現在、ガソリンエンジン車では、ターボエンジンが主流となりつつあります。2000年代に欧州車で登場した「ダウンサイジングターボエンジン」の普及によるものですが、なかにはパワー重視のターボ車も存在。そこで、凄まじいほどの大出力を誇るクルマを5車種ピックアップして紹介します。

大出力を誇る、最新のターボエンジン車たち

 1970年代初頭に、市販車でターボエンジンが登場しました。そこからターボエンジンの普及は加速し、現在はディーゼルエンジンでは全車が採用し、ガソリンエンジンでは主流になりつつあります。

 ターボは過給機の一種で、排出ガスの流れを利用してタービンを回し、大気圧以上の圧力となるように空気を圧縮。圧縮されて密度が高くなった空気を、強制的にエンジン内に取り込むことで、出力向上を図る装置です。

 ターボの歴史は古く、1930年代には高高度を飛ぶことを目的に航空機で実用化され、自動車用としては1970年代に登場しました。

 国産車では1979年に発売された、日産「セドリック/グロリア」に搭載されたのが初です。

 ターボの大きな出力が得られる特徴から、近年は排気量を小さくした「ダウンサイジングターボエンジン」が普及し、燃費の改善やコストダウン、軽量化が可能となりました。

 一方で、燃費よりもパワーアップに特化したターボエンジン車が存在。そこで、凄まじいほどの大出力を誇るクルマを5車種ピックアップして紹介します。

●トヨタ「GRヤリス」

 2020年2月に、トヨタのコンパクトカー「ヴィッツ」がフルモデルチェンジし、名前をグローバルで統一する「ヤリス」に変わって、国内で発売されました。

 そして、ヤリスをベースにした高性能モデルの「GRヤリス」が2020年9月に販売を開始。

 GRヤリスはトヨタが世界ラリー選手権(WRC)に参戦して培われたノウハウを、最大限につぎ込んだスポーツカーとして開発されました。

 ハイパフォーマンスグレードの「RZ」に搭載されるエンジンは、大型の空冷インタークーラーを装備した1.6リッター直列3気筒ターボで、最高出力272馬力、最大トルクは370Nmを発揮。

 1.3トン弱のコンパクトボディに3リッター自然吸気エンジン並のパワーを誇り、トランスミッションは6速MTが組み合わされています。

 ボディはスタンダードなヤリスにはラインナップされていない3ドアハッチバックで、新製法のカーボン製ルーフを採用し、ボンネットとドアパネルにはアルミ素材を用いるなど軽量化を図っています。

 また、高剛性の専用スポーツ4WDプラットフォームを採用し、高い走行性能と安定した走りを両立。

 価格(消費税込、以下同様)は、RZ“ハイパフォーマンス”が456万円、RZが396万円、競技用ベース車のRCが330万円、2WDで1.5リッター自然吸気エンジンのRSが265万円です。

●ルノー「メガーヌ R.S.トロフィー」

 1995年にデビューした初代ルノー「メガーヌ」は、3/5ドアハッチバックと4ドアセダンのボディバリエーションで、実用性を重視したオーソドックスなコンパクトカーでした。

 しかし2代目では、ルノーのモータースポーツ部門である「ルノー・スポール」が開発した、最高出力224馬力を発揮する2リッターターボエンジンを搭載した高性能モデルの「メガーヌR.S.」が2004年に登場。

 現行モデルは2016年に登場した第4世代ですが、2018年には日本向けに「ルノー・スポール カーズ」と「ルノー・スポールレーシング」が共同開発した、新たなメガーヌR.S.が追加されました。

 メガーヌR.S.は最高出力279馬力を誇る1.8リッター直列4気筒ターボエンジンと「6EDC(6速DCT)」を組み合わせ、4輪操舵システムや、ハイレベルなロードホールディングを実現した「4HCC(4輪ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)」で、高い加速性能とコーナーリング性能を発揮。

 2019年4月には、メガーヌR.S.をベースに大幅な軽量化と空力特性の見直し、足周りを強化したメガーヌR.S.トロフィーRが、ドイツの「ニュルブルクリンク」北コースで、7分40秒の、当時、市販FF車最速記録を記録しました。

 このメガーヌR.S.トロフィーRのDNAを受け継いだ「メガーヌR.S.トロフィー」が、2019年10月に日本で発売。

 エンジンは同じ1.8リッター直列4気筒ターボながらさらにチューンナップされ、最高出力300馬力を発揮し、トランスミッションは6速EDCと6速MTを設定。

 ほかにも、強化サスペンション、トルセンLSD、軽量化されたブレーキシステムが装備され、シャシ性能も向上しています。

 価格は6速MT車が489万円、EDC車が499万円です。

●アルファロメオ「ジュリア クアドリフォリオ」

 2017年に発売されたアルファロメオ「ジュリア」は、同社のフラッグシップに位置するミドルクラスセダンで、高性能エンジンを搭載したモデルが「ジュリア クアドリフォリオ」です。

