減少傾向にはあるものの、依然として絶えない自動車盗難。あるときは出先で、あるときは自宅の駐車場から大切な愛車が盗まれる、ということも十分に考えられます。盗まれる可能性が高い車種や、盗難に遭わないための対策法とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

年間7000台以上が自動車盗難の被害に

 昔より数が減ったとはいえ、依然として自動車の盗難被害は起きています。大切にしている愛車が突然消えてしまうというのは、もはや悪夢としかいいようがありませんが、自分は大丈夫と甘く考えていると、いつクルマが盗まれるとも限りません。

 海外で知らぬ間に売りさばかれてしまうリスクもあります。いったい、どのようにして対策するのが良いのでしょうか。

 今回紹介する、自動車盗難の現状と有効な対策法は、警察庁や財務省などの官庁と、自動車関連のさまざまな社団法人で構成される『自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム』(以下、官民合同プロジェクトチーム)によるデータや解析がベースとなります。

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「自動車盗難」と聞いても、あまりピンとこない人も多いかもしれませんが、治安がいいといわれる日本でも実際に起こっている犯罪です。

 2011年の2万5238件をピークに年々減少傾向にありますが、2019年でも7143台が盗難被害に遭っています。

 官民合同プロジェクトチームが発表するデータによると、2019年の内訳としては、キーを挿したままでの盗難は1801件、キーを抜いた状態が5342件です。

 オーナーが長時間クルマから離れたのを見計らって盗難されているという現状が推測されます。

 また車両本体の場合だけでなく、近年では高額な装備のカーナビや、ほかの犯罪への転用目的でナンバープレートの盗難もあるといい、なにが盗まれるか分からない状況です。

 また官民合同プロジェクトチームの見解としては、犯罪グループが組織的にクルマを盗み、「ヤード」と呼ばれる保管施設へと運び込んで解体された後、海外へ不正に輸出されるパーツにされたり、盗難車のパーツをほかのクルマと合体させることで経歴的にはまっさらなクルマとして再登録されてしまうケースもあるといいます。

 さらに300万円以上の高額車の比率も高まってきており、自宅や出先の駐車場で駐車している高級車なども、盗難グループにターゲットとして狙われていると警告されています。

 次に、どんなクルマが盗まれやすいのか、どんな地域で自動車盗難が起きているのかを見ていきます。

 まず、2019年のデータをもとに、盗難の被害に遭ったクルマを車種別に説明します。

 意外に感じる人もいるかもしれませんが、1番盗難被害が多いのがトヨタ「プリウス」で793台。2番目がトヨタ「ランドクルーザー」で654台、3番目がトヨタ「ハイエース」(兄弟車の『レジアスエース』を含む)で368台。

 4位がレクサス「LS」で272台、5位がトヨタ「アルファード」で261台となっています。

 レクサスを含めて5位まですべてトヨタ系という結果になりましたが、盗難車として売りさばく場合、国内だけでなく海外でもトヨタ人気が高いという証拠でしょう。

 さらに、ランドクルーザーやハイエース、アルファードなど、大型SUVやミニバンが狙われている傾向が見て取れます。

 LSなどの高級車は、セキュリティもしっかり装備されているにも関わらず盗難被害に遭っているということから、最新のセキュリティ対策が施されたクルマでも盗まれる可能性があるということがわかります。

 また、この自動車盗難は、いくつかの特定地域での発生率が高いことが判明しています。地域別で見ると、茨城県、大阪府、千葉県、愛知県、埼玉県、神奈川県といった順で、盗難被害が集中していることが報告されています。

 特定地域の多くに共通する特徴としては、「都市部につながる大きな幹線道路があること」「同じく大きな幹線道路が(海外へ輸出便が発着している)港まで続いていること」「工場や倉庫などが多いこと」「交通量も多く人も多い割に歩いている人よりクルマ利用が多いこと」、といったところ。

 盗んだ後すぐに海外に持ち出せるのに便利なエリアで被害が多いようです。

 自分の愛車の駐車場が上記に該当するような場合は、よりセキュリティの高い防犯対策を考えておいてもいいかもしれません。

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 人だけでなくクルマの数も多い東京都ですが、地域別では10位にも入っていません。

 これは駐車場がある建物自体の最新設備が整っており、またセキュリティカメラなどや歩行者(=目撃者)も多く、深夜でもパトカーなどが巡回する率も高めだから、ということが要因として考えられます。

