2021年シーズンのフォーミュラ1世界選手権のオフィシャル・セーフティカーに選ばれた「ヴァンテージ」の市販公道モデルが発表された。ヴァンテージ史上最強といわれる「ヴァンテージF1エディション」の中身とは。

「ヴァンテージ」史上最強モデル誕生

 2021年3月22日、アストンマーティンは新型「ヴァンテージF1エディション」を発表した。

 ヴァンテージF1エディションは、トビアス・ムアースがアストンマーティンCEOに就任して、彼の意向を反映した最初のモデルとなる。

 新型ヴァンテージF1エディションは、ヴァンテージラインナップの頂点に君臨するモデルとなり、フォーミュラ1世界選手権への復帰に刺激を受け、F1開幕戦のバーレーンGPでデビューするフォーミュラ1オフィシャル・セーフティカーのヴァンテージに採用されたエンジニアリングが直接フィードバックされている。

 フォーミュラ1オフィシャル・セーフティカーにトビアス・ムアースが設定した要件とは、F1サーキットでセーフティカーとしての役割を果たすことができるよう、オンロードでの快適性を損なうことなく、パフォーマンスを大幅に強化してラップタイムを短縮することであった。とくに、レース専用タイヤを装着しなくても、そのパフォーマンスを発揮できることが重要視された。

 これらの目標を達成した後、ムアースは、オフィシャル・セーフティカーで開発したエンジニアリングを量産車へと導入して、ヴァンテージF1エディションを新たに開発するように指示。その結果、ヴァンテージ・フォーミュラ1オフィシャル・セーフティカーのレプリカモデルとして、公道走行可能な史上もっともスポーティなヴァンテージが誕生したのである。

 ヴァンテージF1エディション クーペ(ロードスター)のパフォーマンスは次のとおりだ。

・0−100km/h加速:3.6秒(3.7秒)
・最高速度:314km/h(305km/h)
・燃費(WLTP):8.6km/L(8.6km/L)

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 アストンマーティンCEOのトビアス・ムアースは、ヴァンテージF1エディションについて次のようにコメントしている。

「パフォーマンスはすべてのアストンマーティンの中心的要素ですが、F1の名前を冠する以上、真に優れたクルマでなければなりません。

 ヴァンテージは、アストンマーティン・ラインナップのなかではとくにスポーティなキャラクターに焦点を絞ったスポーツカーですが、フォーミュラ1オフィシャル・セーフティカーとしての重責を担うため、さらにパワフルで俊敏、さらにレスポンシブでエキサイティングなクルマにする必要がありました。

 そしてもちろん、サーキットでより速く走れなければなりません。私は、パフォーマンスの向上は、レース専用タイヤを装着することによって達成するのではなく、クルマのダイナミクスを真に改善することによってもたらされるべきだと主張し、エンジニアリング・チームに厳しい目標を課しました。

 このクルマを見れば、その目標が達成されたことがお分かりいただけると思います。ヴァンテージF1エディションは、もっとも眼識のあるドライバーに訴求するだけでなく、アストンマーティンの歴史のなかでもっともエキサイティングな瞬間を表現したニューモデルでもあります」

「F1」の名前を冠した「ヴァンテージ」は何が違う?

 トビアス・ムアースが太鼓判を押すヴァンテージF1エディションは、スタンダードなヴァンテージのどの部分に改良のメスを入れたのであろうか。

●エンジンとトランスミッション

 4リッターV型8気筒ツインターボエンジンの最高出力は、25ps増加し535psとなった。最大トルクは同じ685Nmで変更ないが、ピークトルクの持続範囲が拡大し、扱いやすさと粘り強さが改善されている。

 このエンジンに、8速オートマチック・トランスミッションが組み合わされられている。シフトアップ時のトルク損失の最適化、シフト時間の短縮が図られ、ダイレクト感と正確性が向上した。

 このトルクデリバリーは、とくに激しいブレーキングを伴うシフトダウンにおいて、車両のコントロール性とドライバーとの一体感を高め、トラクションの限界域で走行しているときに、より精密なコントロールを可能にする。

●シャシとホイール&タイヤ

 シャシの面では、サスペンションとステアリングに焦点を当て、アンダーボディに細かい修正を加えることによってフロントの構造剛性を高め、ステアリングフィールとレスポンスをさらに向上させた。

 またダンパーの内部にも改良を施し、ダンパーの作動領域が広げられている。これにより低速における追従性を低下させることなく、高速走行時におけるコンプレッションおよび突き上げの両方で、垂直方向のボディコントロールが大幅に改善されている。

 さらにダンパーの変更を補完するために、リア・スプリングレートと横方向の剛性を強化したことによって、鋭いターンインが可能になり、トラクションも高められた。もちろんフロントの反応速度を補完するために、リアにも調整が施されている。

 ステアリング入力に対するレスポンスと、ステアリング・フィールをさらに改善したことで、路面からのフィードバックがより明確に伝達されるようになり、グリップの詳細な状況をドライバーが感じることができるように仕立てられた。

 標準装備されるホイールは、従来の20インチから21インチへとインチアップされ、タイヤはF1エディションのためにピレリと協力して特別に開発したものとなる。

●ボディカラーとトリム

 ボディカラーは、アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1チームのF1マシンおよびフォーミュラ1オフィシャル・セーフティカーのカラーを模した、アストンマーティン・レーシング・グリーンも含まれている。

 エクステリアカラーはサテン仕上げまたはグロス仕上げの両方を選択でき、他のカラーオプションとしてジェットブラックとルナホワイトが用意されている。

 これらのカラーにはすべて、ソリッドマット・ダークグレーのレーシング・グラフィックが施される。

 インテリアには、新しいオブシディアン・ブラックレザーとファントム・グレーのアルカンターラ張りのトリムが設定され、ライムグリーン、オブシディアン・ブラック、ウルフ・グレー、スパイシー・レッドのコントラスト・ストライプとステッチを選択することが可能だ。

 このほか、ベーングリル、2×2ツイル・カーボンファイバー・エクステリア・ディテール、専用グラフィック、4本出しエキゾースト、新デザインのサテンブラック・ダイヤモンド旋削仕上げによる21インチ・アロイホイールなどが標準装備される。

 ボディタイプは、クーペとロードスターの両方が用意されるようだが、車両価格や日本への割り当て台数など、まだ発表されていない。今後の発表が待ち遠しい1台だ。