今後10年ほどでエンジン車のみの新車販売が難しくなっていきます。そうしたなかで、スポーツカーにはエンジン車を求める声が依然と多いのも事実です。では、今後、スポーツカーのパワートレインはエンジン車から電動車へとどのようにして置き換わっていくのでしょうか。

GR86とBRZは2.4リッター自然吸気採用! スポーツカーの電動化どうなる?

 2021年4月5日、トヨタとスバルは新型「GR86」と新型「BRZ」のプロトタイプを発表しました。
 
 近年、環境面や販売低下などを理由にさまざまなモデルが生産終了となっていますが、各社のスポーツカーは今後どのようにして生き残るのでしょうか。

 前述の86とBRZは、トヨタとスバルの共同開発により誕生。2012年に登場した初代モデルは、スバルの水平対向エンジンとトヨタの直噴技術「D-4S」を世界初採用したFRスポーツカーとして発売。

 とくに、トヨタの86は漫画「頭文字D」などに登場したことで一躍人気となった、4代目となるトヨタ「カローラレビン/スプリンタートレノ」の型式番号となる「AE86」を車名の由来としたこともあり、大きな話題となりました。

 その影響もあり、発売初年度となる2012年ではグローバル市場で約4万5000台を販売(うち約2万3000台は日本)。そして、現在までにグローバル市場で累計20万台以上を販売しています。

 さらに、モータースポーツのベース車として、ラリーやワンメイクレース、ジムカーナ、ドリフトといったさまざまな分野で活躍するなど、スポーツカー文化を再燃させました。

 また、トヨタは2019年5月に「GRスープラ」、2020年9月に「GRヤリス」を発売。前述のGR86も2021年秋の発売を予定しているほか、近い将来には販売価格が1億円以上ともいわれる「GRスーパースポーツ」が発売予定となるなど、スポーツカーに注力していることが分かります。

 一方で、2020年9月16日に日産が次期型「フェアレディZ」のプロトタイプをお披露目して大きな話題となりました。

 また、ホンダでは2020年10月にホンダ「シビックタイプR」をマイナーチェンジ。当時に限定車となる「リミテッドエディション」が発売され、日本では予約開始から数日で完売になったといいます。

 しかし、同じホンダのスポーツカーでは「S660」が2022年3月をもって生産終了することを発表。このアナウンスが発表された2021年3月12日から約20日後の3月30日に完売しています。ホンダは生産終了の理由を次のように話しています。

「S660は、2022年以降の法規制(騒音・燃費・安全など)に対応出来ないことから生産終了となり、これらを改修するコストを掛けられないという経営判断です。S660の名は消えてしまいますが『走る喜び』はほかのホンダ車が受け継いでいきます」

 ホンダのコメントにあるように、クルマを開発・販売するうえでコスト面は重要な要素です。通常の乗用車であれば、量産が見込めることから、その台数に見合った改良がおこなわれます。

 しかし、スポーツカーの場合は通常の乗用車ほど量産は見込めません。それでも各社はスポーツカーをラインナップしつづけますが、どのような意図があるのでしょうか。

 スポーツカーに注力する背景について、国産メーカーの担当者は次のように話します。

「最近は、どのメーカーもグローバル市場での展開を見据えて開発するモデルとその国や地域に合わせて開発するモデルに分かれています。

 そうしたなかで、スポーツカーはグローバル市場を意識して開発されることがほとんどです。

 その要因として、スポーツカーはメーカーのブランディングとしての存在意義があるからといえます。

 実際、コスト面や販売面だけを考えるとスポーツカーの開発にGOサインは出ません。

 しかし、各メーカーにはそのブランドを代表するモデルがいくつかあり、ファンの多くはスポーツカーの名を挙げる人も少なくありません。

 また、日本ではモータースポーツへの関心が低いこともあり、販売台数への影響は少ないですが、欧州や北米ではモータースポーツでの活躍が販売に大きく影響しています。

 こうしたグローバルで考えた際に、スポーツカーをラインナップしておくことは重要な販売戦略といえます」

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 国産メーカーを代表するモデルとしては、トヨタは前述のスープラや86、日産はフェアレディZや「GT-R」、ホンダはシビックタイプRや「NSX」、マツダは「ロードスター」などが挙げられます。

