本妙寺(熊本市西区)に預けられていた国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園(熊本県合志市)の加藤清正公像が19日、18年ぶりに園に戻った。故郷や家族と引き裂かれ、神や仏にすがるしかなかった入所者たちの心のよりどころだった清正公像の“帰郷”に、入所者らは喜びをかみしめた。

 清正公像は1898年に造られた高さ約50センチの木像。かつて本妙寺周辺で暮らしていた患者らが園(当時は九州療養所)に収容された後も、寺の方角に向かって祈りをささげていたため、本妙寺が1909年5月に園に贈ったとされる。

 以来、清正公信仰に救いを求める日蓮宗の入所者たちに手厚く祭られてきたが、99年の台風で安置していた法華堂が損傷。入所者の高齢化と減少で維持管理も難しく、法華堂が解体されたため、預けられた。しばらくは、信者代表が春や秋の彼岸などに本妙寺に通い、お参りを続けていたという。

 この日、本妙寺を訪れた恵楓園入所者自治会の太田明副会長(73)や園職員らが謝辞を伝え、重厚な厨子[ずし]とともに梱包[こんぽう]して園に運んだ。園内の社会交流会館(歴史資料館)の増築計画が実現した後、ハンセン病の歴史を物語る文化財として展示するという。

 記録が残る82年当時に120人を超えていた園内の信者は現在、10人前後。「昔は神や仏にすがることで入所者は精神的、肉体的な安定を図っていた。清正公像は入所者の守り神として大きな存在だった」と太田副会長。「自治会創立91年の記念日に本妙寺と恵楓園の深く長い縁を示すご本尊が戻ることは、とても感慨深い」と顔をほころばせた。

 池上正示[しょうじ]住職(57)も「入所者の方が信仰を注いだご尊像であり、園に戻ることが一番いいことだと思う」と見送った。(浪床敬子)