現在、ハイブリッドと並んでパワーユニットの主流になりつつあるのがターボエンジン。ターボチャージャーを装着することで、排気量を小さくできる「ダウンサイジングターボエンジン」の普及で、数を減らしつつあるのが自然吸気エンジンですが、自然吸気ならではの魅力もあります。そこで、特徴的な自然吸気エンジンを搭載したモデル、5車種をピックアップして紹介します。

魅力的な自然吸気エンジン車を振り返る

 近年、電動車ではハイブリッドが主流になり、ガソリン車やディーゼル車ではターボエンジンが主流です。なかでも欧州車から普及が始まった小排気量ターボの「ダウンサイジングターボエンジン」は、コンパクトカーから大型セダンまで、幅広く採用されています。

 一方で、数を減らしつつあるのが自然吸気エンジンです。

 ターボエンジンは排出ガスの力を利用してターボチャージャーから強制的に空気をエンジン内に送り込みますが、自然吸気エンジンは基本的に大気圧によって送り込まれた空気をエンジンが吸うため、充填効率はターボが勝り、出力の向上が容易です。

 確かに出力という点ではターボに負けてしまう自然吸気ですが、自然吸気エンジンならではの魅力も存在。そこで、特徴的な自然吸気エンジンを搭載したモデル、5車種をピックアップして紹介します。

●マツダ「RX-8」

 2002年、マツダは1978年から続いた「RX-7」シリーズの生産を終了し、一旦ロータリーエンジンの系譜が途絶えてしまいました。

 しかし、2003年には新しいコンセプトの4ドアFRスポーツカーである「RX-8」を発売。搭載されたエンジンは新開発の654cc×2ローターロータリー「13B型」で、「RENESIS(レネシス)」と呼称されました。

 トップグレードの「TYPE-S」6MT車では専用のチューニングによって最高出力250馬力を8500rpmで発揮。レブリミットは9000rpmという高回転を誇りました。

 RX-8の魅力のひとつに、自然吸気ロータリーエンジン独特の甲高い排気音があり、なめらかな回転フィーリングと併せ、スポーツドライビング好きから人気を博します。

 また、車体の前後重量配分を理想的な50:50とし、足まわりではフロントがダブルウイッシュボーン、リアをマルチリンクとするなど、4ドア4シーターでありながら高い運動性能を発揮。

 発売からRX-8は改良を続け、2011年には最終型RX-7と同様に、よりスポーティな限定車「スピリットR」が登場しましたが、2012年に生産を終了し、再びロータリーエンジンの系譜が途絶えてしまいました。

●日産「パルサーセリエ/ルキノ VZ-R・N1」

 1970年に、日産は同社初のFF車「チェリー」を発売しました。その後、小型車では広い室内空間が確保できるFFが主流となり、1978年に「チェリーF-II」の後継車として初代「パルサー」が登場。

 当初はベーシックなコンパクトカーというコンセプトでしたが、1990年には世界ラリー選手権出場のためのベース車として「パルサーGTI-R」を発売するなど、高性能モデルを展開します。

 そして、1997年に発売された「パルサーセリエ/ルキノ VZ-R・N1」は、サーキットにおけるN1カテゴリーのレースで勝つことを目的として開発されました。

 N1のマシンは改造が許される範囲が最小限に抑えられており、市販車に近い状態でおこなわれるレースですから、市販状態でのポテンシャルがそのままレースの成績を左右することになります。

 パルサーセリエ/ルキノ VZ-R・N1は、当時の最大のライバルであるホンダ「シビックタイプR」の打倒を目標に、日産とオーテックジャパンがタッグを組んで仕立てられました。

 搭載されたエンジンは1.6リッター直列4気筒DOHCの「SR16VE型」で、最高出力はスタンダードモデルの「VZ-R」が175馬力だったのに対し、専用のシリンダーヘッドを搭載、ポートや燃焼室、吸排気マニホールドの研磨などのチューニングが施され、クラストップの200馬力を7800rpmで発揮。

 シビックタイプRの185馬力を15馬力上まわりました。

 さらに、1998年には「パルサーセリエ/ルキノ VZ-R・N1 VersionII」を発売。最高出力は200馬力のままでしたが、サスペンションの強化と車体の軽量化、フジツボ技研製マフラーが装着されるなど、さらに戦闘力が向上。

 実際のスーパー耐久シリーズではシビックタイプRと互角以上の戦いを繰り広げましたが、わずかに及ばず、タイトル奪取とはなりませんでした。

 なお、パルサーセリエ/ルキノ VZ-R・N1が200台、同VersionIIが300台と、合計500台の限定販売だったため、いまでは激レアなモデルとなっています。

