2022年9月2日、日本感染症学会と日本化学療法学会は、厚生労働大臣に対し、連名で「新型コロナウイルス感染症における喫緊の課題と解決策に関する提言」を行いました。

 提言では、現在の感染状況や患者の症状・後遺症などをふまえた上で、国産の新型コロナウイルス感染症治療薬を早期に緊急承認すること、もしくは承認済みの抗ウイルス薬の適応拡大の可能性を検討することを強く求めています。

 国産の新型コロナウイルス感染症治療薬をめぐっては、塩野義製薬が開発した「ゾコーバ」が、7月20日に開かれた厚生労働省の分科会で、主要評価項目の1つ「ウイルス量の減少」は達成されているものの症状の改善が達成されていないことから、緊急承認に必要な「有効性の推定」の要件を満たさないとされ継続審議となっています。

新型コロナの臨床医は…

 新型コロナウイルス感染症の臨床医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「臨床医としての経験から言えることは、新型コロナウイルス感染症は、ウイルス量と症状の間に、相関関係がみられることです。私の勤務先の病院では、入院している患者さんのウイルス量を計測していますが、入院後に症状が落ち着き、退院される方は、体内のウイルス量が減っています。しかし、いったん、退院された方であっても、症状が“再燃”し、再入院される方も中にはいらっしゃいます。その場合、退院時に減っていたウイルス量が、再入院時の検査で、増加しているケースが多く見受けられます。このことから、ウイルスの増加を抑え、ウイルス量を減らせる抗ウイルス薬を医療現場で使えることについては、意味があると考えますし、症状を悪化させないためには、体内のウイルスを減らすことが、この感染症の対策には重要であると考えています。また、症状が“再燃”するケースもみられるように、新型コロナウイルスは、なかなか『しぶとい』ウイルスとの印象です。病初期から、処方できる抗ウイルス薬があれば、後遺症に悩む方も、少なくなると考えられます。」と話し、日本感染症学会の提言を支持しています。

緊急承認・特例承認とは

 国は、今回の新型コロナウイルス感染症への対応として治療薬やワクチンを迅速に承認・供給するため、治療薬等について「特例承認」をおこなっていました。

 一方で、より早期に承認することができれば、さらに有効な感染症対策を行える可能性があることから、特例承認より更に迅速に承認できる制度として、「緊急承認制度」が創設されました。

 これまでの「特例承認」では、海外で流通している医薬品等を対象に、有効性と安全性の両方を早急に確認し、迅速な承認を行ってきました。

 新たな緊急承認制度においては、海外でまだ流通していない医薬品等も対象とし、安全性の確認は前提とする一方で、有効性が「推定」できれば承認することができることとしました。

 緊急承認においては、通常の承認で必要な臨床試験が完了していないものについても、有効性が推定されれば、条件付きで承認することができます。

引用
厚生労働省 「医薬品等の緊急承認制度について」

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