備中倉敷学は、備中・倉敷地方の歴史と文化を学び、文化的向上を資する会です。
平成17年(2005年)10月20日の第1回は、「現場研修会 観龍寺の歴史:講師 観龍寺住職 村田隆禅(むらた りゅうぜん)さん」から始まり、令和2年(2020年)2月13日までに、幅広い演題などで170回にもわたり開催されています。
新型コロナウイルス感染症流行に伴い、長い間開催ができていませんでしたが、令和5年(2023年)9月14日から再開されました。
毎月開催の講演会は広く市民に開放され、誰でも無料で参加可能です。
倉敷を中心に広い地域の歴史と文化を学べる「備中倉敷学」について紹介します。
備中倉敷学とは
平成17年10月から始まった「備中倉敷学」。
会が発足した目的や講演内容などについて、紹介します。
「備中倉敷学」は倉敷の重要伝統的建造物群保存地区周辺の関係者(町衆)が、地域の歴史・文化等を学ぶ会を目指して発足させたもので、会名を「備中倉敷学」と命名しました。会員を口コミで集め、平成十七年十月に第一回を開催しました。
備中倉敷学 公式ホームページより
見学会を兼ねた講演会を毎月(八月は休み)第二週の木曜日午後二時から開催してきました。倉敷公民館との共催で、そこの大ホールで講演会を開いています。会員だけでなく、広く一般の方にも事前申込みがなくても無料で参加して頂いています。
会員は、年一回バスでの県内の現地研修会と、身近な処でも通常では見られない所への見学会に参加でき、会員限定の特典となっています。
講演内容は、地元、倉敷だけでなく広く備前・備中地域にも広げ、また分野も多岐にわたって興味がわく演目を選び、講師もその話なら出来ると云う方にお願いし、実施してきました。
平成二十八年五月には百五十回目の例会となります。講演会には常に会員・会員外の方を含め平均七十名前後の聴講者を数えます。
これからも「備中倉敷学」の会の趣旨に賛同される方の会員を増やし、「町衆」の力で会を盛り上げ、楽しく学んでいきたいと願っています。
重要伝統的建造物群保存地区とは
文化財保護法の改正(昭和50年)により伝統的建造物保存地区の制度が発足。城下町・宿場町などの歴史的な集落・町並みの保存が図られ、各市町村が国へ地区を申請し、国が価値が高いと判断したものを重要伝統的建造物保存地区として選定します。
倉敷美観地区は、「倉敷市倉敷川畔」として選定済みです。
令和2年2月までの講座内容(全170回)を振り返り

令和2年(2020年)2月13日までに開催された講座は次のとおり。
開催された講演会の多さに驚きですが、幅広い演題・そうそうたる講師のかたがたにも心引かれます。
見学研修会も、観龍寺、阿智神社から始まり、井原市や瀬戸内海に浮かぶ本島までおこなっています。
倉敷だけでなく、広い地域を見学することで、身近な歴史・文化について新たな発見があるのかも知れませんね。

令和2年2月までの講座内容(全170回)は以下のとおりです。
これまでに備中倉敷学や村田会長による倉敷市の歴史などについての書籍も販売されています。

令和5年9月14日から再開
令和5年9月から再開される講演などは次のとおり。
どの回の演題も興味深く楽しみですね。
開催日 | 演題など | 講師など(敬称略) |
---|---|---|
令和5年9月14日 | 地域とともに100周年 | 倉敷中央病院特任理事 富田秀男 |
令和5年10月12日 | 古文書から見る倉敷村の古禄・井上家 | 備中倉敷学顧問 山本太郎 |
令和5年11月16日(第3木曜日) | 岡崎嘉平太 | 岡崎嘉平太記念館学芸員 初岡綾子 |
令和5年12月14日 | 鬼ノ城と桃太郎伝説 | 極楽寺住職 武田恭彰 |
令和6年1月11日 | 神社のいろは | 鶴崎神社宮司 太田浩司 |
令和6年2月8日 | 梶原元治 | 元金光図書館館長 金光英子 |
令和6年3月14日 | 楯築遺跡とその時代 | 岡山商科大学特任教授 福本明 |
「備中倉敷学」企画委員にインタビュー
「備中倉敷学」企画委員のかたがたへインタビューしました。
「備中倉敷学」は、観龍寺住職 村田隆禅さんを会長に11名で運営。
そのなかから、以下のかたへインタビューをおこないました。
- 事務局の吉村榮輔(よしむら えいすけ)さん
- 会計の尾崎洋子(おざき ようこ)さん
- 理事の山根巌(やまね いわお)さん
- 理事の鎌田栄治(かまだ えいじ)さん

──「備中倉敷学」では、どのような活動をしていますか。
吉村(敬称略)──
観龍寺(村田住職)さんを中心として、山根さんたち他何名かのかたが発起人となり、備中倉敷学をやろうと始まりました。
最初は観龍寺さんの境内から始まり、その後倉敷市倉敷公民館の大ホールを借りて、公民館との共催として開催。
備中倉敷学は会員さんとその会費で成り立っており、会費とボランティアの会員さんで運営しています。
実は会費を必要としない一般のかたも講演会の参加は無料のため、一般のかたも多く参加しています。
会員の方は会員限定で年1回バスで見学研修会・懇親会を参加費一部負担で開催。会員さん同士の交流、会員さん皆で備中倉敷学を盛り上げる場として大切なものに成っています。
会員にも個人会員と協賛(法人)会員があり、個人会員は年会費4,000円、協賛会員のかたは年会費10,000円。会員の申し込みは、講演会の受付にて申し込みできます。
新型コロナウイルス感染症流行の影響や、会員の年齢層が高く70歳以上が70%を占めるなどもあるため、再開を機に若いかたの個人会員への入会が増えればいいですね。

