感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師が予測する7月に注意してほしい感染症ランキングです。

 1位から順に、流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。

【No.1】新型コロナウイルス感染症
 新型コロナはBA.2(オミクロン株の別系統)にほぼ置き換わっており、感染力が強いということから、マスクの着用、手指衛生、こまめな換気といった基本的な感染対策をしっかりすることが大切です。

 一方、専門家会議ではマスクの着用について「屋外で周囲の人と距離が十分に確保できるような場面であったり、屋外で周囲との距離が十分に取れない場面でも、周囲で会話が少ない(又はほとんどない)ようであれば、これまでどおり、マスク着用は必ずしも必要ないが、屋外でも人混みでは適宜着用することが必要。

 また、未就学児についてはマスク着用を一律には求めず、無理に着用させないこと等について、周知内容をより明確にした上で、幅広く周知・徹底を行っていくことが必要」との見解を示しています。

【No.2】RSウイルス感染症
 RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスによっておこる呼吸器感染症です。潜伏期間は2〜8日、一般的には4〜6日で発症します。

 特徴的な症状である熱や咳は、新型コロナウイルス感染症と似ており、見分けがつきにくいです。

 多くの場合は軽い症状ですみますが、重い場合には咳がひどくなり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ることがあります。

 RSウイルス感染症は乳幼児に注意してほしい感染症で、特に1歳未満の乳児が感染すると重症化しやすいです。

 お子さんに発熱や呼吸器症状がみられる場合は、かかりつけ医に相談してください。

 感染経路は、飛沫感染や接触感染です。ワクチンはまだ実用化されていないため、手洗い、うがい、マスクの着用を徹底しましょう。

 家族以外にも保育士など、乳幼児と接する機会がある人は特に注意が必要です。

【No.3】咽頭結膜熱
 アデノウイルスを原因とする感染症で、英国では原因不明の小児急性肝炎の患者から検出されたウイルスとして、調査が続いています。

 国内では、原因不明の小児肝炎の確定例は今のところないとされていますが、夏に向けてアデノウイルスを原因とする感染症に注意が必要です。

 咽頭結膜熱は、例年6月から7月にかけて流行がピークを迎える感染症です。症状は風邪とよく似ていますが、発熱、咽頭痛、結膜炎です。

 発熱は5日間ほど続くことがあります。眼の症状は一般的に片方から始まり、その後、他方に症状があらわれます。

 高熱が続くことから、新型コロナウイルス感染症とも間違えやすい症状です。

 吐き気、強い頭痛、せきが激しい時は早めに医療機関に相談してください。感染経路は、主に接触感染と飛沫感染です。

 原因となるアデノウイルスの感染力は強力で、直接接触だけではなくタオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン等の不特定多数の人が触る物品を介した間接的な接触でも、感染が広がります。

 特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となります。眼の症状が強い時には、眼科的治療が必要となることもあります。

 予防方法は、流水・石鹸による手洗いとマスクの着用です。物品を介した間接的な接触でも感染するため、しっかりと手を洗うことを心がけてください。

【No.4】手足口病
 手足口病は、エンテロウイルスなどを病原体とする感染症で、流行は夏に集中しています。

 3日から5日の潜伏期間の後に発症し、口の粘膜・手のひら・足の甲や裏などに、2〜3ミリの水疱性の発疹が現れます。

 手足口病の感染経路としては飛沫感染、接触感染、糞口感染があげられます。保育園や幼稚園などの乳幼児施設における流行時の感染予防は、手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となります。

 同じウイルス属のヘルパンギーナも、例年、5月頃より増え始め、7月頃にピークを迎えます。

 喉からウイルスが排出されるため、咳をしたときのしぶきにより感染します。感染者との密接な接触を避けることや、流行時にうがいや手指の消毒を励行することが大切です。

【要注意】梅毒
 梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。

 感染すると全身に様々な症状が出ます。

 性別関係なく、患者報告数が増えています。特に女性では、梅毒に感染したと気づかないまま妊娠して、先天梅毒の赤ちゃんが生まれる可能性があるので注意が必要です。妊娠中でも治療は可能です。

 ほとんどの産婦人科では、妊婦健診の際に血液検査してもらえます。妊娠したら必ず梅毒の検査を受けましょう。

 早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。

 時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また完治しても、感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が必要です。

 広島・東京・大阪・福岡など、大都市で流行しています。

 感染が広がりをみせている地域の方は、特に注意が必要です。

【要注意!】腸管出血性大腸菌感染症
 腸管出血性大腸菌は、ウシ、ヤギ、ヒツジなどのひづめが二つに分かれているもの(偶蹄目)の腸管にすんでいる菌です。感染力が強いので、接触感染する可能性もあります。ふれあい動物園などで、ヤギやヒツジに餌やりをした後は、必ず手を洗いましょう。

 感染すると3〜5日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様性の下痢が起こり、その後、血便が出るケースもあります(出血性大腸炎)。また、発病者の6〜9%では、下痢などの最初の症状が出てから5〜13日後に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症をきたすことが知られています。

 主な感染経路は飲食物を介した経口感染であり、菌に汚染された飲食物を摂取することや、患者の糞便に含まれる大腸菌が直接または間接的に口から入ることによって感染します。腸管出血性大腸菌は、中心部まで75℃で1分間以上加熱することで死滅するので、食事の際はしっかりと加熱することが基本です。肉の生食や、生焼けで食べることは避けましょう。またバーベキューや焼肉などでは、生肉を扱った箸やトングなどは生食用のものと使い分けましょう。

 また、ふれあい動物園などで動物を触ったあとは、手指を清潔にすることを心がけてください。

取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