神戸市会の会派「自民党神戸」(解散)による政務活動費(政活費)の不正流用事件で、岡島亮介(74)、梅田幸広(68)、竹重栄二(68)の3市議が詐欺罪で在宅起訴された。4月に書類送検された段階では「起訴困難」との見方が大勢を占めたが、神戸地検は厳しい判断を下した。3カ月で大きく変わった捜査の潮目。その舞台裏に迫った。


■想定外の処分■

 「まさか起訴できるなんて…」。7月27日、在宅起訴の一報を聞いた兵庫県警幹部は驚いた表情を見せた。

 3カ月前の4月28日、3市議を書類送検した県警の対応は消極的だった。送検した市議の氏名や容疑を明らかにせず、「言えない」と繰り返した。報道陣が説明を求めて幹部と1時間以上押し問答を続けたが、現在も公式発表はないまま。県警は関係先の家宅捜索にも踏み切らなかった。

 異例ともいえる対応について捜査関係者が明かす。「不起訴になる公算が大きかった。その場合、広報対応や捜索を巡って市議側から賠償を求められる恐れもある。慎重にならざるを得なかった」

 「不起訴濃厚」の見方には最高検の方針も影響していた。政活費の不正流用を巡る告発が全国で相次ぐ中、一定の線引きが示されたという。実際に検察側が起訴したのは数件しかなく、神戸のケースもハードルは高いとみられた。

■積み上げた詐取額■

 方針転換の理由は二つある、と捜査関係者らは打ち明ける。

 一つは任意の事情聴取に対する3市議の態度だ。書類送検を受け、地検は聴取を本格化させたが、3人とも議員辞職や政活費返還の意思は明示しなかった。地検が不起訴処分にしても、告発人らが検察審査会に不服申し立てするのは必至。不起訴不当となり再捜査を迫られる可能性があった。

 もう一つは政活費の使途だ。2014年に発覚した野々村竜太郎元兵庫県議による政活費の不正流用は、食費の補てんや保険料支払いなど私的流用が明らかで有罪となった。しかし、3市議は会派の責任ある立場で、政治活動とも取れる流用もあり、公私の区別を明らかにする必要があった。

 地検は書類送検後も県警と協力して捜査。会派活動を巡る立件は見送ったが、3市議が保管していた記録などから私的流用など計約2300万円を裏付けた。「十分起訴できる詐取額」(捜査関係者)になったことで、捜査当局は立件を決断したとみられる。

■急転直下の捜査■

 7月13日朝、地検が3市議の自宅や議員控室を捜索すると、市職員や議員らに衝撃が走った。終日に及ぶ捜索でパソコンや携帯電話、金庫などが押収された。「地検はやる気なのか」「不起訴にするためのポーズではないのか」。さまざまな観測が飛び交う中、同27日に詐欺容疑で3市議を在宅起訴。定例会見中だった久元喜造市長は記者から一報を知らされ、「聞いたばかりで答えようがない」と険しい表情を見せた。

 3市議は今後、被告として法廷に立つ。地検幹部は「使途の内容は公判で明らかにしていきたい」と自信をのぞかせる。


【神戸市会の政務活動費不正流用事件】 会派「自民党神戸」(解散)が政活費を会派でプールし、陣中見舞いなどとして2015年1〜3月、市議選の立候補者に配っていた疑惑が神戸新聞の報道で発覚。同12月、同会派は政活費の一部計約3754万円を返還したが、同市会などは疑惑解明が不十分として、詐欺や公選法違反の容疑で刑事告発した。神戸地検は今年7月、詐欺罪で市議3人を在宅起訴。架空や水増しした領収書を添付した虚偽の収支報告書を作成し、同市に返還すべき政活費をだまし取ったとされる。