年々厳しくなる自動車の燃費規制ですが、ここにきて独自の技術力で切り抜けるメーカーとトヨタのハイブリッドシステムを活用するメーカーのふたつに分かれてきました。現在、グローバルで叫ばれる環境性能の向上と今後の展開はどうなるのでしょうか。

燃費規制は海外だけじゃない!? 今後の日本市場はどうなる?

 最近、自動車市場の方向性を決める動きとして、「環境問題」が挙げられます。その一環としてクルマの燃費性能の基準を強化する規制が続々と進められているのです。
 
 日本における自動車は基幹産業とも呼べる重要なものですが、国産メーカー各社はどのようにして環境性能の向上や燃費規制対策をおこなっているのでしょうか。

 昨今のグローバル市場では、近い将来にガソリン車/ディーゼル車などの内燃機関を搭載するモデルの販売禁止を続々と打ち出しています。

 元々は、北欧のノルウェーで2016年にアナウンスされた「2030年にすべての新車をゼロエミッション(排出ガスを出さない電動車)にする」という宣言が発端です。

 この宣言により、欧州の各国では続々とガソリン車/ディーゼル車の販売を2030年から2040年に禁止にする方針を打ち出しており、すでに欧州の一部都市では製造年式が古いガソリン車/ディーゼル車の通行や乗り入れ禁止を実施しているところも存在しています。

 世界でもっとも電動化が進んでいる中国でも2035年に電動車以外の販売を禁止する方針を示すなど、グローバル全体で環境性能(電動化)の動きが活発になっているのです。

 そして、これまでの北米市場は米国・トランプ大統領により、ガソリン車/ディーゼル車有利な方針でしたが、2020年11月10日時点でバイデン氏が次期大統領確実となった現在では、北米市場も各国と同様に燃費規制が強化される見通しです。

 実際に、これまでV型8気筒や12気筒など大排気量かつ燃費が悪いエンジンを搭載していた米国の自動車メーカーもピックアップトラックやスポーティモデルに燃費性能が良い直列4気筒エンジンを搭載するなど、徐々に環境性能向上にシフトしていました。

 さらに、カルフォルニア州でも2035年にガソリン車の販売禁止の方針を打ち出すなど、今後は内燃機関搭載モデルが整理されていく傾向にあります。

 これらの内燃機関の販売禁止に先駆けて、現在欧州や日本などで規制強化されているのが、「企業平均燃費方式(通称CAFE規制)」です。

 CAFE規制とは、自動車個別ではなくメーカー全体での1年間の販売台数における各区分の平均燃費基準を元に規制され、その基準をオーバーした場合に欧州などでは罰金が課せられるといいます。

 なお、この罰金は高額となることからCAFE規制に対応している排出枠を他社から購入することが可能で、米国の電気自動車メーカーのテスラから購入するメーカーも増えています。

 今後、さらなる環境性能が求められるなか、国産自動車メーカーはどのような対応をするのでしょうか。

 環境性能において、国産メーカーはグローバルで見ても進んだ電動化技術を持っています。

 トヨタは、1997年に世界初の量産ハイブリッド車として登場した「プリウス」の電動技術を進化させつづけ、昨今のハイブリッド市場をけん引してきました。

 さらには、プラグインハイブリッド車の「プリウスPHV」や「RAV4 PHV」、燃料電池車の「ミライ」など、さまざまなアプローチで市場に投入しています。

 ホンダも同様で「インサイト」などからハイブリッド技術を進化させ、現在では2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」を展開。駆動用と発電用のふたつのモーターを搭載することで、さらなる環境性能向上を図っているほか、欧州のCAFE規制に対応するべく小型電気自動車「ホンダe」を投入しました。

 一方の日産では、トヨタやホンダとは異なるハイブリッドシステム「e-POWER」を「ノート」、「セレナ」「キックス」で展開。

 さらには、電気自動車は電気自動車「リーフ」を筆頭に、2021年以降はSUV「アリア」を投入するなど、e-POWER車と電気自動車のラインナップを拡充していきます。

