山や林に足を伸ばすと、不法投棄されたクルマを見かけることがあります。何年もそのまま放っておかれているように見えることもありますが、最終的には誰がどのように処理するのでしょうか。

不法投棄されたクルマの処理はどのようにして進むのか

 人里離れた山林や廃道で、朽ち果てているクルマを見かけることがあります。千葉県君津市の三島隧道では、長い年月放置され、苔や泥まみれになったトヨタ「ランドクルーザー・シグナス」が見つかり、話題にもなりました。

 一説によれば、このランドクルーザーは盗難車の可能性があり、犯人によって不法投棄されたクルマとも考えられます。このようなクルマは、最終的にどのようにして処分されるのでしょうか。

 まず、放置されていた場所が公有地だった場合から見ていきましょう。

 山林や道路などの公有地に不法に投棄されたクルマは、各自治体が処理を担当します。

 まず、ナンバープレートや車両番号により、そのクルマの使用者や所有者を探します。

 使用者や所有者が見つかった場合は撤去を促しますが、撤去されなかった場合や使用者や所有者が見つからなかった場合、すでに亡くなっている場合には、自治体が措置命令を出して撤去を代行します。

 この費用は公益財団法人「自動車リサイクル促進センター」が補助する場合があります。

 実際に、山林で車両の撤去をおこなった自動車工場のスタッフは、次のように話します。

「所有者が判明しているクルマを、崖下から引き上げたことがあります。普通のレッカー車では引き上げができないくらい高い崖の下だったので、クレーンが付いている専用の車両を使って、崖下からクルマを宙づりにして引き上げました。

 引き上げたクルマはエンジンがかからず、自走もできない状態だったので、そのまま積載車に載せて工場へ運び、最終的には自動車のリサイクルを専門とする業者に引き渡されて処分されました」

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の第16条では、「みだりに廃棄物を捨ててはならない。」とされ、「不法投棄をした場合、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または両方」と定められています。

 また、不法投棄が個人によっておこなわれたものではなく、会社組織であった場合には、「法人に対して3億円以下の罰金」と定められています。

 不法投棄を目的に廃棄物を収集または運搬した場合には「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または両方」ともあります。

 いうまでもなく、公有地にクルマを不法投棄した場合は法律違反として裁かれる可能性があります。

※ ※ ※

 クルマが公有地に不法投棄されていた場合、まずは自治体が所有者を探し、最終的には業者の方々が処分をおこないます。

 しかし、クルマが不法投棄される場所には、海や崖の下などの、一度落としてしまえば容易に発見できないところもあります。

 2003年には、北海道江差町で海中に沈んだワゴン車が発見され、クレーン車によって引き上げられましたが、沈没したのは1993年7月に発生した「北海道南西沖地震」の津波によるものだとされ、じつに10年以上にわたり発見されることはありませんでした。

 函館新聞の報道によれば、このワゴン車には事件性がなく、所有者も見つかったとのことですが、「撤去は代行」であるため、引き揚げの費用は所有者負担となったとされています。

不法投棄された場所が私有地だった場合は?

 不法投棄された場所が公有地ではなく、個人や企業が所有する私有地だった場合はどうなるのでしょうか。

 基本的に、私有地への不法投棄や放置に関しては、民事事件として扱われます。

 しかし、民事事件として扱われるとはいえ、不法投棄されたクルマが盗難車であったり、犯罪に使われている可能性はあります。そのため、まずは警察に相談し、使用者や所有者を探すこと、盗難、犯罪に関わっていないことを確認する必要があります。

 警察の調査の結果、使用者や所有者が見つかれば、警察から使用者・所有者に指導があります。もしも盗難、犯罪に関わっている場合には、警察がクルマを移動することもあり得ます。

 所有者は判明したにもかかわらず所在不明のために対応できなかった場合は、簡易裁判所に「妨害排除請求訴訟」と「損害賠償請求訴訟」をおこない、判決後に土地の所有者が撤去処分をすることになります。

 警察で所有者が確認できなかった場合には、民法239条(無主物の帰属)を根拠に、土地の所有者によって撤去・廃棄処分が可能です。

 ただし実行する際は、前もって張り紙をして撤去・処分を知らせる、また写真を撮るなどしてその証拠を残すなどの必要があり、手続きについては弁護士など、専門家の手助けが必要となります。

※ ※ ※

 不法投棄されたクルマは、適正に処分されないことから環境負荷の原因としても問題視されています。

 環境省の「不法投棄及び不適正保管への対応に向けた使用済み自動車判別ガイドライン」では、公有地・私有地に限らず、放置されたクルマを適正に処理・リサイクルする方法が検討されています。

 そのなかでは、放置されたクルマが発見・通報され、調書作成の7日以上放置されたものについては、放置自動車と認定して撤去に向けた処理を勧めるフローを一例として挙げています。

 放置されたクルマには、クルマの固有番号とも言える「車体番号」が削られていたり、盗難車であるものも少なくないため、そうしたクルマを見つけた場合は、ためらわずに通報することも必要です。