冤罪が疑われる事件の証拠書類や判決などを検証し、被告や受刑者らの無罪の究明を目指す活動が関西で本格化している。昨年4月、弁護士や刑事法学者らでつくる団体「えん罪救済センター」(京都市北区)が発足。これまで約240件の相談があり、現時点で数十件の調査を実際に進めている。同センター代表の稲葉光行・立命館大政策科学部教授(情報学)は「冤罪が起きた経緯を解明することで、同じ過ちを防ぎたい」と話す。(田中宏樹)

 同センターは、米国で1992年に始まったDNA鑑定などで冤罪を明らかにする「イノセンス・プロジェクト」の日本版にあたる。兵庫や大阪、京都の大学教授や弁護士ら約30人が無償で活動する。

 起訴された刑事事件が対象で、担当弁護士が調査を必要とする事件の関係書類を読み込み、DNA鑑定や映像解析といった科学的証拠の信頼性を検証する。専門家の見解なども踏まえ、客観的な証拠により冤罪の証明が可能と判断できれば、判決確定の前後に関わらず支援する。

 甲南大学(神戸市東灘区)と立命館大学(京都市)の学生有志は活動をPRするオリジナルグッズを作製。同センターなどが6月中旬に大阪府茨木市で開いたシンポジウムで寄付金の協力を呼び掛け、返礼品としてピンバッジやTシャツを手渡した。

 同センター副代表を務める甲南大法学部の笹倉香奈教授(刑事訴訟法)は約5年前、米国でイノセンス・プロジェクトに参加。「冤罪を救済する実績を積み重ね、原因を究明することで司法制度のさまざまな課題が見えてくる」とし「息の長い活動によって、一つでも多くの制度改革につなげたい」と話した。

 同センターは書面やメールで相談を受け付ける。寄付金も募っている。同センター事務局TEL075・466・3362

■再審で無罪確定、戦後9件

 死刑か無期懲役の判決が確定後、DNA鑑定や自白の証拠能力が認められないと判断され、再審で無罪が確定した事件は戦後、9件に上る。

 1979年、死刑判決だった香川県の「財田川事件」や熊本県の「免田事件」、宮城県の「松山事件」の再審開始が決定。いずれも、83〜84年に無罪となった。1990年の足利事件や97年の東京電力女性社員殺害事件では、DNA型鑑定による新たな証拠が決め手となり、無期懲役判決が再審で無罪に覆った。

 大阪市で95年に起きた小6女児死亡火災は、殺人罪などで母親ら2人の無期懲役が確定したが、12年に大阪地裁が燃焼実験の結果から「自白は信用できない」と判断。16年8月の再審では取り調べの問題点に言及し、自白の証拠能力を認めず無罪を言い渡した。

 今年6月には、79年の「大崎事件」で殺人罪に問われ服役した女性について、鹿児島地裁が再審開始を認めた。同地裁は親族らの自白について捜査機関による誘導の可能性を指摘し「女性の関与を裏付ける客観的証拠がない」とした。鹿児島地検は7月、決定を不服として即時抗告した。

 再審事件ではないが、兵庫県内では74年に西宮市の知的障害児施設甲山学園(のちに廃園)で、男女園児2人が浄化槽から水死体で見つかった「甲山事件」で、殺人罪に問われた元保育士の女性が差し戻し審など21年間にわたる刑事裁判の末、99年に無罪となった。