水平線の辺りが白み始めた午前4時すぎ。南相馬市鹿島区の烏崎(からすざき)海岸を5頭の馬が駆け抜けた。砂を巻き上げながら、海岸を何度も行き来する。
 間近に迫った「相馬野馬追」のトレーニング。潮風を受けながら砂の上を走ると、足腰と心肺機能を鍛えられるという。
 「北郷騎馬会」の鈴木正男さん(45)が愛馬と共に訪れていた。野馬追への参加はことしで17回目だが、本番が近づくといつも気持ちが高ぶってくる。
 烏崎にも東日本大震災の大津波が襲い、多くの家を押し流した。「津波で野馬追の道具や馬を流されてしまった仲間もいる。その思いも背負って出陣したい」と鈴木さんは言う。
 練習を終えると、人馬はゆっくりと波打ち際へ歩を運んだ。昇ったばかりの朝日をじっと望む。海に向かって祈るかのような、凜(りん)としたたたずまいだった。
(文と写真 写真部・高橋諒)

<メモ>
 相馬野馬追は相馬中村藩主・相馬家の祖である平将門が軍事訓練として野生馬を捕まえ、奉納したことが始まりとされる。1978年に国の重要無形文化財に指定された。南相馬市原町区の雲雀(ひばり)ケ原(がはら)祭場地を主会場に、甲冑(かっちゅう)競馬や神旗争奪戦などが行われる。ことしは今月29〜31日。