ポルシェにド派手なオーバーフェンダーを取り付けたスタイルで一躍有名になった「RWB」がカスタムした「911」は、欧州のオークション・マーケットで価値が認められるのか、最新オークション結果を検証してみよう。

日本発のポルシェのカスタムは、世界で認められるのか?

 ポルシェのオーナーなら、中井啓氏のことを知っている人は多いだろう。RWBで有名な中井氏である。

 ドリフトドライバーとして「AE86」で活躍していた中井氏は、当時からメカニックとしても有能な存在だった。そんな中井氏が出会ってしまったのが、空冷エンジンを搭載したポルシェだった。

 空冷ポルシェに魅了された中井氏は、千葉県柏市「RWB(RAUH Welt BEGRIFF)」というショップを立ち上げることになる。ショップ名のRWBは、ドリフト時代のチーム名である「ROUGH WORLD(ラフ・ワールド)」から得たもの。「ラフ・ヴェルト・ベグリフ」というドイツ語は、英訳すればラフ・ワールド・コンセプトとなる。

●1992 ポルシェ「911カレラ4クーペ by RWB」

 RWBが手がけるポルシェは、圧倒的なワイドフェンダーがシンボルである。そして日本だけにとどまらず、アジア、米国、ヨーロッパなど世界中から注目を浴びることとなる。

 現在では世界10か国に拠点を持ち、中井氏は世界中を飛び回って顧客のためのワンオフマシン製作を続けている。

 RWBのマシンは、キットではなくワンオフ製作されたものであるというのが特徴だ。オーナーが中井氏にリクエストを出し、より速く、よりかっこよくするためのアイディアをすり合わせし、そのオーナーにもっとも適したポルシェをつくり上げることが信条となる。

 マシンの仕上げには、中井氏自身がテストドライブをしてセッティングを微調整するというこだわりようだ。

 そのため、仮にいまオーダーしたとしても、完成するまでには相当な時間が掛かることになる。とくに空冷エンジンのポルシェの価格が高騰し始めてからは、バックオーダーが増えているという噂だ。

 スタイルだけではなく、エンジンやサスペンションなどのチューニングも含めたRWBというマシンは、唯一無二の存在。その価値を認めた世界中のポルシェオーナーが、いまも自分だけのRWBの完成を待っているのだ。

日本人チューナーがオークション・マーケットで認められた

 2021年3月下旬に開催されたRMサザビーズのオークションに登場した1台のポルシェは、RWBがドイツ人オーナーのために2017年に制作した車両である。

●1992 ポルシェ「911カレラ4クーペ by RWB」

 ベースとなったのは、1992年式の964型「911カレラ4」だ。3.6リッター水平対向6気筒空冷エンジンはオーバーホールされ、ターボチャージャーとインタークーラーを装着。

 ボディはロールケージが組まれ、さらにフロアなどをカーボンファイバー化することで補強されている。また、サスペンションは車高調整が容易な、エアショックに交換されている。

 このほか、レカロ製のフルバケットシートを装備し、ダッシュパネルもカーボン製に変更、ステアリングはクイックリリース機構を採用し、全体的にコンペティションを意識させる仕上げとなっている。

 ボディのカラーリングは、1980年のル・マン24時間レースに出場したポルシェ「935」と同じ、アップルコンピュータをモチーフとしたものとなっている。センターロック式のメッサー製ホイールには、ブレーキの冷却を促すエアエクストラクターが装備されている。

 この964型911カレラ4は、2019年に開催されたヨーロッパ・チューニング・ショーでベストカーに選出された経歴も持っている。現在はプライベートコレクションの一部となっており、非常によい状態を保っている。

 また、チューニングやカスタマイズの詳細を記した鑑定書も付属していることから、オークションでは11万−15万ユーロ(約1430万−1950万円)のエスティメートとなっていたが、最終的な落札価格は12万1000ユーロ(約1570万円)というものだった。

 高額落札であった理由は、価格が上昇を続けている964型911であること、カスタムの費用も掛かっていることが挙げられるだろう。フューエルリッドとダッシュパネルには中井氏のサインが描かれており、RWBのカスタムはオークション・マーケットにおいてプラスに作用することが証明されたといっていいだろう。