大枠合意した日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で、欧州産の食品や革製品などの市場開放が進むことになった。人気のワインやチーズなどが今より安く購入できるようになるため、消費者にとっては恩恵を受ける機会は増えそうだ。また兵庫県内では、輸出増の商機と捉える日本酒メーカーや神戸ビーフの関係者らが歓迎する一方で、競争激化が予想される酪農家や木材業者などからは不安の声も上がる。(末永陽子)


 EPA交渉では、自動車や電化製品の輸出増を図る日本と、農産物や革製品を売り込みたいEUの思惑が一致。2019年中の発効が検討されている。欧州産チーズ、パスタ、チョコレートなどが段階的に税率が下げられ、ワインは即時撤廃。日本酒や日本産ワイン、牛肉なども関税が即時撤廃される。

 輸出増をもくろむ酒造会社にとっては追い風だ。

 「業界にとっては大変ありがたい」。銘柄「龍力」で知られる本田商店(姫路市)の本田眞一郎社長(66)は意気込む。同社の輸出比率は生産量の1割に満たないが、近年は英国やフランス向けも伸びており「中小の酒蔵にもチャンスが広がる」と話す。

 EPAには、それぞれの食品の産地ブランドを保護する狙いもあり、悪質な偽物は摘発される。神戸肉流通推進協議会は2014年から欧州へ「神戸ビーフ」を輸出。海外では偽物も出回っているため、担当者は「“本物”を広めるきっかけになれば」と期待する。

 流通業界にも歓迎ムードが広がる。大手のイオンリテールは、いち早く欧州産ワインの販促に着手。神戸ハーバーランドの食品スーパー「イオンスタイルumie」でも、フランス産やスペイン産など約100品目の特別セールを開いた。今後、ワインやチーズの種類を広げるという。

 一方、生産者らは欧州農産物との競合を警戒する。

 北欧産木材の輸入が増えれば、林業への影響も懸念される。兵庫県木材業協同組合連合会(神戸市)は「県内は流通業者が多く、安く仕入れることができるというメリットもある」とするが、県内の製材加工業者は「価格競争が激しくなれば経営が成り立たなくなる」と危惧する。

 県内の酪農家278戸でつくる兵庫県酪農農業協同組合(同)は「県内でチーズ原料向けをつくる農家は少なく、直接的な影響は不明」とする一方で「北海道産などの供給がだぶつき、原料の値下がりが続けば、兵庫への影響も避けられない」とみる。丹波市で酪農を営む60代の男性も「長い目で見れば、脅威になるのでは」と懸念していた。