「エチオピア アラカ農園」「ホンジュラス バニャデロス農園」…。
 仙台市内に2店あるカフェ「フラットホワイトコーヒーファクトリー」には常時20種前後のコーヒー豆がそろう。ブレンドは少なく、シングルオリジン(単一農園)と呼ばれる豆がほとんど。ラベルには産地や農場、品種、精製方法、ときに生産者名まで記載されている。

<「甘みに感動」>
 社長の中沢美貴(よしたか)さん(49)は「トレーサブル(追跡可能)でサステナブル(持続可能)。どこの誰がどんな風に仕上げたかはっきりしている豆を、生産者も納得のいく価格で取引することを大切にしている。野菜や果物の世界と変わらない」と語る。
 品質やトレーサビリティー(生産流通履歴)の確かな豆を使った風味の良いコーヒーを指す「スペシャルティコーヒー」は、世界的に広まりつつある。ワインのテイスティングのように、カッピングと呼ばれる試飲で風味が評価され、フルーツや花、ナッツなどに例えられる。
 「苦い大人の飲み物だと思っていたけれど、香りの良さや甘みに感動した」「フルーティーで花のような香りにびっくりした」。スペシャルティコーヒーを主力に据える仙台のカフェ店主らは、出合った当初の衝撃を口々に語る。

<転機は専用袋>
 20年以上にわたりカフェ「バルミュゼット」(泉区)を営む川口千秋さん(54)によると、栽培地域ごとの風味特性を十分感じられる浅いりのコーヒーが国内で広がったのはここ5、6年という。転機は生豆輸送時の麻袋に、内袋として穀物専用ビニール袋が取り入れられたこと。生豆の発酵、水分量の低減といった品質変化が起きにくくなった。
 川口さんは「日本では発酵臭を抑えるため深いりで苦味を加えるのが主流になった面がある。今は深いりするにはもったいないような豆が届く。流通の進歩による大きな変革だ」と指摘する。
 焙煎(ばいせん)の面でも、新たな動きがある。
 青葉区の「クリヤ・コーヒー・ロースターズ」の栗谷将晴さん(47)は、焙煎機とパソコンをつなぎ温度や温度上昇率などのデータをグラフにして記録する。焙煎機に表示される温度を30秒ごとにメモする従来の方法に疑問を感じ、海外の愛好家が作ったソフトウエアを入手した。
 「手で書く手間を省けば、コーヒー作りに集中でき、客観的データにより味の再現性も高まる」と話す。
 同業者の導入の相談にも積極的に応じる。「『コーヒーは果実から作られている』と思い出させるスペシャルティコーヒーのおいしさは、仙台ではまだまだ知られていない。同業者は競争相手というより、情報交換して一緒に盛り上げていく仲間です」

◎おうちでもっとおいしく(抽出器具編)/種類多彩味わい無限

 自宅でコーヒーを楽しむ際に大切なのが抽出器具。「器具によって味わいも変わります」とカフェ「フラットホワイトコーヒーファクトリー(FWCF)仙台ダウンタウン店」店長の佐藤公則さん(36)は言う。
 広く普及しているペーパードリップはクリアな味が特徴。風味を調整しやすいといわれ、同店では焙煎(ばいせん)度合いに応じて豆の量や入れ方を変えている。
 実験器具のような「ケメックス」は、専用ペーパーフィルターなら雑味、渋味が除かれてまろやかになり、ステンレスフィルターなら豆の味がよりダイレクトに出る。サイホンは高温の湯で抽出するため熱さが保たれ、香りがクリアだ。
 近年注目を集める注射器のような「エアロプレス」は、油分が一緒に抽出され甘みとこくが感じられる。「クレバーコーヒードリッパー」は、湯を注いで一定時間置いてカップに載せるとコーヒーがカップ内に落ちる仕組み。入れ方が簡単で味はすっきりしている。
 他にも器具は多彩。佐藤さんは「器具、豆の量などの組み合わせは無限。好きな味を作り出して」と話す。

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 温かい飲み物をうれしく感じる11月、週刊せんだいのテーマは「街に香る滴 コーヒー新潮流」です。
 ここ数年、仙台圏のコーヒーシーンに変化が起きているのをご存じでしょうか。品質や生産流通履歴が確かな「スペシャルティコーヒー」を主力に、自家焙煎(ばいせん)して提供するカフェやコーヒースタンドが増加。豆自体が持つ風味に、より焦点を当てた味わいを伝えようと、イベントも盛んです。店同士が手を組んでコーヒーの楽しみ方を発信したり、レベル向上を図ったりする取り組みが活発化してきました。