 日産とアライアンス関係にある三菱でも、電気自動車やプラグインハイブリッド車によって燃費規制をクリアしていく見通しです。

 これらに国産メーカーの動きについて、メーカー関係者は次のように話します。

「今後、欧州や中国では充電インフラや優遇制度が進んでいる面もあり、日本以上に電気自動車が普及すると見られます。

 一方の日本では以前よりはさまざまな面で電気自動車が普及する体制は整いつつありますが、まだ5年ほどはハイブリッド車がメインとなるのではないでしょうか。

 しかし、10年後となる2030年はグローバルで見てもガソリン車/ディーゼル車の販売禁止となりはじめるため、グローバルモデルを展開する現在の自動車メーカーはそれに合わせて日本でもガソリン車のラインナップが減少すると予想出来ます」

スバル・マツダ・スズキはトヨタの技術を活用!?

 国産メーカー各社が電動化技術をけん引するモデルを投入していくなかで、マツダ・スバル・スズキはトヨタのハイブリッドシステムを活用することで、燃費規制や環境性能の向上を図ります。

 スバルでは、トヨタのハイブリッド技術を活用したプラグインハイブリッド車「クロストレックハイブリッド(日本のXV)」の米国での販売など、開発・生産・販売などさまざまな分野での協業を深めてきました。

 そのなかで、2019年6月には中・大型乗用車向けのEV専用プラットフォームと、CセグメントクラスのSUVモデルの電気自動車を共同で開発することを明かしています。

 これは、トヨタの電動化技術とスバルのAWD(全輪駆動)技術を活用するなど、両社の持つ技術の強みを持ち寄ることで、電気自動車ならではの魅力ある商品づくりにチャレンジしていくということです。

 両社は、共同開発について、次のように話しています。

「市場の多様化するニーズやさまざまな課題にスピード感を持って対応するためには、これまでの発想にとらわれない新しいビジネスモデル、業界の垣根を超えてさまざまな仲間とともに取り組むことが必要だと考えています。

 今回はその第一歩として、両社がお互いの得意とする技術を持ち寄り、可能な部分は協調することで、その製品化を加速させながら、EV専用プラットフォームを共同開発してまいります」

 このプラットフォームは、CセグメントからDセグメントクラスのセダン、SUV等の複数車種への幅広い応用や、効率的な派生車開発にも対応できるよう開発されるといいます。

 一方のマツダは、2020年11月9日におこなった「2021年3月期 第2四半期決算」にて、今後のグローバル戦略を公表しています。

 これによると、電動化技術としては、電気自動車専用プラットフォームの開発やプラグインハイブリッド車や48Vマイルドハイブリッド車の投入を予定。

 さらに、マツダが誇るパワートレインのロータリーエンジン技術を活用したマルチ電動化技術を展開するとし、2021年内には市販化を目指しているといいます。

 また、直近のCAFE規制対応としては、トヨタとの協業を強化するなかで、北米では同市場がメインと見られる新型SUVにトヨタのハイブリッドシステム「THS(トヨタハイブリッドシステム)」を搭載し販売予定です。

 欧州でもトヨタのコンパクトカー「ヤリス」のハイブリッド車をベースにしたOEM車としてマツダ版ヤリスを展開し、中国でもTHSを搭載したモデルの発売を予定するとしています。

 また、欧州では前述の排出枠を購入することでもCAFE規制に対応してくようです。

 トヨタのハイブリッド技術を活用するのは、スバルとマツダだけではありません。

 スズキではRAV4 PHVのスズキ版となる「アクロス」やカローラワゴンのスズキ版「スウェイス」を相次いで欧州に投入しています。

 これもCAFE規制対応と考えられ、両社の協業内容として公表されていた「トヨタからスズキへの欧州での電動モデルの供給」がベースです。

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 このように、年々規制が強化されるに伴い、各自動車メーカーも2025年から2030年までにラインナップのほとんどを電動化するという方式を出すなど、時代は電動化一直線です。

 しかし、各自動車メーカーは従来の「運転する楽しさ」も忘れてはいません。日産は2020年9月に次期型「フェアレディZ」をお披露目したほか、トヨタはル・マン優勝マシンとなった「TS050 HYBRID」をベースにした「GRスーパースポーツコンセプト」の市販化を計画。

 マツダでも直列6気筒エンジンを搭載するFRレイアウトモデルの開発をアナウンスするなど、電動化と平行して楽しいクルマづくりも諦めてはいないようです。