かつて隆盛を極めていながら、現在は絶滅が危惧されるほど激減してしまったのが、1.6リッターエンジンを搭載したクルマです。なかでも1980年代から1990年代にかけては、数多くの1.6リッターFFスポーツモデルが登場。そこで、当時は走り好きの若者を夢中にさせた1.6リッターFF車を、5車種ピックアップして紹介します。

ライバルの存在で磨かれた珠玉の1.6リッターFF車を振り返る

 近年、コンパクトカーの主流は1.5リッター以下のエンジンを搭載したモデルで、現在は絶滅が危惧されるほど激減してしまったのが、1.6リッターエンジン車です。

 日本の税制上、1.6リッターエンジンの自動車税は2リッターエンジンと同額のため、中途半端な排気量なのは否めません。

 一方で、1980年代から1990年代にかけては数多くの1.6リッターFFスポーツモデルが登場し、走り好きの若者から絶大な支持を得ていました。

 もともとはモータースポーツでのクラス分けから1.6リッターエンジンが区切りとなっていたこともあり、高性能なモデルも存在。

 そこで、かつて隆盛を極めていた往年の1.6リッターFFスポーツ車を、5車種ピックアップして紹介します。

●ホンダ「シビックSiR」

 1972年に大衆車として誕生したホンダ初代「シビック」は1.2リッターエンジンからスタート。次第にボディサイズと排気量を拡大し、3代目では1.6リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載したスポーティグレードの「Si」をラインナップしました。

 そして、1989年にホンダは可変バルブタイミングリフトシステム「VTEC」を開発し、自然吸気ながら1.6リッターで160馬力を発揮するエンジン「B16A型」を「インテグラ」に搭載。

 この1.6リッター最強のエンジンを、インテグラよりも軽量な4代目シビックに搭載した「SiR」が発売され、スポーツドライビングを好むユーザーを夢中にさせました。

 B16A型エンジンはレッドゾーンが8000rpmからという、当時の1.6リッターエンジンとしては驚異的な高回転型で、ライバルを圧倒。

 それでいて、VTECならでは効果である低回転域のトルクも犠牲になっておらず、普段使いにも適したモデルでした。

 ハイパワーなエンジンを搭載したシビックSiRは、全日本ツーリングカー選手権で常勝を誇っていたことから速いFF車のイメージが定着し、その後も1.6リッタークラスではシビックがスポーツモデルの頂点に君臨し続けました。

●トヨタ5代目「カローラレビン/スプリンタートレノ」

 トヨタを代表する大衆車「カローラ」は1966年に誕生。2代目からは「レビン」、姉妹車の「スプリンター」では「トレノ」の名で、スポーツグレードが加わりました。

 そして、1987年には5代目となるカローラレビン/スプリンタートレノ(以下、レビン/トレノ)が登場。大きなトピックスとして、この代から駆動方式がFFとなったことが挙げられます。

 レビンとトレノの外観の違いは、4代目のAE86型を踏襲するかたちで、レビンが固定式ヘッドライト、トレノがリトラクタブルヘッドライトを採用し、イメージは大きく異なっていました。

 グレード構成は1.5リッターと1.6リッターのふたつのエンジンにより大きく分けられ、1.6リッターエンジンは先代から継承した4A-GEU型を横置きに搭載。最高出力は120馬力を発揮し、気持ちの良い吹け上がりを実現。

 5代目レビン/トレノはレースではシビックの後塵を拝しましたが、クルマとしての品質はさすがトヨタ車というべき高さで、各部の質感などレビン/トレノの方がシビックよりも大きく勝っていました。

●三菱4代目「ミラージュ サイボーグR」

 1978年に登場した三菱初代「ミラージュ」は同社初のFF車で、新世代のエントリーモデルとして誕生。クラス初のターボ車を追加ラインナップするなど、コンパクトカーの高性能化の先駆けになりました。

