兵庫県内屈指のニホンザル生息地、篠山市で獣害対策が進化している。定番の電気柵や捕獲などに加え、過去の出没状況が地図上でひと目で確認できるよう位置情報システムを強化。さらに、行動圏が重なる丹波市と京都府内の市町と協力する「大丹波地域サル対策広域協議会」が発足し、捕獲目標の共有や追い払い対策講習会の共催など広域連携も本格化し始めた。(中西幸大)

 兵庫県森林動物研究センター(丹波市)によると、県内のニホンザルは2月末の集計で、9市町に14〜15の群れがあり、合計約千匹が生息。篠山市周辺にいるのは5群200匹弱で、餌付け群がいる淡路島に次ぐ規模。完全な野生のサルでは最多頭数となる。

 農業被害は深刻で、2010年は篠山市周辺で約560万円に上った。電気柵の整備と駆除による「個体数管理」を進め、14年には被害額は300万円程度まで減少。ただ、サルは他の動物よりも頭が良いことから、さらなる対策の強化を目指して篠山市などは今年から、新たな位置情報システムを導入。発足した広域協議会で運用を始めた。

 システムは、サルの行動履歴を地図上で閲覧でき、人間の生活圏に近い場所での出没記録などを確認できる。行政などに限定していた機能を一般登録者にも利用できるよう改良し、住民との連携を強化。情報の細かい設定も可能になり、行動予測が立てやすくなった。篠山市の委託で監視員が週6日、5群を追跡して位置情報を配信している。

 谷筋など追い出しやすい地形に侵入した時点で、住民が一気に撃退する作戦に取り組んでいる地域もあり、情報配信を受ける京都府京丹波町の担当者は「情報が毎日配信されるので、作戦を立てやすい」と歓迎。システムを開発したNPO法人「里地里山問題研究所」(篠山市)の鈴木克哉さん(42)は「住民の目撃情報も投稿できるようにし、住民主体の対策を強化したい」と将来プランを描く。

 撃退には花火や大型火薬を使用する。加えて、篠山市では飼い犬を訓練して追い払いをさせる「モンキードッグ」も健在だ。導入7年目の今年も市内で15匹が登録。今も3匹が訓練中だ。5年前に愛犬が認定を受けた男性(42)=同市県守=は「普段の散歩でもサルが出そうな地点を意識している」と話す。

 広域協議会の事務局も兼ねる同法人の鈴木さんは「丹波全体で協力してサルを山にとどめるようにしたい」と意気込んでいる。


▽人間との共存へ 個体数管理が鍵

 兵庫県森林動物研究センターによると、県内のニホンザルは分布地域が分散して孤立化しており、繁殖のための交流が難しく、それぞれの群れの頭数も多くなく、生息環境は決して盤石とはいえないという。同じく獣害を起こすシカやイノシシなどと違い、狩猟の対象動物ではない。「種の保存」という保護の観点も念頭に、人間との共存を目指した対策が必要だ。

 対策の2本柱は「個体数管理」と「追い払い」だ。人間の生活圏を「餌場」と認識させない点は他の動物とも共通。柵と電線を組み合わせ、支柱にも通電するように兵庫県香美町で考案された電気柵「おじろ用心棒」の普及が県内で進んでいる。

 群れの規模が大きすぎると追い払いが難しく、「個体数管理」も鍵となる。篠山市では大人のメスが15匹以下にならず、追い払いもしやすい1群40匹規模を目標としている。また、人慣れして危険性が高い個体を除き、メスは原則駆除していない。

 三重県伊賀市など集落同士の連携による広域対応でサルを追い払った例もあり、同センターの山端直人主任研究員(48)は「サルは記憶力が良いので、人と場所を怖がらせれば、撃退効果が上がる。住民のまとまりと力が欠かせない」と指摘する。