県内最大の歓楽街・富山市桜木町周辺で、半世紀近くにわたって営業してきたバー「鹿鳴館」(富山市総曲輪)が26日、閉店する。ママの瀬川節子さん(71)が古希を超えたことを機に、引退を決意した。「お客さんや従業員、支えてくれた夫のおかげでやってこられた。感謝の気持ちでいっぱい」と語る。(社会部・湯浅晶子) オレンジ色の柔らかな明かりが、磨き込まれたカウンターを照らす。「電話室」のドアを開けると、レトロな公衆電話がきらりと光る。「とにかく古いから、きれいにだけはしておかないとね」と瀬川さんは笑う。 1976年、瀬川さんは勤め先が倒産したことをきっかけに、先代のオーナーが数年前に開店した鹿鳴館の経営を引き継いだ。お酒は苦手で接客の経験もなかったが、飲食業界に詳しい夫の故・憲一さんの力を借りながら営業。政財界などから多くの顧客が足を運ぶようになった。 バブル景気にリーマンショック。店の経営はいつも、時代の流れに揺られてきた。カラオケの人気がピークを迎えた90年代は設備のある店に客足が流れ、売り上げが大きく落ち込んだ。瀬川さんはそれでも、静かな店の雰囲気を守ることに徹した。腕のいいバーテンダーを雇うと、また客がついた。「お客さんがほっとできる“箸休め”のような店になればいい。そう思って営業してきた」 現在は妹の弘子さん(65)と二人三脚で店を切り盛りしている。人生の半分以上を過ごした店を畳むことに寂しさも募るが、70歳を超え「疲れた顔をお客さんに見せたくない」と引退を決めた。 閉店を知った常連客からは連日、惜しむ声が寄せられる。「でも、そろそろ次の世代にバトンタッチ。このまちはそうやって成り立ってきたのだと思う」。瀬川さんは晴れやかな笑顔を見せた。