 しかし、メーカー単体でスポーツカーを開発・販売するのは前述のコスト面が大きなハードルとなり、最近では前述の86/BRZをトヨタとスバル、スープラ/Z4をトヨタとBMWで共同開発するといった取り組みがおこなわれています。

 また、ダイハツ「コペン」は、本来ダイハツが開発・製造・販売をおこっていましたが、2019年にはトヨタがGRブランドにて「コペンGRスポーツ」を発売するなど、新たな販売方法を展開しました。

 このように、各社はスポーツカーの存続させるため、さまざまな展開を試行錯誤しているようです。

フェアレディZは2021年中頃に動きがある? 今後はエンジンとモーター、どっちが主役に?

 前述のS660は、法規制に対する改善コストが見合わないことが生産終了の要因となっていました。

 また、世界各地では燃費、騒音、衝突、安全などさまざまな規制や義務化が進められており、これらの要素はスポーツカーで重要視される走行性能、軽量化といった部分を犠牲にしなければならない可能性があります。

 そして、スポーツカーにとって大きな転換期となるのが、世界各国が掲げる内燃機関(ガソリン車/ディーゼル車)の新車販売を、早くても2030年から禁止するという流れになっていることです。

 そのため、各メーカーは電動車(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車)のラインナップを拡充させており、内燃機関のみを搭載するスポーツカーが少なくなってくることも予想出来ます。

 現時点で、次期型フェアレディZのパワートレインは、V型6気筒ツインターボエンジンとマニュアルトランスミッションを組み合わせることが公表されており、2021年中頃には北米市場で市販に関する何らかのアナウンスがされる見込みです。

 また、2020年11月に先行して北米市場で発表された11代目「シビック」には、セダン、ハッチバック、タイプRがラインナップすることが明かされており、タイプRに関して海外メディアでは「最後のエンジン車となるのではないか」と予想されています。

 一方で、GRスーパースポーツ(仮称)は、WEC参戦モデル「TS050 HYBRID」の公道モデルというコンセプトで開発されています。

 パワートレインはV型6気筒ツインターボエンジンとトヨタハイブリッドシステム・レーシング(THS-R)を組み合わせシステム最高出力は1000馬力を発揮。

 TGR(TOYOTA GAZOO Racing)は「高効率のEVシステムと希薄燃焼エンジンの組み合わせにより、究極のパワーと環境性能を両立した、次世代のスーパースポーツカーを目指す」と説明しています。

 日産では、2019年に新型EVレーシングカー「NISSAN LEAF NISMO RC」を公開。

 これは、電気自動車のリーフをベースにツインモーターと四輪駆動システムを搭載。日産はこのモデルについて次のように説明しています。

「日産の電気自動車技術が実現するエキサイティングで静かなゼロ・エミッションの走りを提供します。このモデルは、パワーやパフォーマンスをさらに高め、よりワクワクするEVを実現するためのものであり、『ニッサン インテリジェント モビリティ』の取り組みを最もエキサイティングに表現したものです」

 また、ホンダにはすでにハイブリッド車のスポーツカーが存在。それは、2016年8月に発表された2代目NSXです。

 3.5リッターV型6気筒エンジンにホンダ独自の3モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID SH-AWD」を組み合わせた仕様となっています。

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 このように、国産メーカーではガソリン車としてのスポーツカーと次世代の電動スポーツカーという両軸でクルマ本来の愉しさを追求したモデルを展開しています。

 かつてのスポーツカーは、内燃機関車を基本としていましたが、今後は電動車が定番となる日も遠くはないかもしれません。