日産が2020年6月30日に発売したSUV「キックス」は、じつは他国においてすでに人気を博しているといいます。そんななか、日本市場にはどのようなモデルとして登場したのでしょうか。

日産のSUV「キックス」は既に人気モデルだった?

 日産が2020年6月30日に発表した新型SUV「キックス」は、同社にとって10年ぶりの国内新規車種として登場したほか、日産のタイの拠点で生産される輸入車ということでも注目を集めました。

 しかし、キックスはタイ以外の海外市場でも注目を集めるモデルで、満を持しての日本市場に投入されます。日産がコンパクトSUV市場へかける意気込みとは、どのようなものなのでしょうか。

 キックスという車種名自体は、1995年の東京モーターショーに出展されたセダンタイプのコンセプトカーで初めて登場し(綴りは「XIX」)、その後1998年のパリモーターショーに出展されたコンセプトカーでも採用(綴りは「KYXX」)。

 その後、2008年に三菱「パジェロミニ」のOEM車の車種名として、軽自動車の市販モデルでも用いられました(綴りは「KIX」)。

 一方、2020年現在日本で発売された新型キックス(綴りは「KICKS」)と直接関係するモデルは、2016年に登場しました。

 最初に発表されたのはブラジルで、「都会に住む人をターゲットとしたスタイリッシュなクロスオーバー」というコンセプトで2016年8月に発売。

 その後、南米の他地域でも発売されたほか、中国やUAE(アラブ首相国連邦)などさまざまな国で発売されました。

 2016年のキックス発売当時、グローバル商品企画担当常務執行役員の加藤顕央氏(役職は当時のもの)は、次のようにコメントしました。

「キックスは、世界中のお客さまのニーズに応えるため、日産が培ってきた経験を活かして開発されたコンパクトクロスオーバーです。

 クラストップのデザインと利便性、革新的な技術を兼ね備えており、私たちの『日産インテリジェント・モビリティ』へのコミットメントを証明するモデルといえます」

 発売以降、キックスの発売は順調に伸び、世界の各市場のコンパクトSUVセグメントにおいて、トップクラスの販売を記録。

 UAEやチリ、メキシコでは同セグメントでトップの販売台数を記録したほか、ブラジルでもセグメント2位となっています(メキシコのみ2018年の実績、その他の国は2018年下半期の実績)。

 ちなみに、中国では同セグメントの販売上位とはなっていませんが、中国市場ではヒュンダイ「IX25」のほかにホンダ「HR-V」「XR-V」がとくに高い人気となっています。HR-Vは日本で販売される「ヴェゼル」の海外名で、XR-Vはヴェゼルの兄弟車です。

 キックスは日本に上陸する前から国内他メーカーのコンパクトSUVと競合するモデルだったのです。

 なお、メキシコやブラジルなど、HR-Vよりキックスのほうが売れている国も存在します。

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 一方、国内のコンパクトSUVと市場に目を向けると、2013年発売のヴェゼルや、2016年発売のトヨタ「C-HR」など、コンパクトSUVの売れ行きが急成長。SUV市場のなかでコンパクトSUVが占める割合は、2011年頃の25%から2019年頃には43%まで拡大しました。

 2010年に発売された日産「ジューク」は、コンパクトSUVの先駆者ですが、ライバルたちの登場もあって市場拡大の波に乗ることができず、商品改良も数回おこなわれたものの販売が徐々に低迷します。ヴェゼルやC-HRが販売年数を重ねても、適切な商品改良により販売下落を最小限に抑えたのとは対照的です。

 結果、日産はキックスを国内市場へ投入することで巻き返しを図ることになりました。なお、今回の日本導入とあわせて日産は、生産国であるタイでもキックスを販売することにしています。

タイ仕様にない特別装備も搭載される日本仕様のキックス

 2020年にタイと日本で発売されたキックスは、ほかの国で販売されているものに改良が加えられたマイナーチェンジモデルとなり、商品力が大きく強化されています。さらに、日本のユーザーに向けた独自仕様も取り入れられているということです。

 改良されたものは大型化されたダブルVモーショングリル(フロントグリル)もありますが、大きなポイントとしては「e-POWER」 と「プロパイロット」の搭載です(e-POWERはタイ仕様にも搭載)。

 e-POWERは、日産が同社のコンパクトカー「ノート」やミニバン「セレナ」で展開する電動パワートレインで、エンジンは発電に専念。モーターの駆動力のみで走行します。

 キックスにe-POWERが搭載されるのは初となるほか、SUVへの搭載も初めてとなります。ちなみに、e-POWER車が日本国外で生産されるのもキックスが初めてです。

 運転支援技術として搭載されるプロパイロットは、高速道路の走行中に、アクセル、ブレーキ、ハンドルの操作をクルマがアシスト。渋滞のノロノロ運転にも対応することで、ドライバーのストレスを軽減します。

 プロパイロットは、日本向けのキックスに特別装備される機能であるとともに、「インテリジェントエマージェンシーブレーキ」と「踏み間違い衝突防止アシスト」が標準装備なのも日本仕様だけです。

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 日産はこれまで、e-POWERとプロパイロットを武器に、国内市場において販売実績を積み重ねてきました。

 まず、e-POWER搭載車が初めて発売されたのは2016年のノート(マイナーチェンジで追加)ですが、ノートはe-POWER搭載車の登場後売れ行きを伸ばし、2018年の登録車販売ランキングで首位を獲得しました。日産車が年間ランキングトップとなるのは、統計史上初のことでした。

 また、e-POWERとプロパイロットのどちらも搭載するセレナも好調です。

 キックスは、いまの日産の大きな武器であるふたつの装備を備えて、国内市場へ投入されます。

 日本仕様のキックスの発表において、日産の星野朝子副社長は「日本市場において、10年ぶりのブランニューモデルとなる新型キックスの爽快な電気の走りを、多くのお客さまにご体感いただきたいと思います」とコメントしました。

 他国へ導入されていたモデルを単に投入するわけではなく、最新の装備をもって万全の体制で勝負するキックスに、日産の意気込みが感じられるといえるでしょう。