2人乗り小型オープンスポーツカーの生産累計世界一のギネス世界記録を持つマツダ「ロードスター」。なかでも2代目となる「NB型」は、歴代モデルのなかでどんな役割を果たしたのでしょうか。

NBが失敗していたらライトウェイトスポーツは絶滅していたかも

 トヨタとスバルは2021年4月5日、新型「GR86」の世界初公開と新型「BRZ」の日本初公開について共同発表会をおこないました。

 その模様をオンラインで見ながら、新型GR86・新型BRZをマツダ「ロードスター」と比較すると、パッと見た印象はそれぞれ2ドアの小型スポーツカーであっても、GR86とBRZは本質的にはロードスターの直接のライバルではないと改めて感じました。

 こうした感想を、多くのロードスターユーザーが共有できるのではないでしょうか。

 それほどまでに、ロードスターが唯一無二の存在であることを、筆者(桃田健史)は2021年2月に初代NA、2代目NB、3代目NC、そして現行のNDという4世代を2週間ほどの間で乗り継ぎながら再確認しました。

 試乗の順番は、筆者の要望で、ND、NA、NC、そしてNBとしました。その理由は、まずはロードスターの最新状況を把握し、次に原点を知り、さらに大きな転換期だったNCを再確認し、最後に過去の試乗体験がもっとも多いNBで締め括りたいという想いからです。

 ロードスターは、1989年の初代モデルデビューから2020年末まで、グローバルで113万7368台を生産。2人乗り小型オープンスポーツカーの生産累計世界一のギネス世界記録を更新し続けています。

 地域別の販売台数をみると、日本は20万4583台、北米は50万4882台、欧州は37万1891台といった具合に、国内にとどまらず、欧米でも高い人気を誇っていることが分かります。

 113万台以上のロードスターのうち、NBは29万123台を販売。これは、初代のNAの43万1506台に次ぐ2番目に多い台数です。

 NBは発売されて間もなかった1990年代末から2000年代はじめにかけて、筆者が当時居住していた米・カリフォルニア州で日常的に使用する機会が多く、今回の試乗ではその頃の南カリフォルニアの風景が蘇ってきました。

 ロードスターの開発主査は、どのような“NB観”をもっているのでしょうか。

 NA発売当時から現在までNAのオーナーであり、NDのチーフデザイナーから主査となった中山雅氏は、NBの存在価値について次のように解析します。

「一言でいうと、NBは(NAから)見事に繋いでくれた殊勲者です。NAが出てすぐに世界中にフォロワーが生まれました。一時的に活況を呈しましたが、やはり次第にマーケットは衰退していく気配がありました。

 そんな気配がし始めたなかでNBはデビューした訳ですが、もしこのNBがビジネス的に失敗していたら、またしてもライトウェイトスポーツは絶滅に追いやられることになったはずです。

 しかしNBは見事に成功しました。正確にいえば、失敗しないような強靭なコンセプトを持って企画され、それを実現していたと思います。

 小さく軽いボディを最大の武器にして『走る歓び』を創ること。時代の要請にしなやかに応えられる安全装備や快適性を備えながらもアフォーダブルな価格を維持すること。

 これらを決して外さずにクルマを創り上げることで、その存在をユニークかつ際立ったものにすること。

 このクルマがなかったら、ロードスターは30年間続けられなかったと思います」

歴代モデルのなかでNBは「Best Handling car」

 NBの開発に深く携わった、現在ND主査の任にある齋藤茂樹氏に聞いてみました。

「車種リーダーとして初めて企画段階から機能開発を担当したのがNBでした。機能目標達成に向けた実研計画の立案、進捗、報告をおこなうなかで、リーダーとして役割責任を学び、エンジニアとして一番成長させてもらった時代だったと思います。

 また、貴島(孝雄)主査の軽量化への異常ともいえるこだわりを見て、志とは何かも学ばせて頂きました」

 齋藤氏は当時を振り返りながら、NBを「成長」という言葉で表現しました。

 3代目・4代目ロードスター主査の山本修弘氏は、次のように歴代ロードスターを振り返ります。

「2015年から2016年のND導入で世界中のたくさんのメディアやお客さまとお話をさせて頂きましたが、NAからNDまでの各モデルについてどう思うかという質問をよく頂きました。

 そのとき、『NAはFun to Drive car、NBはBest Handling car、NCはBest Performance car、NDはBest Roadster』私にとっては、どのロードスターも大好きな相棒です」

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 傍から見れば、NA、NB、NC、NDという時系列での変化に思えるロードスターの進化ですが、それぞれの時代で、作り手は悩み、切磋琢磨し、そして夢に向かって一歩一歩前進してきました。

 歴代主査の皆さんの4世代のロードスターそれぞれに対する気持ちを聞き、そして筆者自身が4世代ロードスターそれぞれを改めてじっくりと走らせたことで、「ロードスターとは何か?」「マツダがロードスターで追い求めてきたもの、そしてこれからも追い求めていくことは何か?」が少しだけ分かったような気がします。