新型コロナウイルスの感染拡大の影響が拡大するなか、トヨタはライフラインに従事する人たちの日常の移動を念頭に置いた中古車カーリースサービスを開始しました。このサービスはコロナ騒動後の社会において、新たなカーライフのありかたを示すものになる可能性があるといいます。日本の基幹産業である自動車ビジネスは、今後どのように変化していくのでしょうか。

「中古車サブスク」 コロナ後に本格普及なるか?

 想定外の社会状況が、日本での中古車サブスク普及を大きく後押ししそうです。トヨタは2020年4月30日から、中古車を使った廉価なリースサービス「企業様向けトヨタ特別リース」を始めました。

 これは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、医療機関や公共交通機関などライフラインに従事する人たちの日常の移動を念頭に、企業向けの特別リース料金を設定したものです。トヨタが新たに始めた取り組みは、これからのクルマの使い方に何らかの影響を与えるものなのでしょうか。

 トヨタは東日本大震災に対する社会貢献として「ココロハコブプロジェクト」を実施してきましたが、今回の事業もその一環です。

 車両は、法人向け新車リース契約が終了した、いわゆる“リースアップ”を使います。車種は、「ヴィッツ」「アクア」「カローラ(セダン・ワゴン)」「プリウス」「プロボックス」「サクシード」と、ダイハツ「ミライース」です。

 料金プランはふたつあります。ひとつは、累積走行距離別で、「5万kmから10万km」と「10万kmから15万km」(軽は「5万kmから8万km」と「8万kmから10万km」。もうひとつは契約期間別で、最長で24か月、以下18か月、12か月、最短で6か月となります。

 全車がトヨタ販売店でメンテナンスした修理歴がない車両で、カーナビとETCを装備。リース期間中は全国のトヨタ販売店でメンテナンスサービスを受けられます。

 料金は、24か月プランで、ヴィッツが月額1万9500円から、プリウスが2万6000円から、そしてミライ―スが1万5000円からと格安です。

陸送費用、登録諸費用、税金、自賠責、車検費用、定期点検整備費用などが含まれますが、任意保険、タイヤ交換費用、代車費用は別途となります。

 結果的に、今回の試みは、中古車を使ったサブスク(サブスクリプションモデル)に近い形となったといえるかもしれません。

 トヨタのサブスクといえば、トヨタ車とレクサス車を対象とした「KINTO」があります。KINTOでは料金のなかに任意保険が含まれたり、期間中にほかのモデルに乗り換えることができるなどのメリットがあります。

 トヨタによると、価格については、車種、年齢、保険等級などが同じで、契約期間中に1台のクルマを使う場合、リースや残価設定ローンと比較すると、費用全体としてはサブスクのKINTOがもっとも安いといいます。

 一方、「企業様向けトヨタ特別リース」は期間限定で法人向けに実施する中古車の廉価リースですが、将来的に個人向けで定常的に採用されると、費用全体としてKINTOより安く利用できかもしれません。そうなる可能性はあるのでしょうか。

 KINTO事業が公表された際、トヨタ幹部は2018年11月上旬、トヨタ東京本社で開いた一部メディア向けの意見交換の席上で、KINTOを含めたサブスクなどさまざまな新サービスが早期に必要だと主張しました。

 具体的には「当面、日本国内販売150万台を維持したいのですが、成り行きでは2025年に120万台になると予測しています。差分の30万台は、リース・残価設定ローンが15万台、法人向けが10万台、残りはサブスクなど新サービスで5万台と見込んでいます」と、目標値を示しました。

 新車と中古車、個人と法人、リース・残価設定ローン・サブスク、これらのさまざまな組み合わせによって、トヨタは“差分30万台”を確保していくのでしょう。

 そうなれば当然、中古車サブスクもアリだと思います。

トヨタに先んじてホンダが展開 中古車サブスクはどれくらいおトク?

 中古車サブスクについては、ホンダが先行しています。2020年1月28日から開始した「ホンダ マンスリーオーナー」です。

 車種は、「N-BOX」「フィットハイブリッド」「フリードハイブリッド」「ヴェゼルハイブリッド」、さらにN-BOXの車椅子仕様車の5モデル。全車がホンダ認定中古車です。

 料金は、N-BOXが2014年式からで月額2万9800円、2017年型からで3万9800円。ヴェゼルハイブリッドが2018年式からで5万9800円。登録諸費用、自賠責、任意保険、メンテナンス費用が含まれます。

 現在はテストケースとしての展開で、実施しているのはホンダ認定中古車販売店のU-Select城北(埼玉県和光市)のみ。

 ホンダは2020年4月の本田技研工業と本田技術研究所の大再編と連動するかたちで、「ホンダ マンスリーオーナー」を含む新しいモビリティサービスを企画する新会社、ホンダモビリティソルーションズを2月に設立しました。

 今後、ホンダも中古車サブスクに加えて、ホンダ版KINTOなど“所有から共有”に対応したサービスを続々と提案してくると思われます。

 このほかにも、日産はEVやe-POWERを活用したカーシェア「e-シェアモビ」で、5月1日から5月31日に全国で、1時間から2時間分の利用に相当する1600円分を無償にしており、期間中の利用回数に制限はありません。新型コロナウイルス感染拡大を防止する観点から、ユーザーのカーシェアに対する負担を減らす目的です。

 こうしたカーシェア事業での下地がある日産も、中古車サブスク参戦の可能性は十分にあると思います。 

 欧米では、メルセデス・ベンツやポルシェなど高級車のサブスクが始まり、またシェアリングではウーバーやリフトなど個人所有車両への有料乗り合いサービスが普及しています。

 シェアリングエコノミーが世界各地で台頭するなか、日本ではメーカー直系事業による中古車サブスクに今後、さらなる注目が集まりそうです。