エンジンの性能を示す数値として「馬力」と「トルク」という言葉を耳にしますが、一体どのようなことを表すものなのでしょうか。

「馬力」や「トルク」はクルマのどんなことを表してる?

 クルマのパワーユニットが発生する動力性能として、「馬力」や「トルク」と呼ばれる数値が公表されています。

 数値が大きければそれだけハイパワーなのは分かりますが、これらは一体何を示すものなのでしょうか。

 現在、クルマのパワーを表現する単位はkWで表記されるようになっており、以前主流だった馬力(PSやHP)などは補助的にカタログなどに記載されています。

 kWは国際的に共通の単位系(SI単位系)で、クルマのパワーユニットが1秒あたりに生み出す仕事率(エネルギー)を表しており、簡単にいうとクルマのスピードを出せる能力の数値ということです。

 ちなみに、日本の馬力は欧州で主流の「PS」を採用しています。

「馬の力」というと、HP(Horse Power)」を用いた「英馬力」のほうがよさそうな気がしますが、イギリスではポンドやヤード法に基づいて(現在はメートル法も一部で使用)換算されるので分かりにくいです。

 そこでフランス発祥のメートル法で算出する「仏馬力PS(Pferdestarke=ドイツ語で馬の力)」を日本で採用するに至っています。

 この仏馬力は、できる限り英馬力に近づけつつも簡素化した数値になっており、「1PS=75kgのパワーで1mほどモノを動かす仕事率」という単位です。日本の計量単位令では「1PS(仏馬力)=735.5W(0.7355kW)」と定められています。

 つまりPSをkWにする場合は馬力に0.7355を掛け算すればいいので、280PS≒206kWとなります。逆の場合はkWに1.36を掛ければPSに換算できます。

 よく使われるもうひとつの数値がトルクです。これはエンジンから発生するパワーを伝えるクランクシャフト(エンジンの主軸)を回す力を数値化したものです。

 厳密にいえば、クランクシャフトから長さ1mの棒に1kgの重りを回転させる力を算出方法に使用しており、用いられる単位表記が「kg-m」となります。

 内燃エンジンを例にすると、燃焼室で爆発が起きるたびにピストンに圧力がかかり、それがクランクシャフトを回転させるトルクとして取り出し、トランスミッションやドライブシャフトを通じてタイヤに回転する力が伝わります。そしてこのトルクは、エンジンの回転数に応じて変化します。

 一般的にエンジン回転数が高まるとトルクは増えていきますが、ある回転数に達するとピークを迎え、その後は落ちてくるといわれています。

 トルクはパワーユニットの力強さを表している数値なので、「どれだけパワーを引き出せるのか」を数値化したものと解釈できます。つまり「クランクシャフトを回す力が強い=加速力が良い」といえるわけです。

 ちなみに一般的にトルクは「強い/弱い」ではなく「太い/細い」と表現されます。

 そしてトルクは、基本的に排気量に比例して大きくなります。よくいわれる目安が自然吸気エンジンの場合は「1リッターで10kg-m」です。排気量が1.8リッターなら18kg-mあたりが順当な数字といえます。

 しかし最近のダウンサイジングターボは、最高出力こそ控えめな数字ながら、1リッターで10kg-mを大きく超えるトルクを発生させています。

 よく「まるで4リッター自然吸気エンジンと同等」といったことがいわれますが、同じクルマでも「トルクが低い回転域から大きく出る=加速がいい=パワフルな走り」というわけです。

 最近ではこのkg-mも国際的に共通の単位系(SI単位系)のNm(ニュートンメーター)が用いられるようになりました。

 この解釈も非常に難しいので、「1kg-m=9.8067Nm」、kg-mはNmの約1/10の数字だと覚えておけばよさそうです。

加速性能はクルマの車重が大きく影響する?

 しかし「大排気量エンジンを搭載した超ハイパワーのモンスターマシンが1番速い」とはいえないのが難しいところです。

 その証拠に、もうひとつのキーワードとなる「パワーウェイトレシオ」というものがあります。

 これは、かんたんにいえば「車両重量÷馬力」で算出できる数値で、1馬力が負担する車重を表します。

 例えば、300馬力で2トンのクルマ(6.67kg/馬力)は、160馬力で1トンのクルマ(6.25kg/馬力)に数値では負けてしまうということになります。

 この最高峰がF1などのフォーミュラマシンで、パワーウェイトレシオは1を切るレベルといわれています。

 高性能スポーツカーでも3.0kg/馬力なので、フォーミュラマシンの加速力が怪物級であることがわかります。

 実際の市販車であれば、7.0kg/馬力より小さい数字なら高性能と評価されるようです。

 ちなみに、スズキ「スイフトスポーツ」の場合、最高出力140馬力で車重は970kg(6速MT)。パワーウェイトレシオも6.9kg/馬力となります。

「馬力がある=スピードが出る」「トルクが太い=スムーズに加速して乗りやすい」「パワーウェイトレシオ=クルマの持つ運動神経」というように覚えておくとよいでしょう。

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 馬力とトルク、パワーウェイトレシオの関係性を応用すると、「車重が軽いクルマ=同じ速度で走ってもエンジンへの負荷が少ない=燃費が良くなる」ということにもつながることが分かります。

 エコカーやEVでも「軽いクルマ」は環境性能が良くなりますが、一方で安全性確保のためにはそれなりのパーツや機能を搭載する必要があり重量が増してしまいます。

 このバランスが取れたクルマが本当の意味で「良いクルマ」だということになりそうです。