現代のクルマはほとんどがAT車となり、MT車はめっきり少なくなりました。日産「GT-R」やホンダ「NSX」などのスポーツカーも2ペダルで運転できるようになりましたが、MT車が設定されているモデルもあり、人気があるのも事実です。運転する機会は少なくなりましたが、MT車を上手に乗りこなすには、どのようなことに注意したらよいのでしょうか。

ほとんどのクルマがAT車の現代におけるMT車の存在意義とは?

 クルマの運転と聞いて、いまやAT車(オートマチックトランスミッション車)が当たり前になりました。

 国産スポーツカーの最高峰ともいえる日産「GT-R」やホンダ「NSX」は2ペダルで運転できるようになり、ポルシェやフェラーリにおいてもAT限定免許で運転できるモデルがラインナップされるなど、MT車(マニュアルトランスミッション車)は少なくなりました。

 かつてはAT車よりもMT車のほうが燃費が良いといわれましたが、現在ではAT車(CVT含む)のほうが低燃費なことも多く、スポーツ走行でも一般の人のレベルではATのほうが速く走れます。

 そんななか、トヨタ新型「カローラシリーズ」やスズキ「スイフトスポーツ」などには6速MTモデルが用意されていたり、同じく6速MTが設定されるマツダ「ロードスター」は「人馬一体」をうたい、MTで乗りたいクルマとして人気があります。

 そうなると、MT車の優位性は感覚的なことで、クルマをダイレクトに操作しているという楽しさとだといえます。

「選んだギアとエンジンの回転数が合って気持ちよく繋がった」「ATのMTモードでは味わえないエンジンブレーキ」など、自分の運転技術が如実に現れるからこそ、MT車を操作する面白さがあるのでしょう。

 乗り手の技量によってスムーズにもじゃじゃ馬にもなり、運転するたびに乗りこなす楽しみを毎回味わえるのがMT車の魅力です。

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 MT車に乗り慣れていない人は、エンストを恐れて半クラ状態でギアをつなぐことが多いようですが、これはトランスミッションにとってもクラッチにとってもあまりお勧めできません。

 さまざまなクルマの販売を手掛けてきた中古車販売業者のスタッフは次のようにいいます。

「多くの人は、恐る恐るクラッチを切って繋ごうとするので、エンジンの回転数が落ちてしまい、結果としてエンストしてしまうケースが多いです。

 駐車時などの極低速はともかく、普段の運転では、むしろアクセルを上手に使って少し吹かし気味にして、エンジンの回転数を上げることで、エンストを回避できます。

 ギアをつなぐときはスパッと繋いでクラッチを離すことで、ギアがつながりやすいケースもあります。

 いつまでも半クラ状態ですと、クラッチ板もミッションにも負荷がかかりすぎて痛めてしまうので、ギアを入れたらスパッと繋ぐと、機械にも負担の少ない操作になると思います」

 また、元レーシングドライバーの照屋孝明氏は、MT車を運転するときのコツについて次のように話します。

「変速時に、単純にクラッチを切ってシフトレバーを操作するというより、変速前に少しだけニュートラル方向に力を加えておき、クラッチを切る寸前にアクセルオフした瞬間のギアが抜ける感覚、そしてミッションとエンジンの回転数が合って、次のギアにスッと吸い込まれる感覚。この感覚がつかめるとかなり運転がスムーズになると思います」

「ヒール&トゥ」ってなに? MT車を上手に運転するコツとは

 最近ではめっきりその名前すら聞かなくなった「ヒール&トゥ」というテクニックもMT車ならではの操作法です。

 ヒール&トゥは、おもにシフトダウンするときに繰り出すテクニックですが、クラッチを切ってギアをニュートラルにし、そのタイミングで1段下のギアの回転数に合わせるために、右足のつま先でブレーキを踏みながら、かかとでアクセルをふかしてギアをスムーズにつなぐ一連の動きをいいます。

 ATのMTモードでもシフトダウンすると一瞬回転数が上がる動作で感じることができますが、それをドライバーがマニュアル(手動)でおこないます。

 回転数を合わせることで1段下のギアにスムーズにつながり、エンジンブレーキを有効に使うことができるのです。

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 AT限定免許だとMT車を運転できないと思っている人もいますが、免許の限定解除をすれば、MT車にも乗れるようになります。

 教習所には、「限定解除」というコースがあります。その名のとおり、「AT車のみ運転可能」だった免許の「限定」をなくしてMT車も運転できるようにするための教習コースです。

 すでに交通ルールなどを認識している免許保有者なので、最低4時間ほどの実技教習を受け、最終的に教習所内での卒業試験をパスして運転免許試験場で更新手続きをおこなうと、MT車も運転できるようになります。

 欲しいクルマにMT車しかなかった場合、AT限定免許ではそのクルマに乗れないことになってしまいます。ヨーロッパなどではMTのレンタカーが主流ということもあり、海外で運転する機会がある人は、MT車を運転できるほうがよいでしょう。