メルセデス・ベンツは2021年1月11日に、世界最大級のIT・家電ショー「CES」のオンライン開催で、次世代車内システム「ハイパースクリーン」を世界初公開しました。クルマの内装が「スマホ化」したかのような大型タッチスクリーンですが、従来の車載システムの機能と比べてどのような違いがあるのでしょうか。

クルマの内装が「スマホ化」した?

 メルセデス・ベンツは、世界最大級のIT・家電ショー「CES」のオンライン開催で米現地時間2021年1月11日に、次世代車内システム「ハイパースクリーン」を世界初公開しました。

 見た目は、ダッシュボードの全体が大きなスマホになったような雰囲気がある、大型タッチスクリーンです。横方向の長さは141センチ、総面積は2432.11平方センチに及び、車両の最終組立工場ではひとつの部品として取付けされます。

 日本車でも、こうしたシステムが当たり前となる時代が、もうじきやってくるのでしょうか。

 近年、ダッシュボードのデジタル化については、テスラがダッシュボード中央にカーナビなど各種操作機能を一元化した縦型ディスプレイを採用したことが、日系メーカーなどに大きな影響を与えました。

 その他、メルセデス・ベンツ、BMWの上級モデルでは横方向に対する多画面化を造形物として一体化させたり、「ホンダe」のようにデジタルサイドミラーの画像も含めて、車内幅いっぱいを活用するようなアレンジが登場してきました。

 そうしたなかで登場したハイパースクリーンは、コンセプトモデルではなくEV最上級モデル「EQS」や新型「Sクラス」に採用されます。

 自動車の歴史を辿ると、さまざまな新技術はメルセデス・ベンツが最初に量産化し、それが世界標準となったケースが数多くあります。

 例えば、アンチロックブレーキやエアバッグ、そして近年では日本のメディアでもすっかりお馴染みになった、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリングなどの新サービス・電動化)という言葉も、そもそもはメルセデス・ベンツのマーケティング用の造語なのです。

 ハイパースクリーン的な考え方は、近未来の日本車を含めて世界標準のような存在になるのでしょうか。

ゼロレイヤーってなに?

 ハイパースクリーンの迫力と実力は、その大きさだけではありません。キーポイントは、メルセデス・ベンツが「ゼロレイヤー」と呼ぶ設計思想です。

 レイヤーとは、階層を指します。車載システムでは、各種の操作をする際、各種スイッチにより次の階層へと順番に行く必要があります。

 10年ほど前なら、車載器の機能はカーナビとオーディオの操作がほとんどでしたが、近年はコネクテッドサービスやSNSの急拡大により、車載器が表示したりそこから操作できる機能は一気に増え、使いたい機能がホーム画面から3つも4つも先の深いレイヤーにあることが珍しくありません。

 こうした操作を運転中、または信号待ちの短時間でおこなうという、精神的なストレスや操作時間の制約があることが、自宅や自らが運転しない電車移動中に使うスマホやパーソナルコンピューターなどと車載システムとの大きな違いです。

 そうした課題を解決するため、近年の自動車メーカー各社が力を入れているのが、音声認識システムです。

 2010年代後半には、家電やスマートフォンでも、アップルのSiri、グーグルアシスタント、アマゾンアレクサなど、AI(人工知能)を活用した音声認識技術が標準装備されるようになり、こうした時代の流れに沿う形で、車載器の音声認識技術も一気に高度化してきました。

 そのなかで2018年に現行型「Aクラス」で量産化されたのが、MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)です。メルセデス・ベンツによりますと、MBUX搭載車は世界で累計180万台に達したといいます。

 今回登場したハイパースクリーンは、最新型のMBUXなのです。

 さて、「ゼロレイヤー」が意味するのは、ユーザーからリクエストする前に、いわゆるプッシュ型の情報提供、または実際の操作を車載器が指令を出しておこなうことを指します。

 例えば、いつもだいたい決まった時間に電話やメールをする友達、家族、または会社の取引先などがいれば、「そろそろこちらに連絡してはどうか?」と、システムが案内してくれます。

 また、EQSには車高調整装置があるのですが、自宅の車庫出入口に段差があれば、GPSの位置情報から、システムが自動で車高を上げてくれます。
 
 このように、MBUXハイパースクリーンは、いうなれば「上げ膳・据え膳」のように、クルマに何でもお任せできる、なんとも贅沢な機能だといえます。

 搭載するのがEQSやSクラスなど、メルセデス・ベンツの上級モデルならば、ユーザーに対する付加価値として理解できます。

 今後については、こうしたAI(人工知能)のシステムや機能は、半導体など関連機器の量産効果が大きく、上級モデルより新車価格の低い中級モデルやエントリーモデルまで短期間に広がる可能性も予測されます。

 そうした技術進化のなかで、自動車メーカーは新たなる課題に直面するように思えます。

 クルマが人の行動を常に先読みすることは、結果的に運転中の安心安全を確保することにつながると思う反面、「人間らしい生活」という観点から、ある一定の水準でそれから先の技術進化をするべきかどうかを検証することも必要になるのではないでしょうか。