伝統ある俳誌「ホトトギス」の同人須同人須藤常央(すとうつねお)さん(61)=静岡市=が、近代俳壇の重鎮高浜虚子の足跡を現地に訪ねた「虚子探訪」(神奈川新聞社刊)を出版した。虚子が亡くなるまで約50年間を過ごした鎌倉がメインテーマ。虚子が住んだ虚子庵やゆかりの寺で句の背景を探り、虚子の手による御成小・中学校門札の経緯についても詳述する。綿密な取材が生きた力作だ。 高浜虚子(1874〜1959年)は、明治、大正、昭和の3時代にわたる俳人で小説家。 須藤さんは3月まで静岡県職員として勤務する傍ら、日本伝統俳句協会理事などを務め、各地の句会や吟行会などに飛び回った。著名な俳人についての史実を調べ、現地を訪ね、関係者らから証言を聞き取った写生文を「ホトトギス」に発表している。 鎌倉では、虚子の小説「虹」などに交情の描かれる女弟子森田愛子の句集を足掛かりに、虚子の住んでいた由比ガ浜の虚子庵や墓所の寿福寺、関係の深かった作家大佛(おさらぎ)次郎にゆかりの茶廊などに虚子の面影を訪ねる。御成小学校の資料コーナーに保存されている虚子直筆の御成小・中学校の門札が書かれた事情などについても、当時の関係者の証言から明らかになる。 「虚子探訪」はほかに、虚子が学生時代の一時期を過ごした京都、虚子に師事した川端茅(ぼう)舎(しゃ)、島村元(はじめ)などについても章を設け、「ホトトギス」に掲載した約20年分59編をまとめた。「子規探訪」「虚子と静岡」(ともに静岡新聞社刊)に続く3作目となる。 須藤さんは虚子について、「時代から影響を受けず流されず、一貫して俳句の本質を追究した存在」と分析し、「虚子探訪」は「現地を訪ね、人との出会いが情報につながり、知らなかったことが分かり、虚子の世界が広がっていった」と話している。 新書判、344ページ、1400円(税別)。書店、新聞販売店で扱っている。問い合わせは、神奈川新聞社出版メディア部電話045(227)0850。