:劇伴は一度やってみたかったので、やっと願いが叶ったなと。アルバムと並行してずっと作ってて、アルバムと劇伴がある種、いろいろリンクしたような部分もあったりするので、ぜひ両方楽しみにしていただければなと。

Maika:ドラマの配信開始日とアルバムの発売日が一緒なんですよね。

TENDRE:たまたま(笑)。本当に偶然で、ありがたいことです。

そのほか、TENDREの最新情報は、公式サイトまたは、 Twitter まで。

『BLUE IN GREEN』のワンコーナー「LIFE WITH GROOVE」では、ゲストの今を形作った出会いや体験を伺う。放送は毎週土曜日の12時55分ごろから。