2020年6月30日より、あおり運転を直接取り締まるための「妨害運転罪」が新たに定められました。罰則内容が厳罰化されたほか、関連するいくつかの法律も改正されています。今後、あおり運転はどのように取り締まられるのでしょうか。

2020年6月末から「あおり運転」が厳罰化!気になる改正内容とは?

 近年、「あおり運転」は社会問題として大きな注目を集めています。これまでもあおり運転に関する道路交通法の条文が改正されていましたが、2020年6月30日以降ではあおり運転を直接取り締まるための「妨害運転罪」が定められました。

 罰則内容が厳罰化されたほか、関連するいくつかの法律も改正されています。今後、あおり運転はどのように取り締まられるのでしょうか。

 警視庁の発表によると、あおり運転に適用される「車間距離保持義務違反」の2019年における検挙件数は、例年よりも2000件の増加の1万3797件に及び、全体の交通違反における比率は16.9%に達していることが分かりました。

 車間距離保持義務違反とは、道路交通法第二六条にて定められている「クルマ同士の衝突を防ぐために適切な距離を保つ安全運転の義務」に違反する行為です。

 罰則内容は、一般道路では5万円以下の罰金、高速道路では3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科されます。また、高速道路では違反点数2点と反則金9000円(普通車)、それ以外の道路は違反点数1点、反則金は6000円(普通車)となります。

 従来のあおり運転による道路交通法の取り締まりは、先述した「車間距離保持義務違反」、「安全運転義務違反」、刑法による「暴行罪」、「危険運転致死傷罪」などが適用されていました。

 しかし、2020年6月2日におこなわれた国会審議により、道路交通法および自動車運転死傷行為処罰法の改正が可決され、あおり運転は「妨害運転罪」として明確に規定されました。あおり運転の摘発とともに2020年6月30日から施行される予定です。

 では、改正後のあおり運転による罰則内容は、どのように変化しているのでしょうか。

 改正前の罰則は、車間距離保持義務違反、急ブレーキ禁止違反、追越し方法違反、駐停車違反などが適用されていました。これらに違反した場合、先述のとおり、一般道は罰金5万円、高速道路では3か月以下の懲役または5万円以下の罰金となります。

 改正後は、あおり運転の定義として、以下の10項目が定められました。

・通行区分(左側通行)違反
・車間距離を詰める
・急ブレーキをかける
・不必要なクラクション
・急な進路変更(割込み)
・ハイビーム威嚇の継続
・乱暴な追越し
・左からの危険な追越し
・幅寄せや蛇行運転
・高速道路での最低速度違反や駐停車

 通行を妨害する目的で以上の項目に該当した場合は「妨害運転」にとなり、刑事処分では、3年以下の懲役または50万円以下の罰金。また、高速道路上で相手のクルマを停止させる、著しい危険を誘発した場合は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が下されます。

 行政処分では、違反点数は25点で即免許取り消し、欠格期間は2年と定められました。過去に処分歴がある場合は、5年まで延長されます。

 加えて、高速道路で著しい危険を誘発した際は、違反点数は35点、欠格期間は3年になります。過去に処分歴がある場合は、欠格期間が最大10年まで延長されます。

 さらには、ドライバーだけでなく、同乗者が妨害運転をそそのかした場合も、免許取り消し処分となります。違反点数は加算されませんが、欠格期間は最低2年です。

 ちなみに、同乗していなくても、ドライバーに妨害運転を指示すれば同様の処分が下され、そそのかしや指示をおこなった者が免許を持っていない場合は、欠格期間中に限り免許の取得は認められません。

改正後の「あおり運転」は、無意識のうちに妨害運転とみなされることもある?

 2020年6月30日に施行されるあおり運転の定義10項目のなかに、非常に曖昧なものがあります。それは、「車間距離を詰める」という項目です。

 車間距離だけが曖昧とされる理由には、具体的な数字が明記されていないことがあげられます。どの程度車間距離を取るべきなのか判断できないため、知らぬ間に妨害運転罪として摘発される可能性も考えられるでしょう。

 JAFによると、追突を防ぐためには、ブレーキが効くまでにクルマが走る「空走距離」、ブレーキが効き始めてから停車するまでの「制御距離」など、全体の停止距離に考慮する必要があるとしています。

「空走距離」は、ドライバーの体調や注意力に影響、「制御距離」は速度の2乗に比例して長くなるほか、クルマの重量、ブレーキ性能、タイヤの種類や状態、路面状況によっても変化します。

 例えば、路面が濡れてタイヤがすり減っているという状況では、通常の状態に比べて停止距離は2倍以上に伸びます。

 車両状況やドライバーの健康状況、道路状況といったさまざまな状況によってブレーキを踏んだときの制動距離に差が出るため、意図的にあおり運転をおこなっているつもりがなくても「車間距離を詰める」行為として摘発される恐れがあるのです。

 では、車間距離を確保するためには、どうすればいいのでしょうか。

 警視庁では、車間距離を保持するために、「距離」ではなく「時間」を意識したうえで、2秒間を目安にすることを呼びかけています。

 運転席の高さにより、前方を走るクルマとの間隔を正確に判断することが難しいため、時間に焦点が置かれました。

 埼玉県では、「0102運動(ゼロイチゼロニ運動)」と称してゆとりのある車間距離を提唱しています。

 これは、前走車が目印を通過した瞬間を「0(ゼロ)」として、自分のクルマが同じ目印を通過するまでに「2秒以上」数えることができれば、車間距離が2秒以上あることになります。

 しかし、「1、2(イチ、ニ)」と数えた場合、実際の2秒間より短いことがあるため、数えるときは「0、1、0、2(ゼロ、イチ、ゼロ、ニ)」と数えることで、ゆとりのある車間を保つことが可能なのです。

 妨害運転とみなされないためにも、気持ちに余裕を持ち、車間にゆとりがある0102運動を実践してみるのもいいかもしれません。