元慰安婦たちを追ったドキュメンタリー映画をめぐり、右翼団体が上映の妨害を繰り返している問題で、横浜地裁は6日、横浜市戸塚区の右翼団体に対し、上映会場の半径300メートル以内で街宣など全ての妨害行為の禁止を命じる決定を出した。上映会は神奈川県横須賀市で8日に開かれる予定。仮処分を申し立てた主催者男性(68)の代理人、神原元弁護士は決定について「民主主義社会の根幹を揺るがす無法者の行為を、厳しく断罪するもの」と評価した。

 作品は、在日朝鮮人の朴(パク)壽南(スナム)監督(83)が2017年に制作した「沈黙−立ち上がる慰安婦」。李(イ)玉先(オクソン)さんなど元慰安婦のハルモニ(おばあさん)たちが、「法的責任は解決済み」とする日本政府に謝罪と補償を求めた1990年代の闘いを描く。各地で市民らが主催し、上映会を開いている。

 申立書によると、10月16日開催の茅ケ崎市での上映会について、後援した同市、市教育委員会に対して事前にインターネットに「日本国と日本人を貶(おとし)める映画の上映を後援することは許されない」と書き込みがあった。また、市には嫌がらせの電話やメールが殺到し、「朝鮮人だろう」と電話口でののしられた職員もいた。

 11月25日には、横浜市の上映会(同月28日開催)と横須賀上映会の会場周辺を、上映中止を求めて右翼団体の宣伝車が周回。横須賀の会場には右翼団体の8人ほどが特攻服姿で訪れ、「上映を中止しろ」と罵声を浴びせた。

 茅ケ崎、横浜上映会の当日には、各会場周辺を複数の右翼団体が街宣車で拡声しながら周回し、団体メンバーが会場に乗り込んだ。茅ケ崎では入り口付近で寝転び妨害。横浜では押し入ろうとし、「横須賀で見ようかな」「12月に監督のトークショーの質疑応答に来ようかな」と今後の行動を宣言した。

 こうした妨害は憲法で保障された表現の自由を踏みにじるものとして、弁護士140人が代理人となり4日、横須賀会場への来場をメンバーが明言した横浜市戸塚区の右翼団体に対し、妨害禁止を求める仮処分を横浜地裁に申し立てていた。

 決定を受けて、主催者男性は「暴言や暴力に黙っているべきではないと考えた。最後までやり切る」と語った。作品のプロデューサーで朴監督の娘の麻衣さん(50)は「一人でも多くの人にどのような映画か見ていただければ」と話した。