インターネットバンキング(ネット銀行)の不正送金事件で、2016年に全国で発覚した約1700件の一次送金先の口座のうち、約9割が外国籍の名義人だったことが、警察庁のまとめで分かった。犯罪グループにネット上で売られたもので、兵庫県内では27件確認され、全て中国とベトナム国籍の名義人だった。留学生らが違法行為とは知らずに生活費や帰国前の小遣い稼ぎで売ってしまうケースも目立ち、兵庫県警は、詐欺罪や犯罪収益移転防止法違反罪に問われるとして注意を呼び掛けている。

 警察庁のまとめによると、16年に不正送金の一次送金先として把握した口座は1722件に上り、名義人で最も多かったのは中国籍の52%(892件)、続いてベトナム国籍の25%(438件)で、日本国籍は13%(219件)だった。

 確認された口座数は15年から3割減少したものの、名義人の外国籍の割合は増加。特に、14、15年は1%程度だったベトナム国籍が、16年は24%増と大幅に増えた。県内でも同様の傾向で、16年に把握された27件のうち、中国国籍が19件、ベトナム国籍8件だった。

 一方、12年に64件(被害額4800万円)だった不正送金事件は、14年に1876件(同29億1千万円)と大幅に増加。その後、金融機関がウイルス感染端末の早期検知の対策を講じるなどしたことから16年は1291件(同16億8700万円)に減少した。

 兵庫県内では、芦屋市内の金融機関で口座を開設し、ネット上で知り合った相手に売ったとして、20代のベトナム国籍の男と、交際相手の留学生の女が今年4月、県警に詐欺容疑で逮捕された。

 男は交流サイト(SNS)にベトナム語で「口座を売ってほしい」との書き込みを見つけたといい、昨年2月に女に開設させた口座を約1万5千円で売却。4月に、外部から不正にアクセスされた東京都の男性と、鹿児島県内の会社の口座から、計約90万円が女の口座に送金され、直後に東京都内の現金自動預払機(ATM)で引き出されていた。県警は犯罪組織の手に渡ったとみて捜査を進めているが、売買ルートは明らかになっていない。

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 「口座を売ることは犯罪です」

 今月4日、私大や専門学校の職員らを集め、神戸市内で行われた県警サイバー犯罪対策課の出前講座で、担当者が注意を促した。県警では、中国語やベトナム語など5カ国語に訳した啓発チラシも作成。関係機関に配布している。

 出前講座に参加した技術専門学校の職員は、「日本人学生へは日頃からSNSの利用方法などの注意をしているが、増えていく留学生にも気を配らないといけない」と話した。(石川 翠)


【インターネットバンキング】 ネット上で口座振り込みや振り替えなどができる金融機関のサービス。ウイルスに感染させるなどしてパスワードなどの情報を盗み取り、不正に操作して送金手続きをする事件が続いており、警察庁によると16年には全国で1291件、16億8700万円の被害が出ている。