2020年7月に日本に上陸した、プジョーのBセグメントハッチバック新型「208」は、いまヨーロッパ市場ではベストセラーモデルになっているほど人気の1台だ。プジョーらしいフランス流のクルマづくりは新型にも引き継がれているのだろうか。箱根のワインディングを中心に試乗してみた。

足の良さはハンドリング性能にもおよぶ

 プジョーの乗り心地は、なんでこんなに良いんだろうか。一度乗ったら病みつきになる人も多い。これはフランス車の得意技でもある。

 道路環境がクルマを育てるといわれるが、フランスはいまでも石畳の道がたくさんある。また郊外に出ると道路の左右に植えた木が育って根を伸ばし、舗装部分を凸凹にしているところも多い。

 市街地は50km/h、郊外は100km/hの制限だから、そのスピードでも快適に走らなければならない。もちろん最高速が120km/hの高速道路もある。だからフランス車は、当たりがソフトなだけでなく、たっぷりとしたサスペンションストロークで凹凸をしっかりと受け止めるようになった。

 とくにプジョーは、以前はダンパーを内製していて、ピストンスピードがゆっくりなところから速いところまで最適な減衰力が出る精度の高いダンパーを作っていた経験がある。

 いまでは生産台数が多くなり効率の面からもコストの面からもサプライヤーから供給を受けているが、そのセッティングに関してプジョーはうるさいはずだ。だから、いまでも素晴らしいダンパーを得て驚くほど良い乗り心地を提供している。

 今回試乗したのは2020年7月に日本に上陸した、2代目となる新型「208」だ。

 従来、プジョーのBセグメントの車名は、2から始まり真ん中に0がある3ケタ数字で表されていた。2000年初頭に日本でも大ヒットとなった「206」を覚えている人も多いだろう。

 その206の後継車「207」、そして2012年には207の後継車として初代208が登場した。流れ的には末尾の8から9になりそうだが、8で打ち止め。今後プジョーモデルは、「308」「508」「2008」など、すべて末尾の数字が8で表すことになる。

 新型208に乗ると、「太腿の筋肉を使ってしっかり踏ん張り、足の裏では肉球が路面の衝撃をやわらげてくれる感じだ」と言ったのは、助手席に乗ったカメラマンだ。その表現は正しいと思う。さらに加えるならば、膝の動きが滑らかで大きなストロークも確保している。

 足の良さは乗り心地だけでなく、ハンドリング性能にもおよぶ。小径のステアリングホイールは、ニュートラル付近の遊びが小さく、応答遅れも感じないくらいダイレクトな反応がある。

 箱根のワインディングロードでは、コーナリングが楽しくなる。狙ったラインを正確にトレースすることができるからだ。コーナリング中に路面の不整があっても路面がうねっていても、ラインが乱れることがないから修正の必要もない。サスペンションのバンプ、リバンプ(上下動)によってトー角の変化が小さいのだろう。

 シートは平板な形だったが、座り心地は良かった。派手なサイドサポートなどはないが、コーナリング中もドライバーの姿勢が崩れることはなかった。

 ちなみに試乗車に装着されていたタイヤは195/55R16 87Hというサイズのミシュラン「プライマシー4」だった。

 こうしたコンパクトクラスで、これだけ手を抜かないサスペンションづくりをしていることだけでも、新型208を選ぶ価値がある。スポーツカー顔負けの優秀な仕上がりである。今回試乗したのは最上級グレードの208GTラインではなく、中間グレードの208アリュールなのだ。

 新型208は、安全性に関してもクラスを超えている。

 クラス水準を越えたADAS(アダプティブ・ドライバー・アシスタンス・システム)を装備しているのだ。カメラとレーダーを備え、ストップ&ゴー付きのACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)やレーンポジショニングアシスト、アクティブセーフティブレーキは、5km/hから140km/hの範囲でドライバーをアシストして自動ブレーキをかけてくれる。

 停止車両は約80km/h以下、歩行者は約60km/h以下で、危険回避あるいは衝突の被害を軽減する。カメラの精度を上げて、夜間の認識も高まっているという。

 またインテリアには、新しい時代を覗くかのような「3D i-コクピット」を標準装備して登場した。小径のステアリングホイールは円形ではなく、どちらかといったら四角に近い形状で、その上にインストルメントパネルがある。

 インストルメントパネルに映し出される情報は、前後の距離感があり立体的に見える。だから3Dという名前がついている。また情報表示は何種類かあるので好みで選ぶこともでき、遊び心だけでなく見やすく使いやすくできている。写真ではうまく見せるのが難しいが、ぜひ実車で確認してもらいたい。

 エンジンは1.2リッターの直列3気筒ガソリンターボで、100ps/5500rpm、205Nm/1750rpmというパワーとトルクを発揮する。

 車両重量は1160kgと軽量だから、キビキビ走るのにも満足できる力を持っている。これを手伝っているのはEAT8(エフィシェントオートマチックトランスミッション)と呼ぶ8速のトルコンATだ。どのスピード域でも状況にマッチしたギアを選んでくれる。

 燃費はWLTCモードで17.0km/L、高速道路モードでは19.3km/Lと優秀だ。空気抵抗を減らすためにフロア下にフラットパネルを貼っている効果が出ているのかもしれない。

 ボディの大きさやクラスで決めるのではなく、それを超えたクルマづくりをしているのが、新しい208だ。新型208と同時に日本デビューした、ピュアEVの「e-208」もまもなく納車が開始されるから、そちらも楽しみだ。

Peugeot 208 Allure

・車両本体価格(消費税込):259万9000円
・試乗車オプション込合計価格:296万3980円
・全長:4095mm
・全幅:1745mm
・全高:1445mm
・ホイールベース:2540mm
・車両重量:1160kg
・エンジン形式:直列3気筒ターボ
・排気量:1199cc
・駆動方式:FF
・変速機:8速AT
・最高出力:100ps/5500rpm
・最大トルク:205Nm/1750rpm
・燃費(WLTC):17.0km/L
・ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
・タイヤサイズ:195/55R16