米国側へ加わりたい世界シェア18%の韓国

 自動車や電化製品、兵器など現代の機器は半導体がなければ動かない。最近は半導体不足によって工場の操業停止が相次ぐ自体も起きている。

 それだけに半導体は、国家の存亡にもかかわる重要な戦略物資という考えが、世界的に浸透してきた。

 昨年は、日米豪印によりクアッドやG7の会議でも、半導体生産の中国依存度を減らすための方策が議論された。

 また、日米を中心とする自由主義世界と中国は、すでに半導体を巡る“戦争”に突入していると言われる。

 そんな状況で、韓国はどうするのか。

 2019年時点で世界シェアの18%を占める「半導体王国」が、どっちつかずの曖昧な態度はもはや許されない。

 保守派の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、米韓同盟の強化を提唱している。だからこそ、半導体でも米国側にくみしたいところだろう。が…今の状況ではそれも難しい。

脱中国を図る日米台の結束

 韓国に今のところ目立った動きはない。その間に、世界シェアを競い合うライバルの台湾企業が日米に急接近している。

 昨年、台湾のTSMCは、120億ドルを投じて米国のアリゾナ州で、回路線幅5ナノ・メートル(1ナノ・メートルは10億分の1メートル)の最先端製品を製造する新工場を建設した。

 今後は10〜15年をかけて米国内5か所に工場を建設する予定だという。

 また、今年4月には、日本の熊本県にも工場建設を開始した。

 建設費は9800億円にもなる。日本政府が4000億円の補助金を支出し、ソニーなどの日本企業も出資している。

 TSMCは、これまで中国で多くの工場を稼働させてきたが、その技術流出を懸念する米国が積極的に働きかけて「中国脱出」を促し、半導体産業の再建を目指す日本もそれに相乗りしたといったところか。

 台湾の独立を守りたい蔡英文政権としても、中国への依存はできる限り減らしたい。日米台の利害関係は一致している。

韓国は“あちら側”に追いやられる?

 対中包囲網を明確にしている日米台のサプライチェーンに韓国も参加するような動きを見せたらどうなるか。おそらく、中国が黙っていないだろう。

 現在、韓国の半導体輸出の40%は中国向け。香港まで含めると60%を超えると推定される。

 また、原材料の半分以上も中国からの輸入に依存し、多くの工場を中国に建設して莫大な投資もしている。

 中国に依存しすぎているだけに、報復が恐ろしくて動けない。また、この時期にサムスン電子副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)氏が贈賄罪で逮捕されていたことも痛い。

 トップが拘束されている状況では企業も大きな決断ができず、傍観しているうちに日米台同盟は結束を深めてしまった。

 日米台連合に入り込む場所を失った韓国企業は、中国への依存度をさらに深めるしかない。そうなると、日米台連合に対する中韓同盟が形成されそうな予感がする。

日本のような没落の道を歩む可能性も

 これまで米国は、韓国半導体産業が自国の利害に反していないとして、韓国製DRAMの世界シェア70%確保を容認してきた。

 しかし、韓国が中国側に行ってまえば、もはやそんな甘い態度は取らないだろう。さらに、日米には2ナノ・メートルの次世代半導体を共同開発する動きもある。

 「このままでは40年前の日本のように韓国の半導体産業も没落の道を歩むしかない」

 韓国内ではそんな嘆きもささやかれる。

 考えてみれば、80年代に世界シェア1位を誇っていた日本の半導体産業の没落も「我が国の防衛産業の基盤を驚かせている」と、米国に”敵国認定”されたのが大きな要因の1つ。

 韓国半導体産業が、同じ轍(てつ)を踏む可能性は多分にある。

 韓国と中国が半導体同盟を形成すれば、第3次世界大戦の原因に…なんてシナリオは想像したくもないが。


青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。