熊本地震後、阿蘇地域の中核病院として急患の受け入れや医療資源の確保に努めている阿蘇医療センター(阿蘇市)。地震から1年4カ月近くがたち、医療環境はどう変わり、何が課題となっているのか。阿蘇郡市医師会理事でもある甲斐豊院長(56)に聞いた。(岡本幸浩)

 −急患や外来の受け入れ状況は。

 「地震前、月平均70件だった急患は現在、約90件。特に南阿蘇地域からの外来、入院が増えたままの状態が続いている。27日に予定される南阿蘇村の阿蘇長陽大橋の開通で大津町方面へのアクセスが改善し、救急指定病院の阿蘇立野病院は外来診療を全面再開するが、患者の動向は分からない。見守りたい」

 −阿蘇地域は地震前から医師不足が深刻でした。

 「人口10万人当たりの数は、最多の熊本地域の約3分の1。耳鼻科や皮膚科は地元に医師がおらず、診療機会が限られていた。地域外の医療機関を受診するケースが多かったところに地震で交通事情が悪化し、困っている患者も多いと聞く。センターでは小児心のケアや神経内科、口腔[こうくう]外科相談などの特殊外来を開設し、対応に努めている」

 「地震で人材流出も深刻化しており、看護職員は地域全体で60人以上が離職した。県の支援策で全国公募に応じた十数人が現在までに就業したが、医師を含めた人材確保は最大の懸案。センターの常勤医9人は地震前と変わらないが、患者の増加でスタッフの心身の負担は増している。限られた人材で適切な医療をどう継続させるのか、悩ましい」

 −今後の阿蘇地域の病床数などを協議する地域医療構想の調整会議が始まりました。

 「現在の851床(精神病床除く)について、国はほぼ半数の447床を適正数と示している。地震後の状況が加味されておらず、今以上に適切な医療が提供できなくなる恐れがある。会議の委員として、慎重な議論を求めていきたい」