ドアロック&ハンドルロック以上の防止策が有効

 盗難被害に遭わないためには、まずは自分で防犯対策を意識することが大切なようです。自動車盗難の主な手口は、以下になります。

・窓の隙間から針金などを差し込み、ドアロックを解錠し、車両に侵入
・ハンマーなどで窓ガラスを破壊し、車両に侵入
・工具を使ってドアロックを解錠、ステリングロックを破壊してエンジンを始動
・車体に隠してあるスペアキーを探し出す
・住居に侵入し、クルマのキーを盗みだす
・レッカーやけん引車で車両ごと持ち去る
・クルマを預かる業者になりすまし、キーを受け取る

 最近はスマートキーの普及で、スペアキーを車体に隠す人は減っていると思われますが、窓ガラスを破壊して車内に侵入する、レッカーなどで丸ごと盗み出すなど、かなり荒っぽい手口もまだまだあるようです。

 この手口に対して、前出の官民合同プロジェクトチームが推奨する防衛策(防止策)は以下になります。

・確実な施錠:短時間でもクルマから離れる場合はキーを抜き、ハンドルロック&ドアロック。

・イモビライザーの装着:キーに内蔵された複雑な暗号コードをクルマのコンピュータが照合し正規のキー以外ではエンジンがかからない防犯システム。純正が多いですが、後付けタイプもあります。

・盗難防止機器の活用:衝撃センサー式警報装置やハンドル固定装置、ホイールロック、GPS追跡装置などを装着し、盗みにくくします。

・車内に貴重品は置かない:駐車するときは、貴重品は持ち歩くほうが安全な場合があります。とくに夜間の駐車はすべて持ち出したほうが安全です。

 オーソドックスな対応策ですが、自宅だからと施錠し忘れたり、少額でも小銭などが目につくところに残されているだけで、狙われるケースもあります。

 盗まれた車種を見ても分かるように、しっかり施錠していても盗みのプロは突破する技を持っています。

 空き巣と同様、盗難に時間がかかる車両は盗み出されにくい傾向にあるため、昔ながらのハンドル固定装置などは解錠に時間がかかるものをひとつでも用意しておくと、かなり被害に遭う確率は下がりそうです。

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 最近よく採用されるスマートキーですが、スマートキーの電波を傍受し解錠やエンジン始動をさせる、「リレーアタック」と呼ばれる手口も増えています。

 たいていのスマートキー装着車はイモビライザーも搭載されているケースも多いのですが、専用の機材で発信される微弱な電波を増幅させ、あたかも近くにキーがあるとクルマに錯覚させるので、イモビライザーも認証してしまうタチが悪い犯罪です。

 イモビライザー自体の盗難防止効果は高いといわれていますので、スマートキーの電波を遮断するのが手軽かつ有効です。

 お菓子などが入っていたアルミ缶や、調理用のアルミホイルでスマートキーを包むだけでもかなり効果は高いといいます。

 また、近年急速に開発が進んでいるコネクテッドカー(ネットワークに常時接続され、さまざまな情報を受け取ることができる装置を搭載したクルマ)は、クラウド上の情報をもとに自動運転や快適な運転補助、車両管理や走行管理までをおこなうといわれています。

 その利便性の高さから、2017年ですでに2375万台が販売されており、2035年には販売される新車の96.3%がコネクテッドカーになるという試算もあります。

 そんななか懸念されるのが、コネクテッドカーが利用するサーバーのハッキングです。

 今までのような1台ずつの盗難でなく、一度に複数のクルマが盗難被害に遭ったり、あえてエンジンを路上で停止させて道路などの社会インフラをストップさせることも可能になってしまいます。

 実際に、2人のホワイトハッカーが、ジープ「チェロキー」のオーディオシステムから侵入し、プログラムを書き換えて遠隔操作する実験も公開されたことで、140万台以上がリコールとなったこともあります。

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 最近のクルマはデジタルを活用し便利になった半面、用意されたセキュリティを突破されると意外に脆弱な部分が露呈してしまうこともあります。

 自分で出来る範囲の対策をすることで、たとえ完璧でなくても盗み出すまでに時間がかかるようにすれば、少なくとも自分のクルマは面倒がられて被害に遭いにくくなります。

 自宅の駐車場であっても慢心せずに、少しだけ防犯意識を高めておくと安心できるでしょう。