月間2万台以上も売れるクルマは、単純計算すると1日に700台も生産されることになります。一方、海外で多く見られる少量生産のクルマのなかには、受注から3年待ちのようなモデルもありますが、国産車のなかにも凝ったつくりのクルマが存在。そこで、実はこだわって生産されたモデル3車種をピックアップして紹介します。

作りにこだわったクルマを振り返る

 2020年に、日本ではおよそ460万台もの新車が販売されました。単純計算すると1日に1万2000台以上売れており、それだけのクルマが生産されているということです。

 なかでもトップセラーのクルマは月間で2万台以上も販売されますが、これも単純計算すると1日に700台前後が生産されているという驚くべき数字です。

 一方海外では、少量生産をおこなっているメーカーも多く、受注から納車まで3年待ちというような完全に手工業といえるメーカーも存在します。

 国産メーカーでは一般的にそうした少量生産をおこなう例は少数ですが、なかにはこだわりをもって作られたクルマもあります。

 そこで、実は凝ったつくりだったモデル3車種をピックアップして紹介します。

●ダイハツ「ミゼットII」

 1950年代から1960年代の日本は高度成長期に突入し、庶民でもマイカーが夢でなくなるなど、モータリゼーションが一気に開花した時代でもあります。

 そんななか、1957年に誕生した軽3輪トラックのダイハツ「ミゼット」は、個人商店を中心に物流を支えた存在でした。

 その後、一般的な軽トラックや軽バンが普及するとミゼットの役目は終了しましたが、ダイハツは1996年にミゼットのコンセプトを継承した軽トラックの「ミゼットII」を発売。

 ミゼットIIは軽自動車規格のサイズよりも小さいボディで、市街地での機動性を重視した設計となっています。

 外観ではフロントフェイスが特徴的で、スペアタイヤを搭載するフロント部分に丸目2灯のヘッドライトを配置して、初代ミゼットのデザインをオマージュ。

 室内は1シーターのひとり乗り(後に2シーターを追加)で、右ドアの窓だけを開閉可能とするなど割り切り、メーターはスピードメーターと燃料計のみ、パワーステアリングやエアコンも無く快適装備はヒーターだけとするなど、最低限の装備を搭載するに留まっています。

 そのため、ミゼットIIの価格は46万9000円(消費税含まず)からと非常に安価に設定されていました。

 これほどの低価格を実現していながら多くの生産工程がハンドメイドとされ、その目的はベテラン作業員の技術を若い世代に継承することにあったといいます。

 斬新なコンセプトが話題となったミゼットIIですが高度成長期ほどの需要は無く、2001年に生産を終了。これほどまでに個性的な軽商用車は、その後登場していません。

●マツダ「ロードスタークーペ」

 1989年に発売されたユーノス「ロードスター」は、世界的なオープン2シーターブームの火付け役になった偉大なクルマです。

 当初からオープンカーとして設計されていた初代ロードスターは、クローズドボディのクーペも検討されていたといいますが、実際には実現しませんでした。

 そこで、1998年に発売された2代目ロードスターをベースにした「ロードスタークーペ」が2003年に発売され、待望のクーペモデルが限定販売でデビュー。

 ロードスタークーペの生産はマツダの関連会社「マツダE&T」が担当し、ベースとなるシャシや、流用できる部品を抜き取ってマツダE&Tに搬入し、組み立てがおこなわれました。

 実際の生産ではロードスターのシャシに、専用にプレス型を製作したスチール製のルーフやリアフェンダーなどを手作業で溶接し、懸念された重量増は10kgほどに抑えられています。

 外観は流麗なフォルムのファストバックスタイルで、スタンダードモデル以外に異なる意匠の3タイプを用意。エンジンやトランスミッションはベースから変更されていません。

 なお、オープンカーをベースにクーペを製造する手法は珍しくなく、かつての英国製スポーツカーや、ポルシェ「ケイマン」、BMW「Z3クーペ」などが存在します。

スカイライン誕生40周年を記念した異端のGT-Rとは

●日産「スカイラインGT-R オーテックバージョン 40thアニバーサリー」

 プリンス自動車の前身である富士精密工業から、1957年に初代「スカイライン」が発売されました。

 その後、日産とプリンス自動車が合併した後もスカイラインは代を重ね、日産を代表するスポーティなクーペ/セダンというイメージが定着。

 そして、1989年に8代目スカイラインをベースとした3代目「R32型 スカイラインGT-R」が登場。国産高性能モデルの頂点に君臨しました。

 1995年には4代目のR33型 スカイラインGT-Rが発売され、ボディのサイズアップや、足回り、ブレーキの改良など、正常進化を果たします。

 この4代目スカイラインGT-Rをベースに、1998年、スカイライン誕生40周年を記念するモデル「スカイラインGT-R オーテックバージョン 40thアニバーサリー」が登場。

 開発と生産はオーテックジャパンが担当し、初代の前期モデル以来となる4ドアセダンのスカイラインGT-Rの復活でした。

 生産方法としては2ドアGT-Rのシャシをベースに、4ドアセダンのボディパネルを溶接。さらにブリスターフェンダーを4ドアで再現するために、リアドアとリアフェンダーは新たにプレス型が製作されました。

 280馬力を誇る2.6リッター直列6気筒ツインターボ「RB26DETT型」エンジンを含むパワートレインや足まわりは2ドアGT-Rと同じです。

 内装も2ドアGT-Rに準じていますが、リアシートは専用のバケットタイプとされ、4ドアセダンながら乗車定員は4名に設定されています。

 ほかにもリアウイングは装着されず、フロントスポイラーも小型タイプに変更される、派手すぎない大人のためのスーパーセダンというコンセプトでした。

 なお、スカイラインGT-R オーテックバージョン 40thアニバーサリーの生産台数はわずか400台ほどで、当時の販売価格は498万5000円と、内容の割にはバーゲンプライスといえます。

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 今回、紹介した3台は国産メーカーが取り組んだ特殊な事例といえますが、フェラーリやロールスロイスなど高級車メーカーでは日常的におこなわれています。

 例えば、フェラーリでは顧客のリクエストで世界に1台だけのクルマをつくることも可能です。

 しかし、お金さえあれば誰でもつくってもらえるわけではなく、フェラーリにとって特別なお客様でなくてはなりません。

 長年にわたってブランドの価値を構築した、フェラーリならではといえるのではないでしょうか。