トヨタ「シエンタ」は、トヨタ車のなかでも人気上位を争うほどのモデルでしたが、ここ最近、その人気に陰りが見えはじめているようです。

ランキング上位の常連だったシエンタ 人気に陰りが見え始めた理由とは?

 トヨタのコンパクトミニバンとして知られる「シエンタ」は、日本自動車販売協会連合会が発表する新車販売台数ランキングにおいて、2018年にミニバンとしては史上初の1位を獲得しています。その後は何度もTOP5入りを果たし、トヨタ車ではTOP3の常連となるほどの人気を保っていました。
 
 しかし、最近になって、2020年6月のランキングでは大きく順位を落とし14位、直近の7月の販売台数ランキングでも10位と以前は下位に位置していた同社の「アルファード」にも順位を抜かれ、人気に陰りが見え始めているようです。好調だったシエンタに何があったのでしょうか。

 シエンタは、初代が2003年に登場し、その後2015年から現行モデルとなる2代目が販売されています。現行登場から約5年と時間が経っていることから、売れ行きが落ち着いてくるタイミングということはあるかもしれませんが、はたして理由はそれだけなのでしょうか。

 ほかの理由としてまず考えられるのが、ライバル車の影響です。しかし、シエンタのライバルとされるホンダ「フリード」は、2019年10月にデザイン変更のマイナーチェンジやSUV風グレードを追加したものの、シエンタを上回ったのは2020年6月のみです。

 また、直近7月の販売台数ランキングではシエンタを下回る12位となっており、大きく販売台数を伸ばしている様子はなく、直接的な影響はそこまでないようです。

 では、なぜシエンタの人気に陰りが見え始めたのでしょうか。この理由についてトヨタの販売店スタッフは次のように話します。

「最近のお客さまは、クルマを使用するとき、普段はだいたい1人か2人、家族で集まっても5人程度ということで、3列目を使う機会が少ないという声を聞きます。

 そのため、シエンタを購入されたお客さまも、3列目はほぼ使わないという人が多く、一度シエンタを購入したお客さまでも、『3列シートがあると便利だと思って購入したが結局必要無かった』という声が多くあります。

 また、近年ではアウトドアブームや車中泊ブームの影響もあって、途中で2列シートモデルが追加されました。

 発売後、2019年通して好評でしたが、最近ではその広い荷室も持て余すという声も増え、さらに小さいコンパクトカーを選ばれるお客さまが増えてきた印象です」

 販売店スタッフがいうように、シエンタは2018年9月のマイナーチェンジで5人乗りの2列シートモデルを追加しており、2019年の年間販売台数では3位にランクイン。売れているミニバンの代表となる存在になりました。

 2列シートモデルの需要についてトヨタの販売店スタッフは次のように話します。

「もともとキャンプやアウトドア利用など、大荷物を積み込めて、車中泊利用もできたら便利というニーズがあって2列シートモデルの購入を検討するというよりは、3列シートモデルで5人乗りをするならラゲッジルームが広いほうが便利と思って選ばれる人が多いです。

 その結果、キャンプやアウトドア利用をはじめ、使い勝手がよく便利と好評を得る一方で、実際にはそれほど荷物を載せることもなく必要なかったという声も上がっています。

 最近は新型コロナウイルスの影響で出かける機会が減った、今後もどれだけ出かけるか分からないし、ラゲッジルームの広さもそれほど必要ないと話すユーザーが増えたように感じます」

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 3列シートのときと同様に、あると便利と思っていても実際には必要なかったり、新型コロナウイルスの影響で今後の必要性を感じないユーザーが増えてきていることにより、シエンタの2列シートモデルを選ぶ必要性が減ってきているようです。

 このように、シエンタの広さが「持て余される」ようになるなか、最近では、2019年11月にコンパクトSUVのトヨタ「ライズ」、ダイハツ「ロッキー」が登場。

 2020年に入ってからは、コンパクトカーのトヨタ「ヤリス」やホンダ「フィット」が登場するなど、コンパクトサイズのクルマの選択肢が充実してきています。

 ユーザーのニーズが、乗車人数や広さのある荷室よりも、デザインや種類が豊富なコンパクトカーを選択肢に入れようというものに変化しつつあることが、シエンタの人気に陰りをもたらし始めた理由のようです。

シエンタを持て余すユーザーが行き着く先はトヨタのルーミー!?

 ユーザーのニーズが変化してきたことにより、人気に陰りが見え始めたシエンタですが、代わりに選ばれる5人乗りのコンパクトカーといっても、その種類はさまざまです。

 そのなかでも、シエンタと比較して検討されるのはどんなクルマなのでしょうか。これについて、別のトヨタ販売店スタッフは次のように話します。

「シエンタに乗っていた人や購入を検討していた人が、比較するときに選びやすいのはルーミーです。

 シエンタが選ばれる理由のひとつに、スライドドアということが挙げられますが、同じようにスライドドアでコンパクトカーがいいという人は、ルーミーを選択肢に入れるようです。

 価格もシエンタより安いので、シエンタほどの広さが必要なければ、ルーミーのほうが購入しやすいクルマだと思います」

 確かに、スライドドアは駐車場など狭い場所でも周りのスペースを気にすることなくドアを最大限まで開くことができるので、乗り降りもしやすくて便利です。使い勝手を考慮したときに、スライドドアというのがクルマを選ぶポイントのひとつとなっているようです。

 また、価格をみてみると、シエンタの新車価格は180万9500円からであるの対し、ルーミーの新車価格は149万500円からとなっており、30万円以上安くなっています。

 さらに、シエンタはガソリン車のエントリーモデルとなる「FUNBASE X」とそのひとつ上の「X」以外は全て200万円以上ですが、ルーミーは「カスタムG」以外のグレードはすべて200万円以下と全体的な価格の安さが際立っており、価格的には購入しやすいクルマということが分かります。

 実際に、最近のルーミーの売れ行きを見てみると、6月のランキングはシエンタが3315台の14位であるのに対し、ルーミーは5230台の9位、直近の7月はシエンタが5344台の10位に対し、ひとつ上の6528台で9位となっています。

 シエンタが落ち込み始めた6月以降、ルーミーはシエンタより1000台以上の差をつけて販売台数を伸ばし、シエンタより上位にランクインし始めているのです。

 このことからも、最近はユーザーニーズの変化により、シエンタではなく同じスライドドアというメリットを持つコンパクトカーとして、同社のルーミーがライバルになりつつあるといえるのではないでしょうか。

 ユーザーのニーズが変化してきたことで、ライバルの存在も変わりつつあるシエンタ。人気に陰りが見え始めたといっても、ランキングとしてはまだまだ上位に位置しており、一定の支持を得ていることが分かります。

 シエンタはこの人気を維持することができるのでしょうか。今後の動向が気になるところです。