──ホームページでの発信もされていますね。
鎌田(敬称略)──
私がホームページの更新をしています。
これまでの講座は、平成17年10月から170回開催し、今後の講座についてもアップ済みです。
おもには、「備中倉敷学」が発行した書籍などの出版に携わっており、その結果、企画委員として活動するようになりました。

──これまで170回も開催されているんですね。講演や講師はどのように選ばれているんですか。また、これまでの講演を見ることは可能ですか。
吉村──
月に一度くらい企画委員会を開催し、各企画委員が次の講師を推薦のうえで決定しています。
また、これまでの講演会について、150回近くはDVDとしてまとめており、倉敷公民館の音楽図書室に保管しています。
亡くなられた講師のかたもおられるため、貴重な資料だと思っていますが、十分な整理ができていないため、活用するのは難しい状況です。
今後、より良い整理・活用方法について、検討していきたいと思っています。
──現在、運営をしている企画委員のかたがたの構成はどうなっていますか。
吉村──
会長は観龍寺の村田住職。
私が事務局をしており、私を含めた企画委員が8名です。
また、市のOBのかたに副会長をお願いしています。
──人気のある講座はありますか。
山根(敬称略)──
講座として人気があるのは、NHK大河ドラマと一緒で戦国時代や明治維新が人気ありますね。

──尾崎さんは、「備中倉敷学」の会計として活動されているほかに、どのような活動をされているのでしょうか。
鎌田──
尾崎さんは、有名なお花の師範(先生)をしていて、展覧会の開催や「備中倉敷学」では、講演会のたびに大きな生け花を生けてくれています。

尾崎(敬称略)──
お花の流派は全国に300近くあり、私の流派は桑原専慶流(くわはらせんけいりゅう)。
家元(いえもと)は京都であり、倉敷市では所属している人が多い流派になります。
また「備中倉敷学」のきっかけは、私の地元である倉敷市中島の出身の「三島中洲(みしま ちゅうしゅう)」について学んでいたことや歴史が好きだったためです。
「中島学区郷土を学ぶ会」にも所属し、三島中洲が書いた掛軸の解読や三島中洲についての本を出版しています。
実は倉敷市立中島小学校の5年生は毎年、三島中洲について学ぶなど身近な存在になっています。
山根──
三島中洲は、二松学舎大学(にしょうがくしゃだいがく:現東京都千代田区)の創立者であり、大正天皇の教育係としても有名です。
──「備中倉敷学」名前の由来はありますか。
山根──
「備中倉敷学」の名前は、森田酒造の森田さんが名づけの親です。
実は、森田さんや「備中倉敷学」の企画委員の多くが観龍寺の檀家であり、観龍寺を中心に集まった会であるのが特徴ですね。
鎌田──
会の名前の由来というわけではなく、公に言っている訳ではないですが、大原孫三郎(おおはら まごさぶろう)が市民が勉強する場としておこなっていた「倉敷日曜講演」の流れとしてもつながっていると思っています。
市役所が主体となり開催している講座や個人が趣味的に開催している講座とは違い、官と民が連携して開催しているNPOのような活動であるからこそ、長い期間、続けられているのではないでしょうか。
──令和5年9月から再開する講演会。どの講演も面白そうですね。
吉村──
一つ目の講座が、倉敷を代表する「倉敷中央病院」の講座であるため、再出発に相応しい講演ではないかと思っています。
倉敷といえば大原家。
大原家が創立したのが倉敷中央病院。
その中央病院が100周年を迎えたため、注目してほしいです。
尾崎──
倉敷中央病院は、令和5年6月2日に100周年を迎えました。
そのための記念事業の一環として、「止水壁の設置」や、「折り鶴ウォール」などの取組みもしており、非常に盛り上がっていますね。
山根──
盛り上がりの一つとして、先日倉敷市で開催された「G7倉敷労働雇用大臣会合」についても、大原孫三郎による労働衛生環境改善に取り組まれてきたことも関係しています。
──3年間を経ての再開ですが、苦労した点などあるのでしょうか。
鎌田──
強制的にやっているわけでもなく、商売としてやっているわけでもないため、苦労というよりは、再開するのが当然。
いつから再開しましょうか、といった感じでした。
当然、辞める気持ちはなく、自然の感じでやっています。
そう考えてみると、不思議な会ですよね。
吉村──
そのとおりですね。
再開に至るまでに苦労はなく、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行してからはいつから始めようか、と自然に再開できた感じです。
本来であれば、2023年4月から開催したいところでしたが、準備などもあり9月からの再開を発表できました。
多くのかたが講演会に参加し、一人でも多くのかたが会員として入会してもらえればと思います。
おわりに
筆者自身も心待ちにしていた「備中倉敷学」が、令和5年9月14日に再開することが発表されました。
約3年半にもわたり、開催することが叶わなかったにもかかわらず、すでに令和6年3月までの多岐にわたる講演会内容が公開済。
100周年を迎えた倉敷中央病院、倉敷村の古禄 井上家、岡崎嘉平太や鬼ノ城と桃太郎伝説など、第1人者のかたから学べる、興味を惹かれる演目が目白押しです。
一つだけ残念なのが、木曜日の平日が開催日であることですが、筆者自身も可能な限り参加し、備中・倉敷地方の歴史と文化について、幅広く学び、文化的向上の機会にしたいと思います。
令和5年9月14日には、ぜひ会場でお会いしましょう!
著者:眞鍋忠義