●三菱「ミラージュ」

 1978年に発売された三菱初代「ミラージュ」は、グローバルカーとして開発された次世代のコンパクトカーです。1982年にはコンパクトカーとして他社に先駆けてターボエンジンを搭載し、後の出力競争の口火を切りました。

 そして、1991年に発売された4代目ミラージュでは多彩なボディラインナップを揃え、エンジンは自然吸気が主流となります。

 1992年には、V型6気筒では世界最小となる1.6リッターDOHCの「6A10型」エンジンを搭載した「ミラージュ6」シリーズを追加ラインナップ。グレードは4ドアセダン「ROYAL」と「VIE LIMITED」が設定されました。

 最高出力140馬力を発揮し、スポーティなミラージュにジェントルな走りをもたらします。

 さらに1995年に登場した5代目では、最高出力135馬力の1.8リッターV型6気筒SOHCの「6A11型」エンジンにスイッチされ、よりラグジュアリーな要素が強められました。

 この5代目をもって、ミラージュは一旦生産を終えますが、いくらバブル期に企画されたとはいえ、1.6リッターのV型6気筒エンジンを開発したのは驚きです。

 ちなみに、同時期にマツダも1.8リッターV型6気筒をラインナップしていました。

大排気量と高回転型、どちらも魅力のある自然吸気エンジン

●レクサス「GS F」

 レクサスのクルマでは、車名に「F」もしくは「Fスポーツ」が付くと特別なモデルであることを表しています。なかでも「F」はハイパワーなエンジンを搭載し、シャシ性能もアップされるなど、ハイパフォーマンスモデルとなっています

 現行モデルでは「RC F」だけになってしまいましたが、かつてはミドルクラスセダンの「IS F」と、アッパークラスセダンの「GS F」がありました。

 GS Fには「LC500」や「RC F」にも搭載される自然吸気の5リッターV型8気筒エンジンを搭載。最高出力は477馬力を誇り、この大パワーを後輪だけで路面に伝えるためにシャシも手が入れられ、サスペンションやブレーキも大幅に強化されています。

 組み合わされるトランスミッションは8速ATを採用。トルクコンバーターを用いたステップATながら、DCTに匹敵する最短0.1秒の変速を実現しており、2速以上をほぼ全域にわたってロックアップすることと相まって、ダイレクトな応答性と本格的なスポーツドライビングを可能としています。

 GS Fは一般道ではなめらかに走り、ドライブモードを切り替えればワインディングロード、さらにサーキット走行にも対応。

 外観ではカーボンファイバー製のエアロパーツが装着され、軽量化と空力性能が高められました。

 なお、残念ながらGSシリーズは2020年8月で生産終了しており、GS Fも絶版車となっています。

●ホンダ「S2000」

 ホンダは、日本で初めてF1に参戦した自動車メーカーとして、レースで培った技術を市販車にフィードバックすることで、これまで数々の高性能モデルを世に送り出してきました。

 かつては、高回転かつ高出力な自然吸気エンジンに定評があり、ホンダは「エンジン屋」というイメージが定着。

 そして、数多くの高性能自然吸気エンジンのなかでも、集大成ともいえるのが、1999年に発売されたオープンFRスポーツの「S2000」に搭載された「F20C型」です。

 ホンダとしては「S800」以来となる29年ぶりのFR車で、シャシからエンジンまで、すべてが新設計されました。これほどの大事業となったのは、S2000がホンダ創立50周年を祝うメモリアルカーという意味合いもあったからです。

 F20C型は、2リッター直列4気筒自然吸気で最高出力250馬力を8300rpmで発揮。レブリミットは9000rpm、リッターあたり125馬力と、市販車のエンジンとしては驚異的な高回転・高出力なものとなっていました。

 2005年に実施されたマイナーチェンジで、エンジンは2.2リッターに排気量がアップされ、かつてほどの高回転エンジンではなくなりましたが、それでも十分にパワフルかつ扱いやすくなり、国内外のファンから愛されましたが、発売から10年後の2009年に生産を終了。

 2020年にはホンダアクセスから、S2000発売から20年を記念して、新たなドレスアップパーツが販売され、話題となりました。

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 自然吸気エンジンのレスポンスの良さや、アクセル操作に対してリニアな加速は、大いに魅力的ですが、そうしたスポーティな自然吸気エンジンは、いまでは世界的に絶滅が危惧されています。

 そうしたなかポルシェは、ターボエンジンを主流としていながらも、特別に高性能なモデルでは自然吸気エンジンを復活させています。

 排気音やエンジンのフィーリングといった要素はスポーツカーには不可欠ですから、自然吸気エンジンを残しているのは、ポルシェ流の哲学なのかもしれません。