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 ブンデスリーガ11連覇を狙う絶対王者として、本来であればその力を誇示すべく、土曜夕方開催のRBライプツィヒから勝利をおさめ、勝ち点差1で追いかけるボルシア・ドルトムントに翌日開催のFCアウグスブルク戦でのプレッシャーを与えなくてはならなかった。だがその事態の深刻さをどれほど選手たちが認識していたのだろうか。それはトーマス・ミュラー自身が苦言を呈するものであり、そしてシーズン終盤から就任したトーマス・トゥヘル監督も、この試合を通じて感じ取っていた部分である。「序盤のプレー自体は悪くなかった。リードを奪うのは当然で、むしろもっと広げるべきだった。だが30分過ぎたところで、足がピタっと止まってしまったんだよ。もう後半では存在感は示せず、もう言葉で説明できることではない。明らかに本来の力とは程遠いプレーで、あそこまでレベルが低下しては勝てるものも勝てないさ」

 第33節が経過した時点で勝ち点68というのは、最後にブンデスリーガ優勝をドルトムントに譲った12年ぶりとなる低い数字であり、しかも今回の敗戦は2022年1月に喫したグラードバッハ戦以来となる、つまりは今シーズン初となるホーム戦での敗戦。そもそもバイエルンはCLやドイツ杯ですでに準々決勝敗退を喫したため、いまはいつになくしっかりと練習を行える状況にあるのだが「そこでの練習やエネルギッシュさ、そして激しさを実際に確認しているというのに、なぜそれを試合で発揮することはできないのか。」と、トゥヘル監督は首を傾げた。「ここぞと言う時の勇気。たとえばビルドアップでは全員がギャップに入っていかないと。そうすればプレッシャーから解放されるものだが、誰も動かずにボールを要求しないのなら、ロストもするしプレッシャーも受けるし、出だしで遅れも生じていく。今回は自分たちのせいで負けた。相手がよほど良かったりするときにはしょうがないが、こういう自らの手からすり抜けていくような敗戦は避けたいのだが」

 特に後半でコンラッド・ライマーに許した同点ゴールは、そのきっかけはバイエルン側からのコーナーキックであり、そこから「立て直していかなくてはならない」にもかかわらず、「戦術的なファウルも手だった」が不必要に自らを危険に晒してライプツィヒに切り裂かれており、「たとえばニューヨークで道を渡る時、ミュンヘンとはまた歩き方が異なるから、ちゃんと見て渡らないと事故にあうことだってある」と表現。つまりは「必要に応じて適切な行動をとる」姿勢を求めており、その結果が今回の1−3という敗戦で11連覇を大いに危ぶむものに繋がってしまった。「それは明白であり、どういえばいいか。明らかな過ちだよ」と指揮官。「なにもこれが初めて起こったわけでもない」と述べ、「この敗戦に対応することは容易ではないが、全てのことを吟味してなぜあんな後退が起こったのかを理解したい。我々コーチ陣はなにも特別なことは求めていないし、でも突如ミスが多発してずさんな噛み合わない、ゲームスピードが加速しない姿を何度もみている」と語った。「明日のドルトムント戦は見ないだろう。この2日間は我々にとって非常に屈辱的な時間となることは間違いない」

 なおそのトゥヘル監督の会見に先駆けて質疑応答を行なっていたハサン・サリハミジッチ競技部門取締役も、「この1週間はとてもいい練習ができていたし、試合前はとても前向きな雰囲気だったんだ。多くのことでいい取り組みを続けてきたのだが、しかしながら1−0とした後の30分以降からは、何も対応することができていなかったよ。何が問題であるのか、私にも言葉にすることができない」と、トゥヘル監督と同じ見解を示しており、「もう自力優勝の可能性が失われるかもしれないということ」と強調。そして仮に3つ全てのタイトルをバイエルンが獲得できない結果となれば、それは結果としてナーゲルスマン監督からのあの時期での交代は「なにも意味をなさなかった」ということにもなる。それを踏まえた上で、サリハミジッチ氏は改めてトゥヘル監督について、「本当にいい仕事をみせてくれていると思うよ。彼はチームと向き合っており、このチームとともにこれからまた準備を進めていく必要があるということ。それができればまたうまくいくようになるだろう。トーマスはとても印象的なスピーチも行っている」との考えも示している。