 その後代を重ねても、ミラージュのトップグレードはハイパワーなターボエンジンが主流となりましたが、4代目では1992年に発売された「ミラージュ サイボーグR」に高回転、高出力の1.6リッター直列4気筒エンジンを搭載。

 バルブ駆動には三菱独自の可変バルブタイミングリフト機構「MIVEC」が採用され、最高出力175馬力を発揮しながらも、低回転域での扱いやすさも兼ね備えていました。

 また、サスペンションはフロントがストラット、リアにマルチリンクを採用し、優れたコーナリング性能を発揮するなど、高性能モデルにふさわしいシャシ性能となっています。

 そのためモータースポーツの世界で活躍し、とくにアマチュアや学生が数多く参戦していたジムカーナでは、ミラージュ サイボーグRは善戦していました。

自然吸気エンジンで復活を果たしたダイハツのホットモデルとは

●ダイハツ「シャレード デ・トマソ」

 1977年に発売されたダイハツ初代「シャレード」は、量産車世界初の1リッター直列3気筒SOHCエンジンを搭載するなど、エポックメイキングなコンパクトカーです。

 当時はオイルショックという時代背景もあり、軽自動車に近い車両価格や、低燃費なエンジンを搭載したことで経済性に優れ、大ヒットを記録

 その後、1984年には2代目シャレードをベースに、イタリアのチューナーであるデ・トマソが監修した高性能モデル「シャレード デ・トマソターボ」が発売されました。

 3代目ではデ・トマソがラインナップされませんでしたが、1993年に発売された4代目で復活し、これまで1リッターターボだったエンジンは、新開発の1.6リッター直列4気筒自然吸気へとスイッチ。

 最高出力は125馬力と、ライバル車と比べ決してハイパワーではありませんでしたが、小型かつ900kg(5速MT車)という軽量な車体に、専用チューニングされたストラット式4輪独立懸架や4輪ディスクブレーキ、車体剛性のアップなどが施されたことで、高い運動性能を発揮。

 さらに、専用のエアロパーツや、ピレリタイヤ、ナルディ製ステアリング、レカロ製スポーツシートなど、デ・トマソの流儀に則った逸品が装備されています。

●日産3代目「パルサー ミラノX1ツインカム」

 日産は1978年に、FFコンパクトカー「チェリーF-II」の後継車として初代「パルサー」を発売。欧州市場を強く意識したグローバルカーとしての使命を担っていました。

 2代目では流行を取り入れたターボエンジンを搭載しましたが、1986年に登場したセダンとハッチバックの3代目では、トップグレードに新開発の1.6リッター直列4気筒自然吸気エンジン「CA16DE型」を搭載した「パルサー ミラノX1ツインカム」を設定。

 最高出力は120馬力を発揮し、欧州製コンパクトカーを思わせる直線基調のスタイリッシュなボディと相まって、ヒット作になりました。

 また、3代目パルサーはモータースポーツへの参戦も積極的におこなったことで、スポーティなイメージが定着。

 次世代の4代目ではWRCに参戦したターボエンジン+フルタイム4WDの「GTI-R」が登場し、さらに5代目では高回転・高性能な1.6リッター自然吸気エンジンに回帰した「VZ-R」がラインナップされるなど、スポーツマインドあふれるモデルでした。

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 冒頭にあるとおり、1.6リッターエンジンはモータースポーツと密接に関係していたことから、さまざまな車種に搭載され高性能化が図られました。

 しかし、各メーカーともモータースポーツへの参戦は縮小され、市販車ベースのカテゴリーも少なくなったことから、日本で1.6リッターエンジンはもはや絶滅寸前となっています。

 国内メーカーで1.6リッターエンジンを搭載しているのはトヨタとスバル、日産だけで、高性能車はトヨタ「GRヤリス」のみです。

 今後も、モータースポーツへの参戦拡大は厳しい状況のため、1.6リッターエンジンの復活は期待できそうにありません。