9月9日から全国公開を迎えた劇場アニメ『夏へのトンネル、さよならの出口』のスタッフトークショー付き上映が9/13(火)に開催された。
当イベントには監督を務めた田口智久さんとCLAPの松尾亮一郎プロデューサーに加え、色彩設計を担当した合田沙織さんが登壇した。



色彩設計の合田さんが登壇する本イベントでは主に作品における「色合い」や「光」に特化したトークが披露された。

まず合田さんが「色彩設計」の役割について問われると、
「シーンやキャラクターの動きに合わせて、色を決めていく作業をしています。そのために、” カラースクリプト”を作るという作業をしました」
と説明。

カラースクリプトという聞き慣れない単語について深掘りを求めると、監督から
「映像制作には監督以下、何百人というスタッフがいるのですが、特にアニメーションは色がつくまでの完成画像が共有しづらいという難点があります。それを制作初期の段階で統一しようというのがカラースクリプトを作る目的です。『夏トン』の制作ではコンテが上がった段階で各シーンごとに『ここのシーンの画面の雰囲気は、色も含めてこういうものだ』というのを全部作りました。この作業を合田さんにやっていただきました」との詳細な解説が。


過去、合田さんとは『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』という作品からこのような手法を取っているとのことで、日本のTVアニメーションでは珍しいものだったという。


シーンごとに配色を行うことは監督が「地獄への道のり」と表現するほどの難作業ではあったものの、このような手法で作られた絵コンテを初めて見たMCの小山さん(企画制作プロデューサー)も、とても見やすいという感想を抱いたそうで、数多くの制作スタッフのイメージ統一に寄与しただろう。


そんな経緯で制作された画面全体の色彩は、映画を作る初期段階からシーンごとに全部色は変えようと決めていたというほどに、監督のこだわりポイントだったそうだ。



さらに、こういった色彩には「リムライト」と呼ばれる環境光の反射にもこだわりがあったという。
田口監督は「セルは黒い実線で囲われているけれど、リムライトとハイライトの実線の色を変えたい」とふと思いつき、このチャレンジングなアイディアをどう実現すべきかとキャラクターデザイン・総作画監督の矢吹さんが頭を悩ませたという。
そういった苦労は、例えばキービジュアルの靴裏や駅ホームのシーンで緑色のハイライトが入っている点に表れているのでぜひ注目してほしい。



一方、合田さんのこだわりシーンはオープニングで塔野カオルがMDプレーヤーのスイッチをオンにすると、影の方に色が入るところとのこと。
特に監督からは指示のないシーンだったが、試しに色を入れてみたところ「いいじゃん!」となり、実際に映像に反映されたそうだ。



「ディスプレイが光るとその照り返しの色が手に写るんですが、通常の作画の指示では単に『影になる』という指定になります。それにわざわざ色を付けました」(監督)

一方、キャストからは「空の色が独特な作品」との感想もあったそうだ。

それもそのはずで、なんと空の色だけでもシーンごとに細分化されており、時間帯・天候・季節によってカラースクリプトを制作、合田さんをして「かなり作ったな」と言わしめるほどだったようだ。



空の青色とは対象的な”ウラシマトンネル”内の赤色についても苦労したエピソードが。

もともとホラーな印象を受ける青みがかった赤色を想定していたものの、監督がこだわりにこだわり抜き、最終的に制作プロデューサーの松尾さんも知らないところでリテイクを10回以上重ねたのだという。



締めくくりの挨拶では、「もっとたくさんの方に観てもらいたいので、お友達にも広げてほしい」「何度見ても新しい発見があると思います」「こだわりの部分にも注目して観て頂ければありがたい」とのメッセージがそれぞれよりあり、トークショーは盛況のうちに幕を閉じた。


鮮やかな色彩が大きな魅力である『夏へのトンネル、さよならの出口』は現在全国劇場にて上映中です。
ぜひ劇場にてご覧ください。
公式サイト:https://natsuton.com/