 クアドリフォリオとは「四つ葉のクローバー」を意味し、1923年のタルガ・フローリオ(レース)において優勝したマシンのボディに四つ葉のクローバーが描かれていたことから、アルファロメオのレース活動の象徴となりました。

 その後、クアドリフォリオはアルファロメオの高性能車の証として、現在に続いています。

 510馬力を発揮する2.9リッターV型6気筒ツインターボエンジンを搭載して、8速ATを介した後輪駆動ながら0-100km/h加速が3.9秒、最高速度は307km/hを誇ります。

 カーボン製のルーフ、エンジンフード、プロペラシャフトを採用し、アルミ製フロントフェンダー、ドアパネルなどを採用することで、高出力化と同時に軽量化も図られています。

 また、足まわりではオールアルミの「Alfa Linkサスペンションシステム」により、優れたロードホールディング性能を発揮。

 価格は1グレードで1174万円です。

 なお、欧州ではさらに高性能なジュリア クアドリフォリオGTAが発表され、最高出力は540馬力にまで高められています。

もはやレーシングカーの領域に到達したプレミアムコンパクトとは

●BMW「X3 M コンペティション」

 古くからBMWのモータースポーツ活動を支えてきた「BMW M社」は、現在、BMWの高性能モデルや特別注文プログラム「BMW Individual」による車両の製造などをおこなっており、「M」が付けられたモデルは特別な性能が与えられます。

 これまで、「M3」や「M5」といったモデルがMハイパフォーマンスモデルの代表的な存在でしたが、現在はSUV「Xシリーズ」にも展開されており、なかでももっともコンパクトなモデルで高性能なモデルが「X3 M コンペティション」です。

 X3シリーズは初代が2004年に発売された同社のSUVラインナップの末弟としてデビュー。その後、さらにコンパクトな「X2」と「X1」が登場したことで、ミドルクラスに位置するモデルとなりました。

 現行モデルは2017年に登場した3代目で、シリーズ初のMハイパフォーマンスモデルのX3 Mは、2019年に追加ラインナップ。

 搭載するエンジンは3リッター直列6気筒ツインターボで、X3 Mの480馬力に対してX3 M コンペティションでは510馬力を誇ります。

 外観ではブラックアウトされたキドニーグリルに、迫力ある大きな開口部が特徴のフロントバンパーで、威圧感は満点です。

 また、リアも大径の左右4本出しマフラーによって、高性能さを強くアピール。Mスポーツ・エキゾースト・システムによって、力強いエキゾーストノートを奏でます。

 駆動方式は4WDの「M xDrive」を採用し、8速ATを介して510馬力を4輪へと伝えます。

●メルセデスAMG「AMG A45 S 4MATIC+」

 1997年に発売されたメルセデス・ベンツ初代「Aクラス」は、同社初のFF乗用車であり、「Cクラス」よりもさらにコンパクトなエントリーモデルとして開発された5ドアハッチバックです。

 それまでプレミアムカーを主軸としていたメルセデス・ベンツのイメージとは大きく異なっていたことで、Aクラスは世界中から注目されました。

 外観はボンネット部分が極端に短く背が高いトールワゴンタイプで、コンパクトミニバンのようなボディ形状となっており、欧州のみならず日本でもヒットしました。

 その後、2004年に登場した2代目はキープコンセプトとされましたが、2012年に発売された3代目ではコンセプトを大きく変え、全高の低いプレミアムコンパクトへと一新。

 そして、現行モデルは2018年に登場した4代目にあたり、超高性能な「AMG A45 S 4MATIC+」をラインナップしています。

 AMG A45 S 4MATIC+に搭載されるエンジンは2リッター直列4気筒ターボで、最高出力は421馬力を発揮。リッターあたり210馬力以上のパフォーマンスは、ひと昔前のレーシングカーの領域で、現在、販売されているモデルのなかでは世界最高です。

 トランスミッションは8速DCTで、駆動方式はフルタイム4WDを採用。足まわりでは電子制御ダンパーを装着することで、俊敏性と安定性を両立しながら、快適な乗り心地を実現しています。

 AMG A45 S 4MATIC+の価格は798万円です。

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 昭和から平成にかけて登場した高性能なターボエンジン車は、アクセルを踏んでからトルクの増大までワンテンポ遅れる、いわゆる「ドッカンターボ」と呼ばれたモデルが多い印象でした。

 しかし、現在のターボエンジン車では踏み始めからのレスポンスが良く、なかにはターボエンジンとは気が付かないほど、リニアに加速するモデルもあります。

 クルマとしては正しい進化であり、パワーも比較にならないほどですが、昔のドッカンターボの加速感も忘れがたいものがあり、いまのターボエンジン車が物足りないと思う人も多いのではないでしょうか。