日産は、2020年7月15日に新型SUV「アリア」を世界初公開しました。新型アリアは同社初の電気自動車SUVとして発表されましたが、開発にあたっては同社が脈々と培ってきた電気自動車のノウハウが注ぎ込まれているといいます。どのような歴史のうえで、新型アリアは開発されたのでしょうか。

日産EVの歴史において74年目の進化? 新型アリアは何がスゴいのか

 日産は、2020年7月15日に新型SUV「アリア」を世界初公開しました。新型アリアは同社初の電気自動車SUVとして発表されましたが、開発にあたっては2010年に発売された「リーフ」をはじめ、同社が脈々と培ってきた電気自動車のノウハウが注ぎ込まれているといいます。

 現時点における同社の電気自動車の集大成ともいえる新型アリアは、これまでの電気自動車とどう異なるのでしょうか。

 日産の電気自動車開発の歴史は長く、古くは1947年発売の「たま電気自動車」までさかのぼります。

 そして、リチウムイオン電池を世界で初めて搭載した電気自動車「プレーリージョイEV」や超小型の「ハイパーミニ」が登場。

 2008年には、「キューブキュービック」をベースとした試作車を公開し、この時点で2010年度に新型電気自動車(のちのリーフ)を発売することを明言していました。

 日産はリーフの存在を2009年に公表し、2010年に発売。リーフには、2000年発売のハイパーミニと比べて約2倍のエネルギー密度を実現した、大容量リチウムイオンバッテリーが搭載されていました。

 発売当時、初代リーフはバッテリー容量24kWhで航続距離は200km(JC08モード)、モーターの最高出力は109馬力、最大トルクは280Nmというスペックで登場しました。

 その後、マイナーチェンジのタイミングや2017年の2代目へのフルモデルチェンジなどでバッテリー容量や航続距離などが向上。

 2020年7月現在、2代目リーフでもっとも航続距離の長い「リーフe+」では、バッテリー容量62kWhで航続距離は458km(WLTCモード)。モーターの最高出力は218馬力、最大トルクは340Nmにまで伸びています。

※ ※ ※

 日産が新ブランドロゴと合わせ満を持して発表した新型アリアは、SUVタイプのボディで登場しました。

 近年ではアリアに限らず、SUVタイプのボディを採用した電気自動車やPHEV(外部充電可能なハイブリッド車)が国内外で数多く登場していますが、これは電気自動車のベース車として選択する際に、SUVはボディが大きくバッテリーを搭載するスペースを確保しやすいという事情があります。

 そんななか、新型アリアは既存のプラットフォームではなく、完全新規開発のEVプラットフォームを採用。

 新型アリアのバッテリー容量は65kWhと90kWhの2仕様が存在し、もっとも長い距離を走れる90kWhバッテリーを搭載した2WD仕様では、航続距離610kmを実現しています(WLTCモードを前提とした社内測定値)。

 モーターのスペックは仕様によって異なるものの、90kWhバッテリー・2WD仕様では最高出力242馬力、最大トルク300Nm。0-100km/h加速のタイムは7.6秒です。

 そして、もっともパワフルな90kWhバッテリー・4WD仕様では最高出力394馬力、最大トルク600Nm。0-100km/h加速のタイムは5.1秒を達成しています。

 また、新開発プラットフォームを採用した新型アリアでは、航続距離などのスペック以外にも進化したポイントがあります。

 新型アリアの発表記者会見で、開発に携わった中嶋光チーフビークルエンジニアは、次のようにコメントしています。

「新型アリアに搭載された新しいバッテリーは、非常に薄く設計されていて、これによりフラットなフロアをつくることができています。

 また、どんな気候においても安定した充電性能が得られるように、バッテリーには水冷式の温度調整システムを組み込んでいます。高性能な充電設備がある環境であれば、30分の高速充電で375kmの航続距離をリカバリーすることが可能です」

新型アリアは日産の新しい扉を開くカギとなるか?

 新型アリアにおいて、リーフから継承された機能はさまざまなものがありますが、そのなかのひとつに「e-Pedal」があります。

 e-Pedalは、アクセルペダルの踏み加減を調整するだけで発進、加速だけでなく減速までコントロールできる機能です。

 仕組み自体は異なるものの、e-Pedal同様にアクセルペダルのみで速度コントロールできる機能として、日産はハイブリッド車の「ノートe-POWER」や「セレナe-POWER」「キックスe-POWER」に「e-POWERドライブ」を搭載。e-Pedalとともにユーザーから好評となっています。

 一方、リーフには4WD仕様は無かったものの、新型アリアには4WD仕様が設定されます。そして、この4WD仕様に搭載される新システムとして「e-4ORCE」があります。

 フロントとリアのふたつのモーターを制御し、減速時のクルマの沈み込みや揺動を抑えることで、乗員が感じる車体の前後の揺れが少なくなるなど、従来の4WDシステムにはない特徴を持ちます。

 前出の中嶋光チーフビークルエンジニアは、e-4ORCEについて「日産がこれまで電気自動車の開発をおこなって培ってきた制御技術と、『GT-R』のようなスポーツ四駆で培ってきた技術を融合させたかたちで制御をおこなうという、新しい技術です」と説明します。

※ ※ ※

 日産の内田誠社長は、新型アリアの発表記者会見で次のようにコメントしました。

「私たちは10年前、量販電気自動車のリーフを発売しました。発売から10年経ち、EVのビッグデータを活用したノウハウが蓄積されました。そして、お客さまからの貴重なご意見をいただきました。もちろん、厳しい声もありました。

 この声を開発に活かし、私たちはまったく新しいEV専用プラットフォームを生み出しました。アリアを皮切りに、このプラットフォームから無限の可能性が生み出されていきます」

 現時点で日産史上最良の電気自動車となる新型アリアは、新世代の日産の扉を開けるモデルでもあるのです。