ドイツで慰安婦像設置を進める韓国系市民団体

 韓国国内の「慰安婦像」(平和の少女像)は100体を超えドイツや米国などでも像の設置が進んでいる。

 ドイツでは今年、6体目となる慰安婦像が設置された。

 現地の慰安婦像設置の中心にいるのが、ドイツの韓国系市民団体「コリア協議会」(Korea Verband)。

 南北統一や国際交流、移民など広範なテーマで活動しており、ドイツで慰安婦像の設置を支援してきたほか、慰安婦問題について日本政府の問題点を指摘してきた。

 ただ、多くのドイツ人にとっては、慰安婦像の背景にある日韓問題にはあまり関心がないようだ。

慰安婦像6体が公開されたドイツ

 これまでドイツでは、6体の慰安婦像が設置されている。

 1体目は、2017年3月、バイエルン州ヴィーゼントのネパール・ヒマラヤパビリオン公園に設置された。ヨーロッパ初の慰安婦像となった。

 2体目は、2020年3月にフランクフルトの韓国人教会前に設置されている。

 さらに、3体目は、2020年9月に首都ベルリン市ミッテ区に設置されたもので、公有地で初めての慰安婦像となった。

 公有地の設置に対して、日本政府がドイツ政府に抗議と撤去要請を行い、コリア協議会が猛反発して騒動になった末、ミッテ区は、像の設置期限を今年9月28日までと決定した。

 続く4体目と5体目は、2021年4月にザクセン州のドレスデン民族学博物館が、慰安婦像2体を1年間限定で展示したものだ。

 期限を迎えて展示は終わっているが、ヨーロッパの博物館で慰安婦像が展示されたのは、これが初めてであった。

ドイツの大学に慰安婦像が新設

 さらに、今年7月、ヘッセン州のカッセル大学のキャンパス内に公有地では2体目となる慰安婦像が設置された。

 撤去済みの2体を含めると6体目の慰安婦像で永久設置となる見通しだ。

 カッセル大学の総学生会が像設置を主導したものだが、コリア協議会が準備に協力している。

 このようにコリア協議会は、ドイツ各地での慰安婦像設置に広く関わっており、現地で慰安婦問題の周知に取り組んできた。

 撤去期限が迫るミッテ区の慰安婦像についても区議会議員への働きかけを行うなど、永久設置に向けた活動を続けている。

 ドイツでの慰安婦像設置に対して、日本政府の対応は後手に回っている印象だ。

ドイツの慰安婦像=反日ではない

 6体も慰安婦像が設置されたドイツだが、どうも日韓の歴史認識問題に強い関心があるわけではないようだ。

 ベルリン在住のドイツ人記者Rは、「少女像設置に賛同しているドイツ人もその大半は、日韓問題にさほど関心はないし、日本が嫌いなわけでもない」と話す。

 Rによると、ドイツでは、慰安婦像を女性の人権問題やジェンダー問題の象徴として捉えられているとのことだ。

 日本では、慰安婦像は、ほぼ日韓関係限定の話となる。

 だが、ドイツなど欧米社会では、「戦時中、性暴力などの被害を受けたアジア人女性」の象徴として、慰安婦像を見ているというのだ。

 そのため、Rは「少女像の設置が、日本では“反日”活動と認識されていると聞いて驚いた。女性の人権問題の象徴として少女像を扱っているだけで、韓国側に立って日本に敵対する意図はない。日韓間の政治問題や過去の清算は、両国が解決する問題で、ドイツは関係ない」と語った。

コリア協議会がパンフレットで慰安婦問題を広める

 「慰安婦像設置に賛同、協力しているドイツ人も、日韓関係に特別詳しいわけではない。コリア協議会が提供するパンフレットなどを読んで、勉強している人も多い」とRは話す。

 パンフレットの1部は、コリア協議会が団体の公式サイトでも公開されている(ドイツ語・英語・韓国語)。

 ここには、「日本が第2次世界大戦中、推定20万人の女性を性奴隷として扱ってきた」などと慰安婦問題の経緯を記した上で、「日本政府は戦争犯罪を反省していない」などの記述がある。

 Rは、「もしコリア協議会が伝える情報に偏りや誤りがあると言うなら、日本はもっとロビー活動に尽力すべきだろう。ただ、私たちは、女性の権利問題という人類共通のテーマについて話し合いたいだけである。日韓問題をドイツに持ち込んでほしくない」と指摘した。

 実際のところ、ミッテ区のように何らかの騒動が起きない限り、慰安婦像がドイツメディアに取り上げられること自体、ほとんどないとのことだった。

 大半のドイツ人にとっては、女性の権利問題というテーマで慰安婦像ができたと思ったら、日本と韓国が第3国でいざこざを繰り広げているという印象なのかもしれない。


八島 有佑