韓国人男性24%が韓国社会は男性にとって不平等と考える

 世界中でジェンダー平等が叫ばれる昨今、韓国でもフェミズム運動はかなり盛り上がっている。

 韓国社会は、儒教の影響から近年までは男尊女卑の風潮が強く、反動から女性たちの権利獲得への欲求がすさまじいのだとか。

 しかし、何事もやり過ぎてしまうのが韓国人気質。その悪影響も出てきている。

 韓国女性家族省が行った「2021両性平等実態調査」によれば、韓国人男性の24%が「韓国社会は男性にとって不平等」と考えているという。

 「フェミニスト大統領になる」

 というのは、文在寅(ムン・ジェイン)氏が大統領選に出馬した時の選挙公約。

 与党・共に民主党も「フェミニズム政党」を宣言し、大統領の選挙公約を後押しした。それによって女性の雇用や育児休職制度拡大などのフェミニズム政策が次々に実施され、政権は女性から高く支持されている。

 しかし、「やりすぎだ」と、急速な変革に戸惑う男性たちからは、このような声が相次ぐ。

 文政権の5年間で蓄積され続けた不満は、韓国人男性の4人に1人が不平等を感じるという今回の調査結果となったようだ。

韓国民の過半数が廃止を望む省庁

 この調査を実施した韓国女性家族省は、日本の「省」に相当する中央省庁である(一部メディアでは部との表記もみられる)。

 女性の権益増進や地位向上を目的に、現在の韓国与党と同族の進歩派・金大中(キム・デジュン)大統領下の2001年に発足したものだ。

 設立当初から「女性」だけが省名であることが、男性をないがしろにしているという批判が相次いだ。

 中高年男性に支持層が多い保守系政党の政権下では、その廃止が幾度も検討されている。

 今年1月に韓国の世論調査会社が発表したアンケート調査結果よると、女性家族省の廃止に賛成と答えた人は全体の51.9%、反対の38.5%を上回っていた。危機感はかなりのものだろう。

 今回の両性平等調査は、女性の権利獲得をさらに促す目的で実施されたものだろうけど…、結果を見ると、藪ヘビつついて女性家族省の立場をさらに危うくした。と、その感が否めない。火に油を注いだのかもしれない。

選挙公約は阻止されが、戦いは終わらない

 最近の韓国では、フェミニストを攻撃するゲームや小説が流行り、女性がショートカットにしているというだけで「フェミニストだ!」と攻撃する異常な状況。

 昨年の東京五輪でもショートカットのアーチェリー選手が、インターネット上で罵詈雑言を浴びせられたりもしている。

 反フェミニズムの機運が高まり、女性家族省はその憎むべき象徴の1つとして標的になっている。

 大統領選では最大野党「国民の力」候補の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が、女性家族省の廃止を選挙公約として、文政権下の過度な女性優遇政策に反感を抱く層の支持を集めていた。

 特に最近は、雇用などの面で「女性優遇」を強く感じる20〜30代男性の得票率には、大きな影響があったと言われる。

 フェミニズムと反フェミニズムの戦い。選挙戦はそんな様相を呈していた。

 大統領選挙の結果は、尹氏が僅差で勝利。次期政権への移行を準備する政権引き継ぎ委員会は、公約通りに女性家族省を廃止する方針を表明した。

 しかし、公約撤回を求めて640の女性団体が声明を発表。さらに世界115の市民団体と共闘して次期政権を圧迫する。韓国内でも世論を2分する騒ぎにも発展した。

 政権のスタート早々に混乱を抱え込むのは得策ではないと判断したのだろうか。次期政権は前言撤回。「女性家族省は当面は存続させる」と問題を棚上げした。

 しかし、今後も廃止か存続かで事あるごとにもめそうな予感がする。

 選挙戦が終わっても、それによってあおられた「フェミニズムVS反フェミニズムの戦い」は、そう簡単には鎮火しそうにない。


青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。