2020年10月26日に開会した臨時国会の所信表明演説で、菅義偉総理大臣が「2050年カーボンニュートラル」に言及しました。これによって、日本でもEVの普及が加速するともいわれていますが、そもそもカーボンニュートラルとはなんなのでしょうか。

クルマのカーボンニュートラルとは何か?

 ついに日本でも、電気自動車(EV)が当たり前になる世の中が目の前に迫っているのかもしれません。

 2020年10月26日に開会した臨時国会の所信表明演説で、菅義偉総理大臣は「わが国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と発言。

 続けて「すなわち、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と締めくくりました。

 2050年カーボンニュートラルといえば、ホンダが2020年10月2日にオンラインでおこなった「F1参戦終了」記者会見の際も、八郷隆弘社長から出た言葉でもあります。

 今回の菅総理による2050年カーボンニュートラル宣言に対して、自動車産業界からはさまざまな思惑や意見が出てきています。

 自動車においてカーボンニュートラルを実現するには、「ウェル・トゥ・ホイール(井戸から駆動まで)」といわれるように、燃料の根源から輸送、自動車の生産設備、そして自動車そのものまで、社会全体での配慮が必然となります。

 海外の自動車メーカーでは、まずは生産設備のエネルギーマネージメントと、自動車の電動化を進めているところです。

 たとえば、ドイツのメルセデス・ベンツはEVの「EQシリーズ」や新型「Sクラス」を、次世代工場「ファクトリー56」で生産します。

 また、アメリカのゼネラルモーターズ(GM)は、EVプラットフォーム・アルティウムを活用した第一弾としてGMC「ハマーEV」を発表。

 生産は、ミシガン州ハムトライク工場に2000億円以上を投じて全面改修した「ファクトリーゼロ」でおこないます。

 日本国内でも、生産施設の電力をすべて再生可能エネルギーで賄い、工場内の搬送の完全自動化などが一気に進む可能性が高くなったと考えられます。

 ユーザーとして気になるのは、クルマの電動化が今後、どの程度のスピード感で進むのかという点でしょう。

日本版ZEV法は登場するか? 今後の動きは?

 クルマの電動化について、ユーザーはもとより、日系自動車メーカー各社の大きな関心事は、日本版ZEV(ゼロエミッションヴィークル)法です。

 ZEV法とは、米・カリフォルニア州政府が1990年から施行している、事実上の電動車数量規制です。

 これまで何度かの改訂がありましたが、その度に世界の自動車メーカーはZEV法に振り回されてきたといっても過言ではありません。

 トヨタの初代「RAV4 EV」とテスラが開発した2代目モデルや、ホンダ「フィットEV」、「クラリティEV」、マツダ「デミオEV」などは、米ZEV法ありきで生産されたモデルです。

 そのZEV法が近年、中国に大きな影響を及ぼしています。

 ZEV法を管轄するカリフォルニア州環境局と、中国政府系の中国自動車技術研究センター(CATARC)が協業して策定したのが、中国版ZEV法というべきNEV(新エネルギー車)規制で、2019年から実施されています。

 日本車では、トヨタ「C-HR EV」、レクサス「UX300e」、またホンダの「SUV e:コンセプト」など、中国NEV規制を念頭に置いたEVが続々と登場しています。

 一方、ZEV規制がない日本では、2010年代に自社独自の事業計画としてEV路線を突き進んだ日産が、ゴーン体制崩壊からのV字回復を狙い、「アリア」を日産復活のシンボルとしていますが、現時点では日産を追うようなEV戦略はほかの国産メーカーからは生まれていません。

 2020年10月にホンダが「ホンダe」を国内でも発売しましたが、同モデルは欧州でのCO2規制を最優先して開発されたモデルであり、日本では年間1000台という限定的な販売計画にとどまっています。

 同様にマツダも2021年1月に「MX-30」のEV仕様の国内販売を予定していますが、これも欧州での規制に対応するべく投入されたモデルといえ、先行して販売されるMX-30(マイルドハイブリッド仕様)の月販目標は1000台(年間1万2000台)と、昨今のコンパクトSUVで考えれば消極的という見方もあります。

 こうしたなか、菅政権による2050年カーボンニュートラル宣言によって、梶山弘志・経済産業大臣は年内に具体案をまとめるとしています。

 すでに、第6次エネルギー基本計画の議論が始まっていますが、そのなかに、または関連するかたちで、日本版ZEV法についても今後なんらかの動きがあるかもしれません。

 これまで、日本政府や関係各省庁は「クルマの電動化について、業界を国が束ねるような、いわゆる護送船団方式はとらず、自動車産業界の自主性に任せ、国は調整役に徹する」という姿勢でしたが、2050年カーボンニュートラル宣言によって、大きな変化が起こるのかもしれません。

 なお、直近では、日本のクルマの電動化に対する達成目標が、経済産業省が自動車メーカー社長らを委員として実施した、自動車新時代戦略会議による2018年8月31日に公表した中間整理で示されています。

 それによると、2017年時点で、乗用車では従来車(ガソリン・ディーゼル)が63.3%、次世代車が36.4%でした。

 次世代車の内訳は、ハイブリッド車が31.6%、EVが0.41%、PHEVが0.82%、燃料電池車が0.02%、クリーンディーゼル車が3.5%です。

 これを、2030年に、従来車が30%から50%、次世代車が50%から70%(ハイブリッド車30%から40%、EV/PHEVが20%から30%、燃料電池車3%程度、クリーンディーゼル5%から10%)にするとしています。

 今回の2050年カーボンニュートラル宣言によって、この達成目標がどのように強化されるのか、またそのために日本版ZEV法のような規制強化がおこなわれるのか、今後の動向が気になるところです。