大顎が成長せずに成虫になった雄のミヤマクワガタが南砺市で見つかり、富山市黒崎の昆虫専門店「富山のクワ貧(ひん)」で飼育されている。不完全な個体は自然界で淘汰(とうた)され、羽化後すぐに死んでしまうことが多い。店のオーナー、高橋敏之さん(51)は「生きた状態で発見されるのは希少。大切に育てたい」と話している。 不完全個体は南砺市の会社員、西村官弘(つかひろ)さんが先月7日夜、同市平地域の路上で見つけ、知人の高橋さんに預けた。体長は42ミリで、はさみ状の大顎がない分、通常より10ミリほど小さい。右前足も欠けていた。採集歴20年の西村さんも初めて見つけたと言い、「ハンディを負った状態でよく生きていた」と振り返る。 クワガタの雄の大顎はさなぎになるときに生える。餌や雌を奪い合う際に武器となるため、ないと生き延びるのは難しいと考えられる。 富山市科学博物館の岩田朋文学芸員によると雄と雌の両方の特徴が現れる「雌雄同体」にも似ているが大顎以外は通常の雄の形状をしているという。「何らかの理由で大顎が幼虫時代の小さいまま成虫になったのだろう」と話す。 口の部分にも欠けが見られ、餌の昆虫ゼリーを少しずつ飲み込むように食べている。飼育下でのミヤマクワガタの寿命は通常、1カ月程度とされる。高橋さんは「店に来て1カ月ほどになるが、元気だ。懸命に生きている姿はいじらしく、1日でも長生きしてほしい」と祈っている。(文化部・高野由邦)