2029年の開園100周年に向けてリニューアルを進めている熊本市動植物園(同市東区)。その目玉が、ライオンと草食獣を水堀で区切りながら〝共生〟を演出する「サバンナエリア」の整備だ。この展示方式に対し、熊日のSNSこちら編集局(S編)に「ライオンが水堀を渡るかも…」と、熊本市の男性(72)から草食獣の被害を心配する声が届いた。対策を調べると、再整備に込めた園の思いもみえてきた。

 そもそもライオンの飼育方法にルールがあるのだろうか。環境省によると、ライオンは動物愛護管理法で特定動物(危険な動物)に指定。愛玩目的で飼うことは禁止され、動物園で飼育する場合は、都道府県や政令市の許可が必要という。その際に「守るべき基準」として、逸走防止の対策などが求められている。

 熊本市動植物園の計画ではサバンナエリアは広さ約0・9ヘクタールで、ライオンやキリン、マンドリルなど9種を飼育する。松本充史園長は「エリアの整備は、法に基づく基準に沿って進めている」と説明。対策のポイントはライオンと草食獣を区切る水堀という。

 水堀は幅7・6メートル、深さ5メートル。園で最も大きい体長約2メートルの雄のライオンが、立ってジャンプをしても前脚が堀の縁まで届かない高さに設定したという。堀の底から高さ約3メートルまで水を張る想定。「ライオンは水が苦手。この水堀を飛び越えられるほどの跳躍力もない」(松本園長)という習性を生かした対策という。

 既に水堀でライオンを管理している施設はある。名古屋市東山動植物園や天王寺動物園(大阪市)だ。両園の水堀の幅はいずれも9メートル、深さは5〜6メートル。両園とも「飼育上の問題はない」と口をそろえる。

 サバンナエリア近くには観覧エリアが設けられる予定。肉食獣と草食獣の共生を演出し、まるで自然の草原に来たような光景を来場者に楽しんでもらう。ただ「園の呼び物にすることだけが目的ではない」と松本園長は言う。

 もう一つの狙いは、飼育環境の改善だ。ライオンは現在、コンクリート天井や壁に、鉄のおりと強化ガラスで囲まれた約40平方メートルで展示されている。一方で新エリアは開けた空の下で過ごせるようになる。樹木や水辺も配置する予定だ。

 松本園長は「本来生息している環境にできるだけ近づけることで、動物のストレスを軽減したい。来場者にも自然の中で生きる動物の美しさ、力強さを感じてもらえば」と力を込める。(原大祐)