かつてのSUV(RV)やミニバンには、フェンダー部分にきのこのような形をしたミラーが装着されている光景をよく見かけました。しかし、最近では一部の車種でしか見かけなくなりましたが、なぜ通称きのこミラーを採用する車種は減少しているのでしょうか。

サイドアンダーミラーが必要なくなった理由

 かつてSUVやミニバンに装着されていた通称「きのこミラー」と呼ばれていたサイドアンダーミラーは最近のクルマでは見かけることが少なくなりました。そこにはどういった理由があるのでしょうか。

 サイドアンダーミラーとは、運転席からの死角となる、車両の左前タイヤとその直近の前方および助手席側の側面死角を映し出すミラーとして、フロントフェンダーなどに装着されていたパーツです。

 このパーツは、国土交通省にて道路運送車両法の安全保安基準の第44条に定められた条件を満たすために、取り付けが義務付けられた補助確認装置とされ、「自動車の前方2mにある高さ1m、直径0.3mの円柱」の範囲を確認できる装着されていました。

 車高が高いSUVなどの車種は、サイドアンダーミラーで視界を補助しないと、交差点における左折時などで巻き込み事故を起こす可能性があり、このような基準が追加されたとされています。

 この基準は、2003年にクルマの視界を確保する間接視界基準の導入を国土交通省が決定。

 2005年1月1日以降の生産車からサイドアンダーミラーの取り付けが義務付けられました。

 しかし、2016年6月に「間接視界基準に係る国際規則の採用」が施行されたことにともないサイドアンダーミラーと同等の視界が確保されるカメラモニタリングシステムでの代用することが許可されました。

 この際、国土交通省自動車局は、次のように説明しています。

「バックミラー(後写鏡)等に関する国際基準が改正され、バックミラーの代わりに、『カメラモニタリングシステム』(CMS)を使用することが可能となりましたので、道路運送車両の保安基準等を改正し、これを国内基準として採用することとします。

 この結果、自動車メーカーは、国際基準に適合するカメラモニタリングシステムを備えることにより、バックミラーなどがない自動車を設計・製造することが可能となります」

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 このように、サイドアンダーミラーの代替えとなる機能を有するシステムを採用することで、ドライバーの操作により側面死角を確認できるようになった結果、サイドアンダーミラーを付けたクルマが減少しました。

 サイドアンダーミラーについて、マツダ販売店の販売店スタッフは以下のように話します。

「サイドアンダーミラーをかつて採用していた車種はありました。

 例えばピックアップトラックの『プロシード』やSUVの『トリビュート』、商用車の『ボンゴバン』や『タイタン』などに装備されていました。

 しかし、最近のクルマでは、デザインを損なう突起物として格好が悪くなる点や、代替できる安全装備の登場があった経緯により、新車への採用は大きく減っています」

 また、ホンダの販売店スタッフは、次のように話します。

「サイドアンダーミラーは装着される機会が減りました。これは、デザイン上の観点から出来る限りの突起物を無くしたいということらしいです。

 N-BOXやCR-Vなどは、助手席側のサイドミラーと一体になっているタイプで、ドライバーの死角を減らすような仕組みとなってます。

 カメラタイプのものは、ステップワゴンなどに搭載され、ウィンカーレバーの切替えスイッチを押すとカメラ映像が表示されるようになっています」

サイドアンダーミラーに変わる安全対策とは?

 サイドアンダーミラーの採用自体は、義務化される以前からメーカーが自主的におこなっていました。

 法施行以前からサイドアンダーミラーを装着していた代表的な車種には、トヨタ「ランドクルーザー」、日産「エルグランド」、三菱「パジェロ」、スバル「フォレスター」などが挙げられます。輸入車にも、正規輸入販売されていた車種には装備されていました。

 2021年4月現在の日本国内で販売されている新車で、サイドアンダーミラーを装備しているクルマは、トヨタ「ハイラックス」、「ランドクルーザープラド」、「ハイエース」、日産「NV350キャラバン」、三菱「デリカD:5」と、わずかな車種に限られています。

 サイドアンダーミラーに替わる安全対策について、前出のマツダ販売店スタッフは、次のように話します。

「もともと、サイドアンダーミラーは中・大型トラックや路線バスを含む中・大型バスに装備されていた補助視界確保装置でした。

 それが、大型のSUVや商用バンなど一般的な乗用車に比べて着座位置が高く、左側方に死角ができやすいクルマなどの死角を減らすため装着されるようになった装備です。

 サイドアンダーミラーからカメラに変わった流れとして、マツダ車においては、2006年に登場した『CX-7』には、助手席側のサイドミラーに取り付けた小型カメラで視界を確保する『サイドブラインドモニター』を標準装備されました。

 これにより、エクステリアデザインの美しさを損なうことなく、サイドアンダーミラーを代替する装備として、装着義務基準に適合させました。

 また、2017年の『アクセラ』の改良以降に、マツダ車の多くの車種で採用されている『360°ビューモニター』が、視界の確保、法規制の適合とともに、助手席側のみならず、全方位でのクルマの死角解消に大きく寄与しました。

 マツダ独自の考え方として、フロントウィンドウを大きく取り、Aピラーの配置を工夫し、サイドドアミラーの取り付け位置を従来車より少しだけドア後方に移動させて、これまでサイドミラー本体によって生まれていた死角を減らす工夫をしています。

 車両左サイドにいる小さな子供や障害物を視認できるようにサイドウィンドウの視界を広く取っています」

 実際に、マツダが「CX-7」にサイドブラインドモニターを採用したように、2007年に日産も「エクストレイル」や「デュアリス」に同じ技術を採用して、サイドアンダーミラーを2010年代に採用を取りやめています。

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 サイドアンダーミラーは、デジタル技術が発展する以前、SUVの視界を確保する補助装備でした。

 ところが近年のカメラやセンシング技術の発展で、保安基準に適合した先進モニタリング装置が誕生し、ドライバーの視界をサポートする役目を引き継いだといえます。

 これからも安全運転支援技術は進歩を遂げると思われますが、いずれにしても重要なことは、ドライバーが安全運転に対する意識を正しく持ち、安全装備を適切に扱うことが求められるでしょう。