最近のクルマには、多様化されたシフト方式の採用が増えてきています。一方で、複雑なシフト操作は、ドライバーの操作ミスの要因にもなる可能性がありますが、なぜシフト方式は多様化しているのでしょうか。

シフトレバーの多様化が進む背景や、その種類とは?

 ひと昔前まで、国産AT車のシフトレバー形状は棒状のものが一般的でした。しかし、最近の新型モデル(ハイブリッド車)には、丸形やボタン式が採用される例が増えています。

 そのため、レンタカーなど初めてのクルマに乗る場合は戸惑うことが増えているほか、一説には事故の要因になっているといいます。なぜ、シフト方式は多様化したのでしょうか。

 シフトレバーの種類といっても前述のレバー形状からシフトレバーの配置などで、大きく異なっています。 

 AT車の比率が急増した頃から、長らく採用されているのが「フロアシフト」です。シフトレバーはセンターコンソール部分に設置されています。

 フロアシフトタイプでは、当初から「ストレート式」といわれる構造が採用され、奥から順に「P→R→N→D→2→L(SやB)」となり、Dレンジ時に横にずらして「+、-」を操作することで、任意でシフトチェンジできるタイプもあります。

 また、「ゲート式」ではシフトポジションの移動がジグザグになっており、シフトの誤操作を防ぐ狙いがあるようです。

 次に、ハンドル脇にレバーが設置されている「コラムシフト」というものもあります。1980年代の高級車や、黎明期のミニバン、商用車に採用されていました。

 シフトレバーの位置をハンドル脇に移動することで、前席の居住性を向上させるなどのメリットがあります。

 近年主流になりつつあるのが、インパネ部分に配置されている「インパネシフト」です。コンパクトで邪魔にならない位置にありながら操作性が高いというメリットがあり、軽自動車から高級車など幅広いモデルに採用されています。

 また、シフトポジションに関して、近年のハイブリッド車の多くには、シフト操作後にニュートラル(N)位置に自動で戻るタイプがあります。ストレート式やゲート式のように、シフト位置が分かりづらいことから、操作ミスを誘発しやすいというデメリットも存在するのです。

 ほかにも、「Bレンジ」が採用されている車種では、バックのBと勘違いしてしまう人も多く、後退したつもりが前進してしまい追突事故を起こしてしまうケースも発生しているようです。

 シフトレバーが多様化する理由について、大手自動車メーカーの担当者は以下のように話します。

「シフトレバーの方式が異なる理由として、まずガソリン車とハイブリッド車の差別化や、ドライバーが運転する際に瞬時に違いが分かるためなど、さまざまな要因があると思います。

 また、最近では機械的ではなく電気信号で制御するシフトバイワイヤ機構が普及したことによって、自由度の高いデザインや場所を選ばずに設置できるメリットが出てきました。

 その結果、クルマに対する最先端・高級感なイメージを演出するためにシフトレバーではないタイプを採用する例も増えています」

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 ガソリン車とハイブリッド車という点において、ホンダ「フィット」はフロアシフトというのは共通なものの、ガソリン車が従来のシフトレバー(ストレート式)のを採用し、ハイブリッド車は丸形の(N位置に自動で戻る)ものを採用。

 また、同じホンダのSUV「CR-V」では、インパネシフトを共通としていますが、ガソリン車ではシフトレバー(ストレート式)、ハイブリッド車ではボタン式を採用するなど、それぞれの個性を演出しています。

 CR-Vの開発担当者は、「ハイブリッド車には最先端なイメージがあることから、ボタン式を採用しています。また、米国の上級モデルを中心に、このほかの車種でもボタン式を採用しています」と説明しています。

AT車なのにマニュアル操作ができるクルマとは?

 近年のクルマでは、AT車でありながら、マニュアル操作の感覚を体感できる「MTモード付きAT」のモデルが増えています。

 おもに、前述のストレート式でDレンジの際に横に移動することでシフトチェンジできるものや、ハンドルに設置されている「パドルシフト」でシフトチェンジをおこないます。

 パドルシフトでは、シフトレバーとは別にハンドル裏にシフトのアップ・ダウンのレバーが配置されており、ハンドルを握ったままシフトチェンジをおこなうことが可能です。

 スポーツタイプのクルマに多く採用されており、コーナリングや回転数に合わせながら思い通りにシフトチェンジができ、AT車ながらMT車のような運転感覚が楽しめます。
 
 MTモード付きATにはさまざまなタイプがあり、大きく分けて3種類が存在します。

 ひとつめは、長い間主流であるトルクコンバーターを使用した「トルコンAT」ベースのものです。現在では、6速ATなど多段化が進み、トルクコンバーターの性能向上、シフトダウンの機能の進化(回転数を合わせるブリッピング技術など)もあって、本物のMT以上に素早くシフトチェンジができるようになりました。

 ふたつめが、プーリー(滑車)と金属ベルトやチェーンを組み合わせた無段階変速の「CVT」ベースのものです。

 以前は小型車に搭載されていましたが、近年では金属ベルトの耐久性向上などもあり大パワーエンジンでも搭載が可能になり、最近ではスポーティ感を演出するMTモードを搭載します。

 みっつめは、本格的なスポーツカーや欧州車が多く採用しているのが、実際のMT操作とクラッチ操作を自動化した「DCT(デュアルクラッチトランスミッション)」ベースのものです。

 ほかのふたつよりもMTモードのダイレクト感が感じられ、よりMTに近い感覚で運転できますが、一方で、車庫入れや信号待ちからの発進、渋滞のような超低速時ではギクシャクするクセがあるなど一長一短な部分もあります。